長崎県雲仙活断層群調査実施について
1.調査目的
島原半島は溝状の陥没構造である雲仙地溝帯を形成しており、ほぼ東西方向にのびる20以上の断層が密集しています。また、島原半島の陸域の断層は、橘湾及び島原湾における海域の断層に連続している可能性もあります。
これまでこれらの断層そのもの関する調査研究はほとんどおこなわれておらず、断層の活動性に関しては不明でした。
島原半島では、1792年に雲仙普賢岳の噴火活動に伴ってマグニチュード6.4の地震が発生し、また、1922年にはマグニチュード6.9の地震により、島原半島南部や西部に大きな被害が生じています。
そこで、防災対策に活用することを目的として、平成14年度から16年度までの3カ年で、陸域及び海域に分布する雲仙活断層群について、断層の活動履歴や変位量等を明らかにするための調査をおこなっています。
2.これまでの調査概要
これまでの調査結果から、雲仙活断層群を北縁断層帯及び南縁断層帯に区分しました。
(1)北縁断層帯
北縁断層帯に属する断層群は雲仙地溝の北部に位置し、東西方向の主として南落ちの断層群です。
陸域では、雲仙地溝の北縁をなす千々石断層と南側に平行する九千部岳1断層、及びそれらの派生断層とみなされる千本木断層、小倉断層、白新田断層、九千部岳断層2断層、国見岳断層が北縁断層帯のグループに入ります。白新田断層のみが北落ちを示していますが他は全て南落ちの断層です。
断層の活動性に関しては、千々石断層、九千部岳1断層、九千部岳2断層でアカホヤ火山灰降下(7,300年前)以降に活動した可能性がある断層露頭が確認されました。
海域では、橘湾北部の千々石沖から有喜沖にかけての橘湾北部断層群と島原沖断層群が北縁断層帯に含まれます。
このうち、有喜沖の断層では反射法探査及び海上試料採取調査の結果、アカホヤ火山灰降下(7,300年前)以降に3回の活動が認められました。
島原沖断層群は、既往の音波探査結果により、海底に断層の存在が知られていますが、活動性に関しては明らかではありません。
(2)南縁断層帯
南縁断層帯に属する断層群は、雲仙地溝の中央から南側に位置している北落ちの断層群です。
陸域では、島原半島西部に位置する金浜断層・諏訪ノ池断層、雲仙地溝の中央部を東西に貫く小浜断層・鴛鴦ノ池断層・赤松谷断層、及び島原半島東部に位置する高岩山断層・深江断層・布津断層・柳原断層・大苑断層はすべて北落ちの断層ですが、塔ノ坂断 層は南落ちとなっています。
断層の活動性に関しては、布津断層ではボーリング調査や試料分析により、完新世における活動が確認されましたが、深江断層や柳原断層ははっきりしたことはわからないものの完新世における活動の可能性も考えられます。
海域では小浜から金浜沖から橘湾西方にのびる断層群(橘湾中部断層群)と、南串山町沖から橘湾南部を西にのびる断層群(橘湾南部断層群)があります。
橘湾中部断層群ではアカホヤ火山灰降下(7,300年前以降)に2回の活動が確認されています。
3.16年度の調査計画
陸域
(1)雲仙活断層群北西部(唐比西方)
雲仙活断層群の北縁をなす千々石断層は東西方向の正断層であり、唐比低地東部を西端とすることがこれまでの調査で明らかになりましたが、地表踏査により唐比低地の西方に活動時期は不明ながら東西報告の逆断層の存在が確認されました。
そこで、千々石断層の西方延長部の地質構造の検討をおこなうため、雲仙活断層群の西端部とその周辺部における地表踏査を実施します。
(2)雲仙活断層群北東部(島原市内)
雲仙活断層群の北縁をなす千々石断層は唐比低地東部を西端とし、東部は舞岳付近まで連続していますが、更にのびている可能性も考えられます。
そこで、断層位置を特定するために島原市街地において反射法探査、ボーリング調査を実施しています。
(3)雲仙活断層群北東部(赤松谷断層)
雲仙地溝の中央に位置する赤松谷断層は、活断層である可能性が高いとされてきました。
そこで、平成15年度にトレンチ調査を実施しましたが、8,000年前以降における断層の活動の存在は確認できませんでした。
完新世における大きな活動はなかったと考えられますが、1万円前よりも古い時代における活動を確認するため水無川下流域においてボーリング調査をおこなう予定です。
海域
(1)雲仙活断層群北東部(島原沖)
島原半島の東側の島原湾では、既往調査によって断層の存在が確認されていますが、眉山崩壊による流山等によって海底が埋められており、断層の方向や長さに関しては不明でした。
そこで、音波探査をおこない、海底断層の分布及び長さを明らかにする予定です。
・平成16年12月末
音波探査実施予定
(2)雲仙活断層群西方延長部(橘湾西部)
平成14から15年度の音波探査の結果から、橘湾南部断層群の西方にも断層群(橘湾西部断層帯)が確認されましたが、詳細は不明のままとなっています。
そこで、断層位置の確認のため音波探査をおこない、更に海上試料採取調査を7月に実施いたしました。調査データ等は分析中です。
4.長崎県雲仙活断層群調査委員会
活断層・地質などの専門家9名からなる「長崎県雲仙活断層群委員会」を設置し、委員の指導及び助言を受けて調査を実施しています。
コアリングの総合点検 雲仙活断層群調査委員会
長崎県雲仙活断層群調査について
1. 根拠
阪神淡路大震災を受けて、地震防災対策特別措置法が制定され、政府に地震調査研究推進本部が設置されました。
平成9年度、本部で「地震に関する基盤的調査観測等計画」が取りまとめられたことを受け、文部科学省は地震関係基礎 調査交付金を交付し、地方公共団体が行う活断層調査事業を推進しました。
調査対象となる、特に重要な活断層が全国に98カ所あり、その1つに雲仙断層群が指定されています。
2. 目的
島原半島及びその周辺は過去の学術調査によって20以上の活断層の存在が確認されていますが、物理的な調査研究はほとんど行われていないため、断層の地下構造等詳細は不明であります。
そこで、雲仙活断層群の調査をおこない、以下のことを明確にすることによって、本県の地震防災に関する基礎資料を得ることを目的としております。
- 地震の発生場所を特定する:活断層の位置を調査
- 地震の規模を推定する:活断層の長さ、活動範囲、一回の変位量を調査
- 将来の活動時期を予測する:活動周期と最新の活動時期、長期間の変位速度等を調査
また、調査結果は、地震調査研究推進本部で行う地震の発生可能性の長期評価、強震動予測等に反映されることとなります。
3.調査方法
活断層、地質、地形等の専門家で構成される調査委員会を設置し、委員会で作成する調査計画に基づいて調査を実施いたします。
(調査項目)
文献調査:過去の研究資料、歴史文献等を収集、分析。
空中写真判読:既往の空中写真により断層の位置を特定。
地表踏査:直接現場を視察し、調査箇所の特定。
海域調査:橘湾、島原湾の断層の音波探査、ボーリング調査。
地震波反射法探査:起震車による震動を発生させ地下構造を調査。
ボーリング、トレンチ調査:地層の抽出、観察。
試料分析:地層の堆積年代特定のための年代測定
4.調査委員会
委員長 | 長崎大学教授 後藤 惠之輔(地震防災) |
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委員 | 地震予知総合研究振興会 松田 時彦(地質) 大分大学教授 千田 昇(地形) 高知大学教授 岡村 眞(海洋地質) 九州大学教授 清水 洋(地震、火山) 長崎大学助教授 長岡 信治(地形) (独)産業技術総合研究所 研究コーディネーター 佃 栄吉(活断層) 県教育庁文化財指導監 高野 晋司(埋蔵文化財) (独)産業技術総合研究所 地球科学情報研究部門 火山活動研究グループ 主任研究員 星住 英夫(火山地質学) |
5.調査スケジュール
平成14年度から16年度の3カ年計画で調査を実施します。
平成15年度 | 5月1日 交付金交付決定 6月30日 委託業者入札 6月14日 第1回委員会開催 7月26日 第2回委員会開催 10月18日 現地踏査 10月19日 第3回委員会開催 12月21日 第4回委員会開催 3月7日 第5回委員会開催 |
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平成16年度 | 5月1日 交付金交付決定 5月26日 委託業者入札 7月3日 第1回委員会開催 9月11日 第2回委員会開催予定 5月から3月 調査実施 |
長崎県雲仙活断層群調査パンフレット
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