閉会中の委員会活動

離島・半島地域振興特別委員会

現地調査

委員会名 離島・半島地域振興特別委員会
目的 国境離島新法対策、離島振興対策現地調査
日時 平成29年8月29日(火)~31日(木)(3日間)
調査先 新潟県、東京都
出席委員 委員長 近藤智昭、副委員長 山本啓介、委員 山田博司、委員 堀江ひとみ、
委員 浅田眞澄美、委員 中島浩介、委員 宅島寿一、委員 吉村正寿
概要

1.新潟県庁

 新潟県職員から、有人国境離島法に係る県事業及び県計画について説明を受けた後、意見交換を行った。

(1)新潟県特定有人国境離島地域の地域社会の維持に関する計画
 ①対象地域:佐渡島
 ②計画期間:10年間(平成29年度~38年度)
 ③計画策定:平成29年5月
 ④基本的方針
  毎年、約1,000人ペースで進む佐渡島の人口減少の歯止めや地域社会維持のため、
 元気な産業と安定した雇用の創出、観光・交流の促進に重点を置き、「産業で自立
 する島」、「安全安心なくらしの島」、「交流でつながる島」を3本柱とした取組を
 進める。

(2)平成29年度特定有人国境離島地域社会維持推進事業費


①航路運賃低廉化事業
 島民利用について、カーフェリーからジェットフォイルへの移行が見られたが、航路利用者全体としては伸びが見られない(▲0.9%)。本事業のインパクトは大きく、大変喜ばれている。
 【4月~7月の合計で比較】
  新潟航路カーフェリー ▲22,980人
  新潟航路ジェットフォイル +28,220人
②雇用機会拡充事業 第1回採択実績
 21応募事業者のうち、11事業者を採択(計画額92,906千円、雇用創出見込み30人)
③滞在型観光促進事業
 「宿泊者数の増加につながる」ような滞在型観光を推進する取組を支援。県事業における市町村等に対する県負担の整合から、県予算の上限を1,000万円としている。(有人国境離島の粟島浦村は国の同補助がなく、佐渡市とのバランスを考える必要があるため。)

《新潟県庁会議室》

《新潟県議会庁舎》

2.佐渡市役所

 佐渡市職員から、有人国境離島法に係る市事業及び法施行後の航路利用状況等について説明を受けた後、意見交換を行った。

(1)運賃低廉化
 ①事業実施者:佐渡汽船(株)
 ②低廉化の対象者:佐渡市住民登録者
 ③当初予算事業費(事務費除く):約7億円
 ④低廉化後の状況:佐渡に帰省する人の運賃を下げてほしいという声多い。すべての
  利用者の運賃が下げられるよう国に要望したい。


(2)物資の費用負担の軽減
 ①事業実施者:民間団体等(農協、漁協等)
 ②対象品目:米、果物類(柿)、魚介類が多い
 ③当初予算事業費(事業者負担除く):約1億円
  ※利用が見込みより多く、予算が足りなくなるくらいの利用がある。

 (3)滞在型観光の推進
 ①事業実施者:佐渡市、佐渡観光協会等
 ②対象経費:旅行商品、企画乗船券、滞在型プランの企画、開発、宣伝費
 ③当初予算事業費(事務費除く):約2.3億円
  ※離島滞在観光個人旅行促進事業の予算は1.9億円
   往復JR代+往復乗船代+宿泊代+体験付き会員バスがセットのパック、大人1人5,840円割引。

(4)雇用機会の拡充
 ①目的:合併後、人口が毎年1,000人(自然減700人、社会減300人)ずつ減っている。
  社会減の減少幅を少なくするため、雇用機会を創出。
 ②当初予算事業費(事業者負担除く):約2.7億円
 ③補助金の採択状況:第1回公募で11事業者(創業3、事業拡大8)
  ※旅館業での新規創業や定置網の増設等


3.佐渡伝統芸能(鬼太鼓視察)


《鬼太鼓》

 両津鬼太鼓組に佐渡島の伝統芸能「鬼太鼓」を披露していただき、鬼太鼓の歴史や伝統芸能継承の取組についてご教示いただいた。

4.尾畑酒造株式会社

 尾畑酒造株式会社の平島代表取締役社長から「学校蔵プロジェクト」について説明を受けた後、意見交換、酒蔵見学を行った。

<学校蔵プロジェクト>
 学校蔵とは、2010年に廃校となった旧西三川小学校を仕込み蔵として再生した場所で、2014年から稼働、日本酒「学校蔵」を製造している。ここでは夏場に酒造りをしており、「酒造り」「学び」「環境」「交流」の4つの柱で運営している。 夏にオール佐渡産の酒米で仕込みを実施、仕込みタンク1本につき1期一週間の学び期間を設けて、仕込み体験希望者(1回4~5名程度)を受け入れている。 
 酒造りのエネルギーも佐渡産を目指し、東京大学サスティナビリティ学連携研究機構などと協業して、太陽光パネルを設置し、電気に関しては理論上100%自然再生エネルギーを導入している。
 また、様々な企業や組織、学校とのコラボレーションワークショップを実施しており、特に、地域おこしに造詣の深い方々を招いて開催する「学校蔵の特別授業」には、島内外から多くの方々が参加している(H29は120名参加)。
 学校蔵だけでは利益ベースに乗るものではないが、毎年、人口が1,000人ペースで減っている佐渡島の20年後、30年後を見据え、学校蔵により地域活性化を図っている。


《尾畑酒造内会議室》

《尾畑酒造酒蔵見学》

5.一般社団法人佐渡観光協会

 佐渡観光協会職員から、観光振興の取組及び島の宝観光連盟について説明を受けた後、意見交換を行った。

(1)観光振興の取組

平成18年に佐渡観光協会に島内10市町村の観光協会を統合、平成19年に社団法人佐渡観光協会を設立、平成25年に一般社団法人となった。
予算規模は例年2億円程度だが、平成29年度は特定有人国境離島地域社会維持推進交付金を活用した旅行商品「佐渡体験パック」の開発があり、約3.5億円となっている。

(2)島の宝観光連盟

設立の経緯:2017年の韓国での日韓交流イベントに「佐渡おけさ」と「牛深ハイヤ」が出演したことをきっかけに、双方が「宝の島」として観光PRを行っていることから、各島の観光組織が連携して離島の振興を目指すため設立。
会員:佐渡観光協会(会長)、天草宝島観光協会、天草四郎観光協会、壱岐市観光連盟、五島観光連盟
※今後、人口1万人規模の島へ加盟を呼びかける。
主な事業
・首都圏での島の観光PRイベント開催
・WEBやSNSを活用した情報発信
・国の支援を活用した、島ならではの体験プログラムの開発と販売促進

6.株式会社JTB総合研究所

 

 JTB総合研究所職員から有人国境離島地域の滞在型観光に向けた取組について説明を受けた後、意見交換を行った。

(1)島根県海士町の取組

離島の観光客の減少は、宿が高齢化・後継者不足によって廃業することが主要因であると考え、宿の魅力を向上、事業継承を促進する「島宿プロジェクト」を展開
海士町観光協会が、島の宿を「島宿」を頂点に、「ホテル」「ビジネス民宿」「レンタルハウス」の4カテゴリーに分けターゲットを明確に定めて棲み分け
島宿に協力する民宿は、観光協会が清掃(週2回)、アメニティ導入、予約管理の代行、リネンサプライサービス提供、港からの送迎サービスを実施
→開始から5年で、平均単価2,500円アップ、泊数は1,500泊増加

(2)壱岐のイルカパーク再生に向けた提案(アドバイザー主導型滞在型観光の促進)

イルカパークは水質が良くない。そこで、生物浄化(牡蠣殻漁礁、ナマコによるヘドロ除去)を提案、シュノーケリングできるきれいな海に
 ・鉄腕DASHを始めた日本テレビのディレクターと連携して、澱んだ海を浄化して、護岸を自然の海岸に近づけるプロジェクト
ドルフィンスイム、イルカセラピーを実施、砂浜では乗馬、BBQもできるように

(3)長崎県へのアドバイス

行政は、地域が20年、30年先にどうなっているか未来を語ってほしい。未来があれば、それに向かって事業者もがんばれる。民間は、自分たちの事業だけでなく、少し広い視野で地域全体がどうなっているのか、地域の中でどういう役割を担えるのか考えてほしい。行政と民間が同じ方向を見れるかが大事である。
五島地域は、世界遺産の先に何を見据えるかが大事。教会以外にも、カツオドリ(欧米人はガラパゴスまで見に行く)のように魅力あるものがあるのに気づいていない。
壱岐、対馬には、行政に中心となる人材がいて、事業者ともよくつながっているので期待できる。

《JTB総合研究所セミナールーム》

《JTB総合研究所の皆様と》

現地調査

委員会名 離島・半島地域振興特別委員会
目的 離島振興対策現地調査
日時 平成29年5月31日(水)~6月1日(木)(2日間)
調査先 新上五島町
出席委員 委員長 近藤智昭、副委員長 山本啓介、委員 山田博司、委員 堀江ひとみ、
委員 浅田眞澄美、委員 中島浩介、委員 宅島寿一、委員 吉村正寿
概要

1.新上五島町役場

 役場職員から、平成29年度の国境離島新法関連事業の予算計上額や事業内容、補助事業の申請状況等の説明を受けた。その後、新上五島町国境離島新法活用協議会の方々と国境離島新法施行後の現状と課題について意見交換を行った。

《役場会議室にて》

○新上五島町 国境離島分予算計上額 (単位:千円)

区分

総事業費

歳出

歳入
(国負担)

歳入
(県負担)

町負担

備考

輸送コスト支援

275,061

220,025

165,029

27,498

27,498

移出→魚介類(生鮮・冷凍もの)
移入→生餌

滞在型観光の促進

69,399

40,338

18,226

0

22,112

 

創業・事業拡大に係る支援

176,000

132,000

88,000

22,000

22,000

1,600万円の補助×年間11件で算出

航路・航空路運賃低廉化

317,826

72,200

0

0

72,200

 

838,286

464,563

271,255

49,498

143,810

 

2.(株)浜田組

建設業を営む一方で完全天日製法を取り入れた塩の製造販売に取り組んでいる浜田組の塩製造工場を視察した後、「とっぺん塩」製造・販売の現状と課題について、担当者から説明を受け、意見交換を行った。

■課題
・島は送料が高く、少量で本土へ発送しても、原価を差し引くと赤字。商談会で販路開拓しても卸価格を下げた上に送料を負担すると利益が減る。
・上五島にネット販売のアドバイザーやコンサルティング会社がない。


《とっぺん塩製造工場視察》

 ■製造工場の概要
 事業主体:(株)浜田組食品事業部(従業員数6名)
 工場建設費:31,290千円
 県補助金:1,412千円
 施設内容:ネット式立体塩田
      木造ビニールハウス(3棟)
      ビニールハウス(1棟)
 製造開始:平成12年9月
 製造数量:6.5トン


3.一般財団法人新上五島町振興公社


《椿夢工場視察》

 椿油製造販売の現状と課題について、担当者から説明を受け、意見交換を行った後、研究試作施設「椿夢工場」を視察した。
《椿実の集荷量》
 26年度20,343.5 kg
 27年度15,719.7kg
 28年度30,228.6kg

■課題
・椿実の収穫量の年変動が大きく、集荷者が高齢化しているといった課題があり、今後地域資源としての価値を高めていくためには、更なる販路開拓が必要である。

4.青砂ヶ浦教会

 2001年に国指定重要文化財に指定された青砂ヶ浦教会について、町文化財課職員から説明を受け、教会を見学した。

5.新上五島町産業サポートセンター(Sima-Biz)

 センターは平成27年9月に起業や創業、販路開拓に関する相談業務等を行うため、町が開設した。公募で採用されたセンター長から支援内容や相談状況について説明を受け、意見交換を行った。
 《相談実績》2016年7月~2017年5月 327件

6.上五島国家石油備蓄基地

 上五島石油備蓄株式会社上五島事業所担当者から基地の概要について説明を受けた後、上五島町漁業協同組合の方も同席の上、地域とのつながりについて、意見交換を行った。また、意見交換終了後、基地内をバスで見学した。

7.(株)宝生水産、神部漁協

 若松郷土井の浦で養殖業を営む宝生水産のクロマグロとブリの養殖場を視察した後、神部漁協で養殖業者の方々と養殖業の現状と課題について、意見交換を行った。

■若松地区の魚類養殖
 平成26年度生産量 ブリ2,500トン、マグロ400トン
      売上高 約33億円
■神部漁協の組合員数
 平成28年度 正組合員数29、准組合員数109

■課題
・就業者の高齢化と人材不足が懸念される。後継者の確保・育成が必要。
・活魚運搬業者の不足が懸念される。
・生餌及び配合飼料の価格が高いので、餌代の削減が必要。


《養殖場視察》

《神部漁協にて》

8.上五島病院附属診療所奈良尾医療センター


《奈良尾医療センターにて》

 上五島病院院長から離島医療の現状と課題について説明を受け、意見交換を行った。
■奈良尾医療センターについて
 奈良尾病院(60床)は平成23年4月に上五島病院附属診療所奈良尾医療センター(無床)となり、平成24年4月に現在地に新築移転した。

■医療人材の確保について
 医師、看護師の募集について、ホームページによる情報発信に力を入れている。

■課題
・奈良尾は船の利便性がよく島外の病院に行く人が多い。有人国境離島法施行後、航路運賃が安くなったことで、患者が島外に出て行くのではないかと懸念される。