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平成23年6月11日 臨時記者会見

 ●会見内容●

諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案について

諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案について

○広報課長  それでは、昨日、国の方で公表をされました諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案につきまして、知事の方から会見を始めさせていただきます。
 よろしくお願いします。

○知事  ご承知のとおり、昨日、国の諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係るアセスメントの素案(九州農政局ホームページへリンク)が公表されたところでありますが、出張中でありまして、コメント(記者発表資料:諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に係る環境アセスメント結果素案公表に関する知事コメント)のみを出させていただいておりました。今日は、諫早市長さん、雲仙市長さんにもご出席をいただきまして、こういう機会を設けさせていただいたところであります。
 内容につきましては、コメントの中で触れさせていただいております。まだ詳細な問題点等については、これから検証、精査をしていく必要があるものと考えておりますが、現時点での私どもの考え方なりについて、まずご説明をさせていただきたいと思います。
 まず第1点目は、そもそも何のためにこの開門が行われようとしているのかという点であり、まさに根幹にかかわる部分であります。さきに両市長さんと連名で公開質問状を出させていただきましたが、総理の回答によりますと、有明海の再生を目指す観点から、上告を見送り、開門を受け入れるんだということでございました。
 しからば、有明海の再生につながる道筋が見えてきているのかどうかという点が一番の問題点ではなかろうかと考えております。アセスの素案をご覧いただくとおわかりのとおり、例えば、流速、あるいは水質等についてケースごとにアセスが取りまとめられておりますが、その影響範囲は極めて限定的である。潮受け堤防の排水門の周辺に限定される、あるいは諫早湾内あるいは湾口部に限定されるというようなアセス結果でありまして、有明海全体の環境変化に結びつくような結果が得られていないと我々は理解せざるを得ないと思っております。しからば、こういったアセスがなされた上で、なぜ開門されるのかというのが一番根本的な私どもの疑問であります。
 開門を行うとすれば、そのプラス効果とマイナス効果、これをしっかりと比較考量した上で、客観的に、あるいは科学的な説明をしていただかないと地元としては理解できない。むしろ、さまざまな観点から見た場合に、諫早湾内の水産業に対する影響は甚大なものがあるのではないかと危惧をしております。そういう根本的な部分についての疑問がますます強くなったと感じております。ぜひ、今回の結果を踏まえ、国におかれては開門の方針を見直していただくべきではなかろうかと考えております。
 2点目でございますが、開門の方法について、従前は3つのケースを想定して取り組むとされておりました。前回も、段階的な開放、そして一部制限を加えながらの開放ということでありましたが、この制限的な開放、ケース3の場合ですが、これにもう一つのケースが加えられました。この3−2のケースといいますのは、ご承知のとおり、既に平成14年に、短期開門調査を受け入れて、実際に調査が行われた事実があります。なおかつ、この短期開門調査の結果によりますと、この影響は諫早湾外の有明海全体にはほとんど及ばないという結果が明確に示されているところでありまして、なぜこうした経過を踏まえた上で、ケース3−2が今の時点で提案されたのか、極めて疑問に思っております。
 3点目でありますが、これは実は、今回の開門調査で一番我々が危惧の念を持ってきた点でありますが、漁業に対する影響であります。常時開放すると、速い流速が生じて濁りが拡散する、なおかつ、浮泥が堆積し、漁場環境が大幅に変わってくるというような懸念事項を表明し、開門を避けてもらいたいという根拠の大きな理由の一つにしていたのであります。確かに今回のアセス素案によりますと、程度の差はあるが、開門をすることになれば、護床工などの対策を講じても流況の変化、濁りの発生、泥土の堆積等に伴って諫早湾の水産資源、漁業にさまざまな影響を及ぼすと、こうされております。ところが、素案はここまででありまして、それでは、これを回避するために、どういう手法が講じられようとしているのか、一切その対策が示されていないのであります。これは、まさに漁民に対して、この被害を甘受せよと、こう言っているに等しい内容ではなかろうかと考えております。
 福岡高裁判決が命じた5年間常時開門というケースに一番近いのはケース1でありますが、その際には、洗掘防止のために巨額の護床工の実施が必要であるとされております。しかしながら、その効果について考えてみましても、潮位は諫早湾及び有明海にほとんど変化は見られない、潮流は下げ潮時に湾口部南側から島原半島に沿う流れが一部速くはなるが、その他の有明海にはほとんど変化がない、そう評価されている一方で、水質は諫早湾内で濁りが顕著に増加する、諫早湾口部周辺までこの濁りが拡大していく。そしてまた、諫早湾の奥の部分、北部沿岸部、河川の旧河口部分に泥土が堆積し、これに伴う漁業等への影響の可能性が大きいと、こう指摘をされているわけであります。まさに、被害は想定されるが、有明海全域についての物理的な影響は見られないという結果が明らかに示されているわけでありまして、こういった状況を前提にした開門というのは理解できないというところであります。
 それからまた、3−2については、先ほども申し上げましたように、平成14年に、短期開門調査を実際に行いましたが、このときは1カ月間の開門でした。それにもかかわらず、アサリの漁場等に対する被害が発生し、国自身、漁業補償を行ったことは十分理解されているところだと思います。
 そうした地元のこれまでの心配に対して具体的に答えていただいていないということであり、到底理解することは難しいと思っております。
 4点目は、農業に対する影響の部分でありますが、我々が一番心配していたのは、農業用水の確保対策であります。ため池をつくる案等々を含めて、いろいろな手法が検討されてきたであろうとは思いますが、結果として、地下水をくみ上げるという方法がとられております。地下水をこれ以上くみ上げると、地盤沈下を引き起こすということは従来から繰り返し指摘をしてきたところであります。地盤沈下に影響を来さないようにということで、深井戸を掘削し、地下から水をくみ上げようということでありますが、この点については、既に皆様もご存じのとおり、地元の方では、地盤沈下が非常に深刻な問題となっていました。このため、お互いに協定を結んで取水量を制限してきたという状況であります。今回、大体年間320万トンの水量を代替水源として想定されておりますが、これだけの膨大な水量を深井戸からくみ上げるということになると、本当に地盤沈下は心配する必要がないのでしょうか。お手元に、地下水にかかわる簡単なペーパー(地下水流動の推定資料)をお配りしています。58ページというグラフの資料、図面があると思いますが、そこをご覧いただきたいと思います。左側に、どのレベルから取水するかということでありますが、実は、森山地区がこれまで農業用水を地下からくみ上げていたために、大幅な地盤沈下を来して、大きな問題になっていました。干拓調整池が淡水化されたことによって、(農業用水が確保できたため)このくみ上げを停止したら、地盤沈下も止まったというのは、皆様ご承知のとおりであります。
 森山地区の状況を示している矢印の区間がありますが、ここが比較的浅い部分から取水をしております。ここら辺は農業用水を中心としてくみ上げられてまいりました。その左に小野地区というのがあります。これは、実は工業用水を取水しております。200メートル、300メートル程度のいわゆる深井戸から取水をしております。これまでは、深度の違いはあっても、同じ帯水層から取水をしておりましたので、森山地区から農業用水をくみ上げていた時点で、地盤沈下がこの取水地帯から生じていたところでありまして、森山地区の取水をやめたら地盤沈下が止まったという状況であります。深井戸から取水するということであっても、今、ようやく水の需給バランスがとれたところであろうと理解しております。そういう状況の中で、本当にこうした手法が可能であるのか、仮に可能であるとしても、なぜ調査が行われてこなかったのか。地元がそれだけ問題点を指摘していたにもかかわらず、一切の調査もなく、こういう手法が採用されたというのは、大きな不信の念を抱かざるを得ないところであります。
 そもそも、福岡高裁の議論の中でも、この代替水源確保というのは大きな論点の一つになっていたはずでありまして、地下水で対応できるといった議論は、原告、被告とも行っておりません。ということは、双方とも、地下水だけに頼るというのは無理だということを理解されていたのではなかろうかと私どもは考えております。そういう状況の中で、あえて今、また地下水を代替水源にするという案がなぜ示されてきたのか、地元の実情をどのように理解した上でこの地下水利用案が採用されたのか、理解に苦しむところであります。
 そしてまた、塩害と潮風害の問題であります。今回の素案では、既存の堤防、あるいは内部堤防から干拓地内の水路へ海水が浸透すると指摘をされております。しかしながら、その塩害を、例えば、堤防の基礎部地盤からの海水浸透をどうやって防止するのか、具体的な対策が示されておりません。おそらく、旧干拓堤防等については、堤防の下にぐり石等が敷き詰められて工事がなされていると考えておりますが、当然ながら、そういった状態であれば地下水が浸透していくわけでありますので、どうやって対策を講じようとしているのか、そこら辺は明確に対応策を示していただくべきだと思っております。
 そしてまた、潮風害の方でありますが、この潮風害は、内部堤防から締切堤防まで約3キロメートルの距離がありまして、調整池が淡水の状況であれば、ここが緩衝地帯になって潮風害の被害を緩和するという大切な役割を果たしてきました。ここが海水になりますので、当然ながら、潮風害の発生はあるものと予測の結果が示されております。しかしながら、これをどう回避していくのかということが極めて大きな問題になってまいりますが、国は、ローテーションで散水をしたらいいではないかと。いわゆる、代わりばんこに水をかけて塩分を取り除いたらいいじゃないですかというような考え方が示されておりますが、とんでもない話でありまして、この潮風害、葉っぱについた塩分を洗い流すのは、極めて短時間に一気に洗い流さないと潮風害は免れ得ないということであります。試算しますと、例えば、5時間に40万トンの水が必要になってきます。こういった水が地下水で確保できるのか。
 それともう一つは、今は、こういう被害が発生していない状況であります。新たな負担を農業者に強いるということになるわけでありまして、国は、この点についてもどう考えているのか、全く触れられておりません。
 そして5点目は、防災面への影響であります。この干拓事業の大きな目的の一つが防災面の確保という点にあるわけでありますが、実は、今の干拓事業計画は、諫早大水害の体験もあり、100年に1度の(頻度で発生が予想される大規模な)降雨量を前提にさまざまな施設の設計がなされております。潮受け堤防、内部堤防等もこういった降雨を前提に設計されているわけでありますが、今回のアセス素案では、30年に1度の雨を前提にして対策が講じられようとしております。端的に申しますと、例えば、ケース1の場合、大きく調整池の水位が上下するわけでありますが、この上下する最高潮位を考えた場合に、やはり内部堤防が洗掘されるおそれがあるということで、1メートル程度の嵩上げが必要ではないかといった対策工も検討をされております。実は、まだ細かく計算はしておりませんが、仮に、この事業全体が想定している100年に1度の雨が降ったときに、本当にこの程度の対策で耐え得るのかどうか。ここが決壊するということになれば、想像するのも恐ろしいぐらい被害が一気に拡大する可能性があるわけでありまして、そういった点についても大きな疑問点として今、感じているところであります。
 以上、大きな5点について、現時点での感想を述べさせていただきましたが、なお詳細な課題は幾つもあるだろうと思っております。これから内容を十分検証させていただいた上で、国に対しても、おそらく意見が求められることになってくるだろうと思いますので、しっかりと申し上げていかなければいけないと考えているところであります。

○広報課長  諫早市長さんと雲仙市長さんがお見えになっておりますのでお願いします。

○諫早市長  総括的にはもう知事の方からお話いただきました。
 ケースが4つございますが、そのケースを聞いた私の印象を申し上げますと、まず第一に疑問に思うのが、いずれの開門の仕方の場合でも、何らかの影響が漁業も農業も環境も防災にもあるということがこのアセスでは書いてございます。いずれにしても、程度の差こそあれ、開門をするということは、その影響が出るということになろうかと思います。そういった中で、12月6日の判決というものが一方では確定しているという状況でございます。一番疑問に思うのは、こういうアセスという調査をやっている途中で、なぜあの判決を受け入れたのかというのが一番の疑問です。判決を延ばしてもらうなり、反証をするための時間をいただくなり、そしてまた、上訴という手段もあったのに、その上訴をしなかったというのは、このアセスの結果を見る限り理解ができませんし、非常に疑問を持っているということでございます。
 先ほどから申しますように、このいずれのケースをとっても何らかの影響が出てくるということがわかっていながら、これまで農水省が言っていたこと、それから長崎県が言っていたこと、諫早市が言っていたことと同じような、ケース1、2、3、4ともに、これまで私どもが心配していた、疑念を持っていたとおりの結果だと思います。ですから、それを政府が受け入れたということには大きな憤りを感じているというようなことでございます。最高裁に上訴をするとか、それから判決を留保してもらって、このアセスの結果が、素案が出るまで待っていただくとか、そういうことがなぜできなかったのかというのが私の思いでございます。
 それから、先ほど知事もおっしゃいましたが、23項目にわたりまして1月に公開質問状という形で提出をさせていただきました。その回答にはほとんどなっていないというのが今回のアセスの結果であると。我々の疑念、そういうものをある意味、肯定しているのかなとも思いますが、それに対する回答にはなっていないというのが印象でございます。
 それから、従来3つの方法で開門のアセスをやるというようなことを言われておりました。今回、結果としては3−2というのが追加をされまして、4つの方法になりましたが、私は、4つの方法いずれにしても、こういう結果が出るだろうということは想定していた範囲だと思います。そういった中で、開門をしないで有明海の再生、防災、環境、農業ができないのかと、そういうことをずっと訴えてまいりました。ですから、昔は3つだったのでA、B、Cと呼んでいましたが、ケースDを加えてくださいと、開門をしないで再生の道はないのですか、それを検証する必要があるのではないでしょうかということを訴えてまいりましたが、それについても何にも触れられていない、開門ありきであるというような印象はぬぐえないということで、非常に残念でございます。それが私の思いでございます。

○雲仙市長  もう既に5点、知事がおっしゃいましたし、また諫早市長がおっしゃったとおりでございます。ですから、あえて私がいろいろ言うことはないわけでありますが、私どもは雲仙市として出発して6年になります。これは干拓を、すべて完了を前提として出発した市でございますので、市民の安心・安全というのは、干拓を一つの前提としてやってきたわけであります。ですから、今回こうした形でアセス案が発表されましたが、私たちとしては、これはもう既に市としての我々の安心・安全の範囲の前提ではないわけであります。ですから、農業振興にしましても、それからまた市民の生活安全にしましても、すべてこれらは私たちが前提としたことを覆したわけでありまして、先ほど諫早市長もおっしゃいましたが、上訴しなかったことについては、昨年の12月、総理官邸まで行きまして、私どもも市民のありったけの不満というものを総理自身に申し上げてまいりました。あのとき、なぜ、地元の意見を十分に聞かず、あるいはまた地元の方々の意見を尊重しないまま、ああいった上訴に対する断念という形の結果を打ったのか、それらが全く地元の声を無視された、地域主権を名乗られる政党にしては余りにもお粗末な判断の仕方ではなかったかというふうに思います。
 ただ今回、1つだけ私が言いたいのは、このアセスの結果の中で、水産振興については、諫早湾に影響があるということであります。私どもは、少なくとも、干拓と水産は共存共栄ができるということで、市としても、一生懸命これまで水産振興に対して力を入れてまいりました。ですから、例えば、瑞穂のカキでありますとかは、ブランドとして認定させていただきまして、大いにセールスもやってきたわけでありますが、これらに影響が出るということになってまいりますと、これからどういった形で水産振興、また諫早湾の水産業の方々と協力していけるのか、私は、この結論、アセスの結果というのは極めて重いと思っております。
 こういったことも踏まえて、我々はこの結果に対しては非常に異議を唱えていかなければならないし、今後もやはり干拓に対して、開門ということについては、体を挺してでも反対をしていかなければならないと思っております。

○広報課長  幹事社の方からご質問をお願いします。

○記者(西日本新聞社)  幹事社の西日本新聞です。
 中村知事にお聞きしますが、県としては、農・漁業、水害、防災ですね、いずれにおいても被害を全く出さないということを再三国に要請してきたと思いますが、アセスの結果は、対策を講じても被害が出るということを逆に裏づけるような結果になりました。こういうものを出してきた国に対して、今どういうふうな感情というか、お気持ちでいらっしゃるのか。

○知事  実を申しますと、今回のアセス素案については、私どもも、ある程度想定をしながら、地域の実情を踏まえた上で、繰り返し申し上げてきた中身がこういった形で改めて検証されたということではなかろうかと思っております。したがって、昨年末に控訴審判決について、ぜひ上訴していただくようにというお願いをしたにもかかわらず判決が確定してしまったわけでありますので、しかるべき状況は想定されたわけでありますが、まさに国の責任において適正に対処していただく必要があるものと思っております。
 これは先ほど申し上げたように、さまざまな影響の範囲というのは、諫早湾、そしてまた湾口部に限定されており、なおかつ有明海全体にはほとんど影響がないというような結果でありますので、やはり地元のそうした思いというものをしっかり尊重していただきたいと思っております。

○記者(西日本新聞社)  82億円の3−2のケースというのが一つ、かなり金額が抑えられた案がつけ加えられました。これについては農水省と官邸の間で金額をめぐっての綱引きがあったというようなお話が出ていますが、知事は、この82億円が出てきた背景については、どういうふうに考えていらっしゃいますか。

○知事  経過については詳細承知しておりませんのでコメントのしようがないのですが、もともと今回の開門調査というのは、先ほど申し上げたように、開門することによってどんなプラスの効果が出るのか、そして開門することによって失われるマイナスの影響、これがどのくらい、どんな分野にあるのか、そこをしっかりと見極めて比較考量した上で判断をしなければならないと思います。その判断の中には、やはり地域的な、この地域にとってはいい話、この地域にとっては悪い話というのがあるかもしれませんが、今回の結果を見る限りにおいては、特定の地域によくて、特定の地域によくないといった結果ではないと思っています。結局、地元が一番大きな被害、影響をこうむることになるというのは明らかでありますが、それに対して、有明海全体に対するプラスの効果は一切期待されないという調査結果でありますので、本来、こうした形での開門調査はあってはならないと思っております。引き続き、そうした考え方については国にしっかり申し上げていく必要があるものと思っております。
 そういう中で、3−2のケースというのが新たに選択肢として提案されたわけでありますが、正直申し上げて、想定もしておりませんでした。なぜならば、既にやった手法だからです。(平成14年の短期開門調査で)結果も出ているわけですので。確かにこの手法を採用するのが一番経費的には安上がりですが、全体に対する評価をする中で、こういった小手先の対策で本当に理解が得られるのかというのは、はなはだ疑問に思っております。

○記者(西日本新聞社)  これを踏まえて、鹿野農水大臣が長崎県に来てお話をしたいということですが、そのときには、知事はどういったことを重点的にお伝えしようと考えていらっしゃいますか。

○知事  これまでも潮受け堤防の開門にかかわる話としては、繰り返し公開質問状等も出させていただいて議論をしてきたところでありますが、そうした国の方針なり、姿勢の根拠となる部分を今回、科学的に明らかにしようということで調査されたわけでありますので、その結果を踏まえ、国がどういうお考えなのか、またその根拠は何なのかというのはしっかりお聞きする必要があると思っております。

○記者(朝日新聞社)  国はこれまで、アセスが出るまではということで開門に向けた具体的な協議というのは進んでこなかったのですが、こういう形でアセスがようやく出て、国はいよいよ開門に向けた具体的な協議というのを県なり、市なり、原告側と進めていくということを考えておられるんでしょうけれども、知事は、このアセスの結果をもって、具体的な開門に向けた協議を国と進めていけるというふうに現段階ではお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

○知事  現段階では、先ほどから申し上げているように、我々が一番懸念しております事項がある程度このアセス素案によって明らかにされた、なおかつ、漁業被害等については国の姿勢がいまだに示されていないということでありまして、開門に向けた協議に応じられるような状況ではないと考えております。

○広報課長  ご質問はございませんか。

○知事  皆さん、おそらくこの概要(開門調査に係る環境影響評価準備書(素案)の概要(九州農政局ホームページへリンク))はご覧いただいたと思いますが、12ページ以降、例えば、流速でありますとか水質の問題、「ケース1」から「現況」を差し引いたもの(等、各ケースと現況との差)が一番右の欄に効果として明確に示されております。これを見ると、本当に明らかに、いろいろな影響が生ずるのは諫早湾内であり、ということはすなわち、長崎県の漁業者の方々が一番甚大な影響を受けるだけであって、有明海には全く影響がないということが、この数ページの資料で明らかに示されていると私は理解しております。

○記者(朝日新聞社)  先ほど地下水の話をされていましたが、当然、原告側も地下水を利用してというのは、先ほど、裁判の中でも県も原告側もそんなことは言っていないのに、今回こういうアセスで地下水を利用する云々という話が出てきました。原告側もおっしゃっていたんですが、もう国にはお任せできないと、国に任せていると、突然我々が望んでいないようなアセスの結果が出てきたりするということでした。県としても、先ほど協議に入る状況ではないとおっしゃっていましたが、一方で判決が確定しているという現状がある中で、例えば、原告なり国なりと一緒にある程度考えを、アセスというか、開門に向けた何か方法、施策というものを考えていくというのも一つの方法なのかなという気はするんですが…。

○知事  私どもは基本的に、開門があってはならないという考え方で一貫して意見を申し上げてきたところであります。この結果を見て、開門したらどうなるかというのは何も示されていないわけでありますので、そこはやはりしっかりと説明をしていただかないと理解できません。
 それと、改めて申すまでもないことでありますが、長崎県内の関係者の方々が訴訟当事者としてこれから裁判を継続していかれるわけでありますので、その一方で、行政が開門を前提に、そのための検討、協議を進めるということはあってはならないと私は考えております。

○記者(時事通信社)  大臣は、できるだけ早く説明に来たいとおっしゃっていますが、今のところ、知事の方に、いつごろ来たいとか、そういった具体的なお話は出ていますでしょうか。

○知事  私も今日帰ってきたばかりでありますので、今のところ、私はいただいておりません。

○記者(長崎新聞社)  2点ほどお伺いしたいのですが、先ほど知事がおっしゃった地下水の件で確認なんですが、実際の調査がなく、こうした深井戸を使うということが示されたとおっしゃったと思うのですが、実際に調査もなくというのはどうして分かったんですか。

○知事  それは聞いてみました。

○記者(長崎新聞社)  国がそう言っているんですか。

○農林部長  例えば、具体的なボーリング調査等をやった上で出した答えですかと尋ねてみましたが、具体的なボーリング等々は行っていないと伺っております。

○知事  冒頭から代替水源としての候補の一つであれば、当然ながらボーリング調査等は行われて、検討されて、こういった形で盛り込まれてしかるべきだと思っておりますが、そうした手順がなされたのかということを確認しましたところ、そういう手順なしに盛り込まれたということでした。非常に唐突な思いもいたしておりますし、現在、その対策工費として1,000億円ないし八十数億円という形が示されておりますが、おそらく、農業用水をどうやって確保するのか、ため池をつくるにしても、あるいは別の方法で確保するにしても、この対策経費というのは数百億円に及ぶだろうと思います。そうなると、地下水で対応不可能となったときに、また事業費が幾ら膨らんでくるのか。これは相当大幅な変動が出てくるのではないかと考えております。

○記者(長崎新聞社)  一時は下水処理水を使うという話もささやかれたのですが、急に出てきた話ということなんでしょうか。

○知事  非常に唐突に感じております。一つは、先ほども申し上げたように、我々が、一番難しいのは農業用水の確保でしょうと、しかも相当な経費がかかりますと。国に対しては、六百数十億円周辺の対策経費がかかって、農業用水を確保するとなれば、例えば、ため池とか止水堰とかを考えると、やはり数百億円はかかりますよということを申し上げてきた経過があって、それが15億円のこの地下水案に突然代わってきているという思いで受けとめております。

○記者(長崎新聞社)  それともう一点、全く別件なんですが、上告を断念されたのは菅首相ですが、菅首相は、ご存じのように、8月、今年中かわかりませんが、退任されるようですけれども、実際に何かをするというのは次の、また次の首相の判断になってくるのではないかと思うんですが、そこら辺をどういうふうに見ていらっしゃいますか。

○知事  これは訴訟の結果として、国は責務をもう既に負っているわけでありますので、政権がどうかわろうと、今のままでは、その責務を負い続けていく、必ず履行するのが前提であろうと思っております。したがって、我々は別個の訴訟でもって判決が確定したわけでありますので、もう一つ別の判決を確定させていく必要があるということで、訴訟を関係皆様方、提起されているわけであります。しっかりそうした手順を踏んでいかないと、なかなか今回の結果を覆すことは難しいと思っております。

○記者(朝日新聞社)  今回のコメントの中で、対策費に係る額についてどう思うかという言及がなかったと思うのですが、費用についてはどう思われていますか。

○知事  費用については、国の責務で行っていただくわけでありますので、そこを多い、少ないという評価をさせていただくのは避けさせていただきました。これは国が自ら責務を負われたわけでありまして、我々としては、仮に開門調査が行われるということになっても、地元に対する被害が生じないようにしていただく必要がありますので、それについて、費用がかかるからいいですよと申し上げるわけにはいかない立場であります。

○記者(朝日新聞社)  先ほどの、協議の場に応じる状況ではないというお話のところですが、これから手続完了に向けて意見聴取が始まりますよね。その意見聴取を拒否するということではないんですよね。

○知事  意見は意見として、これまで同様、しっかりと申し上げていく必要があると思います。

○記者(朝日新聞社)  意見聴取以降のスケジュールについては足りると思っていますか。

○知事  この意見聴取、1カ月程度設けてあるんですが、これだけの資料に1カ月で意見を出せといっても、なかなか難しいと思います。やはり相当高度で専門的な知識も必要ですので、我々も、県の職員だけでは対応しかねる部分も多々あろうかと思います。専門家の方々のご意見等もお聞きしなければなりませんし、勉強をさらに積み重ねていく部分も必要だろうと思いますので、正直申し上げて、1カ月というのは何とか延ばしていただけないかと思います。そうしないと、地元としてしっかりした意見を申し上げるには余りにも短過ぎるかなという思いであります。

○記者(NHK)  大臣は来たいというふうに言っているんですが、知事は、会談には応じられる意向はあるものの、意見を述べて、特に開門に向けた協議のテーブルに着くというようなものではないというような感じですか。

○知事  今回、鹿野大臣が、私も記者会見等の場でご発言等をお聞きして、地元に説明に行きたいというお話をなさっておられるということだそうですが、今回の環境アセスというのは、我々自身、開門を行うにしても、しっかり科学的、客観的な根拠を明確にしてその是非を判断してもらいたいということを申し上げてきたわけです。したがって、アセスが出る前に判断しないでくださいというのは繰り返し申し上げたんですが、結果はそうなりませんでした。しかし、やはり今回、手続をされて、私どもの質問状にも、環境アセスの結果が得られた上でということを、ほとんどすべての項目でそうお答えになっておられるわけで、この結果を踏まえてご説明をいただくということでしょうから、説明はいただく必要があるものと思っております。しかしながら、その後、では開門しましょうと、長崎県は開門するにはどうしたらいいですかという、その協議の場、これには到底参加いたしかねるという思いであります、今の段階では。

○広報課長  よろしいでしょうか。
 以上で諫早湾の環境アセスの素案に関しての会見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○知事  どうもありがとうございました。

★発言内容については、わかりやすいように一部変更している部分があります。
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