閉会中の活動 令和元年度(平成31年度)分

離島・半島地域振興特別委員会

現地調査

委員会名 離島・半島地域振興特別委員会
目的 離島・半島地域振興対策及び有人国境離島法対策等現地調査
日時 令和元年11月6日(水)~7日(木)(2日間)
調査先 新上五島町、西海市
出席委員 委員長 近藤智昭、副委員長 山口経正、委員 坂本智徳、委員 山田博司、
委員 堀江ひとみ、委員 山口初實、委員 中島浩介、委員 ごうまなみ、委員 中村一三
概要
1.有人国境離島法の雇用機会拡充事業採択事業者

 平成29年4月1日に施行された有人国境離島法の雇用機会拡充事業に採択された事業者の中から以下の事業者を訪問し、事業の概要説明を受け、活用事例や今後の方向性等について意見交換を行った。

事業者名

雇用機会拡充事業概要

①際コーポレーション株式会社
(五島列島リゾートホテル
 マルゲリータ奈良尾 海ト空○ト星)

・五島列島リゾートホテルマルゲリータ奈良尾の運営に必要なインバウンド対応をメインとした地域人材の確保。
・奈良尾新ホテルをインバウンド対応の観光拠点施設とし、既存ホテルとの周遊車両を導入。

②株式会社虎屋
(島ダイニングとらや)

・製麺所直営の「本当にうまい!五島うどん」と島の地魚をふんだんに使った「船盛海鮮丼」を提供する飲食店の開業。
・新上五島町産の素材を活かした新商品による催事販売への本格参入とそれに伴う人材育成を実施。

③遠山加工店

・カンコロ製造工程において、合理化及び殺菌工程を強化することで製造料の増加及び消費期限を延長し、島外販路拡大を図る。


《マルゲリータ奈良尾》

《遠山加工店》
2.頭ヶ島集落(頭ヶ島天主堂)

 新上五島町文化財課から同集落及び同天主堂にて説明を受け、質疑応答を行った。

  • 頭ヶ島集落は、平成30年7月に世界文化遺産登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつ。
  • 集落の価値を損なうことなく後世に残すため、入場者数及び車両数の制限を行っており上五島空港でシャトルバスに乗り換えて入場した。(頭ヶ島パーク&ライド)
  • 集落は人口減少や高齢化が顕著であり、現在8世帯14人。
  • 集落内には、平成13年に国の重要文化財指定を受けた「頭ヶ島天主堂」がある。
    (「頭ヶ島天主堂」について)
  • 明治初期キリスト教の迫害が終わり、再び集落に戻った信者たちが、対岸の島などから切り出した砂岩を積み上げて造った全国的にも珍しい石造りの天主堂。1887年(明治20年)に木造教会が建てられ、1919年(大正8年)に現在の石造り天主堂が完成した。
  • 天主堂の見学は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連インフォメーションセンター」への事前連絡が必要。
  • 集落来訪者数
     47,361人(H30.7~R元.6)※登録後1年間
     36,336人(H29.7~H30.6)※登録前1年間
    (前年同期比130%)
《現地視察の様子》
3.ダイヤソルト株式会社 崎戸工場

 事業概要等について、同社取締役工場長から説明を受け質疑応答を行った後、施設見学を行った。

(1)会社概要

①所在地:長崎県西海市崎戸町蛎浦郷1517番地の3(本社:東京都中野区)
②設 立:1955年(昭和30年)9月7日
③資本金:2億5千万円
④主要事業:塩の製造・販売。塩化カリウム・塩化マグネシウム含有物(にがり)等の製造、販売
⑤関連会社:株式会社菱塩
⑥沿 革:

1955年(昭和30年)崎戸製塩株式会社設立
1985年(昭和60年)株式会社 菱塩(特殊製法塩製造販売会社)設立
1989年(平成元年)親会社(現三菱マテリアル株式会社)より化成品部門を譲受ける
1995年(平成7年) ダイヤソルト株式会社へ社名変更
・ダイヤソルト株式会社の前身である崎戸製塩株式会社は、1955年9月7日に三菱鉱業株式会社(現三菱マテリアル株式会社)の子会社として設立された。三菱鉱業が製塩事業への進出を決断するに当っては、当時の塩業情勢、石炭業界の斜陽化による新規事業進出等があった。

⑦崎戸町への進出理由:

  • 三菱鉱業株式会社崎戸炭鉱の低品位の石炭が製塩用燃料として利用できること
  • 原料である海水の濃度が高かったこと
  • 当時「水無島」といわれ、島外から船で飲料水を運んでいた崎戸町に製塩副産物の蒸留水を飲料水として供給できること 等
(2)事業概要

外湾に面した地元崎戸町の海水を取水し、塩・化成品を製造、販売している。

  • 塩の製造工程
    取水・ろ過工程→採かん工程(イオン交換膜電気透析装置により海水を濃縮する工程。(かん水)の製造)→せんごう工程(濃縮された海水(かん水)を煮詰めて塩を析出させる工程)→包装工程
  • 一般的な食用塩に加え、塩化マグネシウム含有物(にがり)等も販売している。
  • また、化成品である高純度塩化カリウムは、半導体製品の材料の一部となっており、引き合いが増加している。
  • 九州圏内を中心としたトラック出荷に加え、北海道・関東・関西各地区の拠点倉庫を活用した船出荷を行っている。
  • 塩製造設備として、砂ろ過器、イオン交換膜電気透析槽、せんごう設備、化成品製造設備として、精製塩化マグネシウム製造、苦汁濃縮設備等を備える。
  • 世界的に海水中のマイクロプラスチックが問題となっているが、同社の設備により安全で安心な製品を製造している。また、災害等に備えた自家発電システムもあり。今後、設備投資を予定している。
  • 従業員は、同社全体で223名。うち崎戸工場は183名。男女比は、男性8割、女性2割。居住地別では、大島・崎戸居住が6割、その他の西海市内居住が3割。地元の雇用に貢献していると思っているが、人材の確保が困難になってきている。
《現地視察の様子》
4.株式会社大島造船所

 事業概要等について、同社代表取締役副社長から説明を受け質疑応答を行った後、施設見学を行った。

(1)会社概要

①所在地:長崎県西海市大島町1605-1(本社・工場)
②設 立:1973年(昭和48年)2月7日
③資本金:56億円(非上場)
ダイゾー(旧大阪造船所)60.9%、住友商事34.1%、住友重機械5.0%
④主要事業:バルクキャリア建造を得意とする造船メーカー
受注残 約103隻、年間 40隻竣工予定(2019年度)、売上高 1,107億円(2019年3月期)
⑤従業員:社員 約1,370名(2019.4.1)、協力会社 約1,820名、外国人実習生約240名
⑥関連会社:

株式会社相浦機械、株式会社オリーブベイホテル、大島酒造株式会社、大島エンジニアリング株式会社、大島総合サ-ビス株式会社、有限会社ダイゾーテック(ベトナム・ハノイ)

⑦沿 革

1973(昭和48)年2月 株式会社大島造船所設立
1987(昭和62)年8月 大阪鉄構部設立
1988(昭和63)年3月 大島トマト栽培開始
1990(平成2)年1月  100隻目の引渡を達成
2008(平成20)年6月 1200トンゴライアスクレーン竣工
2010(平成22)年1月 500隻目の引渡を達成
2018(平成30)年6月 800隻目の引渡を達成

(2)事業概要

バルクキャリア(バラ積み貨物船)の建造を得意とする造船メーカー

  • 平成元年、南尚社長が就任してから中型のバルクキャリアの建造に特化。
    平成2年~30年の29年間に渡り、造船部門は黒字決算だが、中国、韓国勢の建造船増加に伴い、受注環境は悪化している。
  • 地域の雇用を第一と考え、積極的に受注をしている。相手先は、3割が日本、7割が外国。
  • 1ドックで4隻同時建造をする等、超多数隻連続建造を推進。生産性世界一を目指している。
  • 造船業以外では、出島表門橋、新西海橋、大島大橋等を建造した鉄構事業、大島トマトを栽培している農産事業などにも取り組んでいる。
  • 工場設備
      工場面積:約81万㎡(24万5千坪)‥ヤクオフ!ドーム約12個分に相当。
      ドック:長さ535m×幅80m×深さ13m 
      ゴライアスクレーン:350t×2基、1,200t×2基
(3)その他、現状と課題等
  • 外国人実習生は、主力が中国出身者からベトナム出身者となっている。
    全国的な知名度が高くないため、来春の九州外からの内定者は1名に留まる。人材の確保に苦労している。
  • 女性従業員は約250名。技術職を含め採用を増やしたいと考えている。
  • 外洋に面しており台風時の強風等がある。連続建造を推進しているが、建造後の船の係留等に気を配っている。
《現地視察の様子》

 このほか、一般県道青方港魚目線(大雨による被災箇所)も調査した。