答申第65号

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件名 

 平成25年12月16日付け崎監(調)第99号「公文書部分開示決定通知書」に対する不服申立て
 (警察職員の懲戒免職処分の経緯等が記載された文書の部分開示決定に対する不服申立て)

【担当課:県警本部警務部監察課】

答申第65号

第1 審査会の結論

 審査請求人からの「平成25年11月14日に懲戒免職処分になった警察職員が懲戒免職処分になった経過と経緯がわかる文書」との公文書開示請求につき、長崎県警察本部長(以下「処分庁」という。)が長崎県情報公開条例(平成13年長崎県条例第1号。以下「条例」という。)の規定により部分開示とした決定は、別表で示した部分は開示すべきであるが、その他の部分は妥当である。

第2 審査請求に至る経過

1 開示請求の内容

 審査請求人は、平成25年12月2日付けで、条例第6条第1項の規定により処分庁に対して「平成25年11月14日に懲戒免職処分になった警察職員が懲戒免職処分になった経過と経緯がわかる文書」との開示請求を行った。

2 処分の内容

 処分庁は、上記開示請求に対し、平成25年11月14日付けで処分庁が行った懲戒免職処分の経緯等が記載された

発生報告書(平成25年9月9日付け)
起案用紙(平成25年10月28日付け原崎監(調)第71号)
勧告書(平成25年10月31日付け)
起案用紙(平成25年11月14日付け原崎監(調)第77号)

を特定し、平成25年12月16日付けで部分開示決定(以下「本件処分」という。)を行い、開示しない部分及び決定の根拠を次のとおり審査請求人に対し通知した。

(1) 開示しない部分

ア 関係職員(以下「被処分者」という。)の所属、課名、氏名、生年月日、採用年月日、現階級昇任年月日、現所属配置年月日、運転免許種別、交通事故歴、給料の級、号、支給額、懲戒処分歴、処分にかかる事項及び始末書
イ 被処分者の規律違反行為場所の地番及び規律違反事実
ウ 目撃者の人定事項、通報内容
エ 起案用紙を作成した者の氏名及び押印
オ 処分の加重又は軽減事由
カ 被処分者に関する評価
キ 処分意見、委員の意見及び判断内容
ク 内線電話番号

(2) 決定の根拠

条例第7条第1号(個人情報)、第3号(犯罪捜査情報)、第4号(審議、検討等情報)、第5号(行政運営情報)

3 審査請求について

 審査請求人は、本件処分を不服として、平成26年1月28日付けで、処分庁の上級官庁である長崎県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に対し、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第5条の規定により審査請求を行った。

第3 審査請求人の主張の要旨

 審査請求人の主張は、審査請求書及び意見書によれば、おおむね次のとおりである。

 被処分者の所属、課名、氏名、生年月日
 被処分者の規律違反行為場所の地番及び規律違反事実
 被処分者の規律違反内容、審議検討内容及び判断内容
 懲戒審査委員会の委員の意見及び判断内容
は、それぞれ条例第7条第1号、第3号、第4号、第5号該当しないため開示すべきである。

第4 諮問庁の主張の要旨

1 被処分者の所属、課名、氏名、生年月日、採用年月日、現階級昇任年月日、現所属配置年月日、運転免許種別、交通事故歴、給料の級、号、支給額、懲戒処分歴、処分にかかる事項及び始末書

 被処分者は規律違反行為当時公務員として身分を保有していた者であるが、当該規律違反行為は被処分者の私的行為によるものであって、私人として行われた被処分者の個人に関する情報であるから、被処分者の氏名、生年月日等は条例第7条第1号に規定する典型的な個人情報であって、特定個人を識別できる情報に該当する。
 また、被処分者の所属、採用年月日、現階級昇任年月日、現所属配置年月日等については、一般人をしてそれ自体では特定個人を識別することはできないが、当該個人の同僚や知人などの関係者が知り得る情報と相まって特定個人を識別することができる情報に該当し、いずれも条例第7条第1号ただし書きに該当しないことから、それぞれ同号に該当すると判断した。

2 被処分者の規律違反行為場所の地番及び規律違反事実

 被処分者は規律違反行為当時、公務員として身分を保有していた者であるが、当該規律違反行為は私人として行われた被処分者の個人に関する情報であり、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができ、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがある情報に該当し、条例第7条第1号ただし書きのいずれにも該当しないことから、同号に該当すると判断した。
 また、規律違反事実には被処分者に係る犯罪捜査及び調査の過程で判明した事実が記載されており、公にすることにより、同種の捜査活動に対する対抗措置、証拠隠滅を容易にするなど今後の捜査に支障を及ぼすおそれがあるほか、調査に関わる者が率直な調査事実や判断事項を記載しなくなるなど、正確な事実の把握が困難になるため、懲戒処分等に係る調査等の公正かつ円滑な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第3号及び同条第5号に該当すると判断した。

3 目撃者の人定事項、通報内容

 規律違反行為を目撃した第三者の個人に関する情報であって特定の個人を識別することができ、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがある情報に該当し、条例第7条第1号ただし書きのいずれにも該当しないことから、同号に該当すると判断した。
 また、通報内容等を公にすることにより、警察の取り扱う事件・事故等について、警察への通報をためらう者が出てくるおそれもあり、事件・事故等の目撃者等関係者からの協力が得られなくなり、今後の警察業務に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第5号に該当すると判断した。

4 起案用紙を作成した者の氏名及び押印

 作成者の氏名及び押印は特定個人を識別できる情報であって、長崎県情報公開条例解釈及び運用基準では「公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員の氏名の取扱い」について、公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、公にした場合、公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護するに値すると位置付けた上で、本号ただし書きアに該当する場合には、例外的に開示することとするものである。
と定め、「公安委員会及び警察本部長における長崎県情報公開条例に基づく処分に係る審査基準」には、警察職員の氏名の取扱いについて、
  県警における「氏名を慣行として公にしている」職員の範囲は、警部又は同相当職以上の職員である。
としている。
 したがって、作成者が警部補以下の職員であるため、条例第7条第1号ただし書きア及びウには該当せず、ただし書きイの必要性も認められないことから、同号に該当すると判断した。

5 処分の加重又は軽減事由

 被処分者は規律違反行為当時、公務員として身分を保有していた者であるが、私人として行われた被処分者の規律違反行為が記載されており、当該情報は個人に関する情報であり、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがある情報に該当し、条例第7条第1号ただし書きのいずれにも該当しないことから、同号に該当すると判断した。
 また、被処分者に係る処分の軽重を検討するための意見等が記載されており、公にすることにより、調査にかかわる者が率直な意見を記載しなくなり、懲戒処分の審議検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあるほか、正確な事実の把握が困難になるなど、今後の懲戒処分に係る調査、審議等の事務の公正かつ円滑な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、条例第7条第4号及び同条第5号に該当すると判断した。

6 被処分者に関する評価

 被処分者の勤務状況、勤務成績及び平素の行状等は個人に関する情報であり、特定の個人を識別することができ、また、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがある情報に該当し、条例第7条第1号ただし書きのいずれにも該当しないことから、同号に該当すると判断した。
 また、被処分者の評価等は公にすることにより、調査にかかわる者が率直な意見を記載しなくなり、正確な事実の把握が困難になるなど、今後の懲戒処分に係る調査、審議等の事務の公正かつ円滑な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第5号に該当すると判断した。

7 処分意見、委員の意見及び判断内容

 被処分者に係る処分を検討するための意見等が記載されており、公にすることにより、調査にかかわる者が率直な意見を記載しなくなり、また委員が率直な発言をしなくなるなど、懲戒処分の審議検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあるほか、正確な事実の把握が困難になり、今後の懲戒処分に係る調査、審議等の事務の公正かつ円滑な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第4号及び同条第5号に該当すると判断した。

8 内線電話番号

 特定業務のための電話番号であり、公にすることにより、警察内部等の連絡に関する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第7条第5号に該当すると判断した。

第4 審査会の判断理由

1 本件対象公文書について

 本件対象公文書は、処分庁の説明により

発生報告書(平成25年9月9日付け)
起案用紙(平成25年10月28日付け原崎監(調)第71号)
勧告書(平成25年10月31日付け)
起案用紙(平成25年11月14日付け原崎監(調)第77号)

と認めた。

2 条例の規定について
(1)条例第7条第1号(個人情報)

 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
ア 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
イ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ウ 当該個人が公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分

(2)条例第7条第3号(犯罪捜査情報)

 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報

(3)条例第7条第4号(審議、検討等情報)

 県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人及び地方三公社の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公にすることにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの

(4)条例第7条第5号(行政運営情報)

 県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は地方三公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他の当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
ア 監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
イ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は地方三公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ウ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
エ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
オ 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等、地方独立行政法人又は地方三公社に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

3 本件処分の妥当性について

 審査請求人はおおむね、対象公文書に記載された本件懲戒処分の被処分者に係る「所属、課名、氏名」、「規律違反行為の内容や当該発生場所の詳細」及び「当該処分に携わる職員の処分意見や懲戒審査委員会の委員の意見及び判断内容」の3箇所について開示を求めているものと思われる。
 したがって、当審査会はそれぞれの部分に関して次のとおり判断する。

(1)対象公文書に記載された被処分者の所属、課名、氏名について

 被処分者の氏名については、それ自体で特定の個人を識別できる情報である。
 また、被処分者の所属や課名については、それ自体では特定の個人を識別することはできないが、同僚、知人その他の関係者においては当該被処分者が誰であるかを特定することができ、開示された部分と相まって、これらの同僚等関係者に懲戒処分の内容のみならず、規律違反行為の詳細など、通常、他人に知られたくない情報が明らかとされることになり、当該被処分者の個人としての権利利益を害するおそれがあることは明らかであり、かつ、条例第7条第1号ただし書のいずれにも該当しない。
 したがって、所属、課名、氏名は一体として被処分者の個人に関する情報であって、同条同号に該当するとして不開示相当とした諮問庁の判断は妥当である。

(2)対象公文書に記載された規律違反行為について

 本件規律違反行為は、被処分者の職務とは無関係の私的行為であり、つまりは一般私人としての行為と同様に、当該個人の行為である。
 これらの個人の行為について、被処分者からの事情聴取等による本人の申出やその申出に基づき調査又は捜査した結果等が記載されている。
 確かに、法令等による取締り等を行う公務員として高い倫理観が求められることは当然である。しかしながら、職務とは無関係の私的行為であり、最終的には調査又は捜査により裏付けされた事実であるとしても、実質的に被処分者自身の申出により判明した事実である以上、個人の行動記録であって、条例第7条第1号の個人に関する情報に該当すると判断され、同条同号ただし書のいずれにも該当しない。
 したがって、規律違反事実や規律違反内容について、また当該規律違反行為場所の地番等の詳細事項についても同様に、実施機関が既に公表している部分以外を不開示相当とした諮問庁の判断は妥当である。ただし、別表に掲げるものについては、すでに報道資料として発表した適用法令を具体的に書き記しているだけであり不開示とする理由がないから開示すべきである。

(3)対象公文書に記載された処分意見、懲戒審査委員会委員の意見及び判断内容について

 処分意見を記載した職員は、本件懲戒処分における被処分者の調査等を担当した職員であり、当該職員は被処分者の申出等を聴取し、その申出に基づく調査等を通じて、当該被処分者に対する処分がどの程度とすべきかの意見を公平に判断して述べる立場にあるものと思われる。
 また、当該処分意見等を踏まえて、最終的な処分を実質的に決するべき立場にある懲戒審査委員会の委員についても、冷静で率直な意見等を述べることが求められることは自然な流れと言える。
 このように、被処分者に対する不利益な処分について、実質的な方向付けあるいは方針を合議体として決する場合において、職務行為としてなした意見であっても、委員個人としての意思表示であることは疑いようのない事実である。また、各委員はその職名から県警において監督者としての地位にあって、それぞれが部下職員を擁しているものと思われる。
 これらの点から検討すると、簡略化して記載されたことにより委員の意見が断片的なものとなり、これを公にすることとなれば、不正確な理解や誤解によって、部下職員との信頼関係に無用な混乱を生じさせる可能性も否定できない。
 したがって、諮問庁が当該箇所を、その処分が下された後にあっても、今後、関係職員や委員が率直な意見を述べなくなるおそれがあることを理由として、条例第7条第4号及び同条第5号に該当するとして不開示相当としたことは妥当である。

5 審査請求人のその他の主張について

 審査請求人は、意見書で処分庁の情報提供内容に対する疑問等を述べているが、審査会は、条例に基づく実施機関の決定について判断すべきものと考えており、その判断に直接関係しない主張の適否については、判断するところではない。

 以上のことから、前記「第1 審査会の結論」のとおり判断する。

 

別表

対象公文書 開示すべき部分
起案用紙(平成25年10月28日付け原崎監(調)第71号)に添付された懲戒審査要求書  「規律違反の事項」欄中、10行目の23文字目から11行目の15文字目までの部分
懲戒審査要求書に添付された申立書  「3 規律違反の内容」欄中、9行目の15文字目から10行目の5文字目までの部分
起案用紙(平成25年11月14日付け原崎監(調)第77号)に添付された行為責任  「処分の理由」欄中、18行目の7文字目から19行目の15文字目までの部分

 

審査会の審査経過

年月日 審査経過
平成26年2月27日 ・実施機関から諮問書を受理
平成26年3月17日 ・実施機関から理由説明書を受理
平成26年4月8日 ・審査請求人から意見書を受理
平成26年5月16日 ・審査会(審査)
平成26年7月17日 ・審査会(審査)
平成26年7月30日 ・答申

 

長崎県情報公開審査会委員名簿

氏名 役職 備考
大内 和直 長崎大学経済学部教授 会長
石橋 龍太郎 弁護士 会長職務代理者
大島 信裕 長崎新聞社総務局次長兼経営企画室長  
福村 喜美子 NPO法人グリーンクラフトツーリズム研究会はさみつんなむ会会長  
山中 英子 司法書士・行政書士  

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