障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例 平成27年度活動報告書 長崎県福祉保健部障害福祉課 はじめに  本県では、障害のあるなしにかかわらず、誰もが社会を構成する一員として、あらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指して、障害のある人に対する差別を禁止し、差別をなくすための 施策を推進するための事項を定めた、「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を制定しています。 この報告書は、条例全面施行から2年目にあたる平成27年度、1年間の相談活動実績をまとめたものです。 相談窓口にどのような相談が寄せられ、問題の解消のために何が求められているのかを県民の皆様に知っていただくことで、障害のある人に対する差別をなくし、共生社会を実現するためにできることは何なのか考えていただくきっかけになればと思います。   目次 T 条例の仕組み 1 条例の目的 2 障害のある人とは 3 差別の禁止 4 相談体制 5 問題解決のための調整機関 6 問題解決までの流れ U 相談活動の実績 1 相談者 2 相談方法 3 相談分類 4 相談分野 5 対応方法 6 活動回数 7 連携 8 圏域別の相談件数 V 相談事例 1 不均等待遇に関する相談事例 2 合理的配慮に関する相談事例 3 その他の相談事例 T 条例の仕組み                                   1 条例の目的 この条例は、障害や障害のある人に対する県民の理解を深め、障害のあるなしにかかわらず、誰もがあらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指しています。   2 障害のある人とは 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病を原因とする障害など心身の機能の障害があり、これらの障害と社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人を「障害のある人」と規定しています。           3 差別の禁止 不均等待遇を行うこと 不均等待遇とは、障害や障害に関することを理由として、区別、排除、制限したり、条件を課すなど、障害のない人と異なる取扱いをすることです。特別な事情がないのに不均等待遇を行うことは差別に当たります。 合理的配慮を怠ること 合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同等に権利を行使したり、同等の機会や待遇を受けるために必要な現状の変更や調整を過度な負担が生じない範囲で行うことです。障害のある人の求めがあった場合に、特別な事情がないのに合理的配慮を怠ることは差別に当たります。   4 相談体制 差別に関する相談窓口として、各市町に地域相談員を192名(平成28年3月31日現在)、長崎県障害福祉課内に広域専門相談員を2名配置しています。相談を受けた地域相談員と広域専門相談員は、当事者それぞれの話を十分に聴き、問題解決に向けて取扱方針を決定し、その方針に基づき連携して対応します。地域相談員は、各市町が委嘱している身体障害者相談員・知的障害者相談員・精神保健福祉相談員で承諾が得られた方に委託しています。 地域相談員の内訳(平成28年3月31日現在) 身体障害者相談員115名、知的障害者相談員61名、精神保健福祉相談員12名  5 問題解決のための調整機関 地域相談員や広域専門相談員による問題解決が困難な場合は、障害のある人やその関係者からの申し立てにより、「障害のある人の相談に関する調整委員会」(以下、「調整委員会」という。)が助言・あっせんを行います。調整委員会は、申立てのあった事案について専門的な見地から公正・中立な判断をし、当事者双方の事情や意見を検証して、解決に向けた助言やあっせんを行います。 6 問題解決までの流れ 差別に関する問題が発生したら、県の相談窓口である地域相談員又は広域専門相談員が相談を受け付けます。相談員が調査や調整等を行い問題の解決を図ります。相談員による解決が困難な場合は、申立てにより調整委員会による助言・あっせんを行い解決を図ります。特に悪質な差別があったと思われる事案を解決するための手段として、知事による勧告・公表を用意しています。 U 相談活動の実績                                 1  相談者 本人 52件(68%)家族10件(13%)支援関係者8件(11%) 友人・知人1件(1%) その他5件(7%) 障害区分 肢体不自由18件 視覚障害16件 聴覚障害2件 内部障害5件 知的障害4件 精神障害20件 発達障害0件 その他10件 計76件 ※区分については、相談者へ確認し分類している。 相談者は、障害のある「本人」が52件と最も多くなっています。「その他」の5件は、学校関係者、一般の県民の方、他県の方などからの相談の件数が含まれています。障害区分の「その他」には、障害のある人の状況全般に関しての相談などの件数が含まれています。 2 相談方法 障害のある人に対する差別に関する相談は、電話、面談、手紙、ファックス、メールにより受理しています。相談は、障害の特性や状況に合わせて相談者が伝えやすい手段でできるようにしていますが、電話による相談が65件と大半を占めています。受付時の相談方法 電話 65件 面談 6件 手紙2件 メール3件 計76件 3 相談分類 平成27年度、1年間に相談窓口に寄せられた相談は76件で、年度内に終結した事案は75件でした。その75件の分類内訳は、「差別に関する相談(特定相談)」が3件(不均等待遇1件、合理的配慮の欠如2件)、「その他の相談」が72件でした。平成27年度に調整委員会へ申立てが行われた事案はありませんでした。   相談分類別の件数(平成28年3月31日現在、対応中であった事案1件は数に含まない。)不均等待遇1件(1%)、合理的配慮の欠如 2件(3%)、その他72件(96%) 、計75件「その他の相談」は、調整を望まない事案や相手方の特定が困難な事案、ご質問やご要望などです。   相談分類と障害区分(平成28年3月31日現在、対応中であった事案1件は数に含まない。) ( 肢体不自由)不均等待遇0件、合理的配慮の欠如1件、その他17件、計18件 (視覚障害)その他16件、計16件 (聴覚障害)その他2件、計2件 (内部障害)その他6件、計6件 (知的障害)不均等待遇1件、その他3件、計4件 (精神障害)合理的配慮の欠如1件、その他19件、計20件 (発達障害)なし (その他)その他9件、計9件 4 相談分野 条例では、日常生活や社会生活での10の個別分野における差別行為の禁止を特に定めています。 (差別の禁止が規定されている10の個別分野) 福祉サービスの提供、医療の提供、商品及びサービスの提供、労働及び雇用、教育、建築物の利用、交通機関の利用、不動産取引、情報の提供等、意思表示の受領 相談分野の分類ごとの件数 福祉サービスの提供5件、医療の提供6件、商品及びサービスの提供4件、労働及び雇用2件、建築物の利用8件、交通機関の利用5件、不動産取引0件、情報の提供1件、意思表示の受領1件、その他43件、計75件 10分野のうち、「建築物の利用」の分野が8件と最も多く、続いて「医療の提供」の分野が6件となっています。「その他」の分野には、条例に関する意見・要望、様々な機関やサービスへの意見・要望、生活全般における不満、虐待と思われる事案などがありました。   5 対応方法 対応と相談分野の関係(平成28年3月31日現在、対応中であった事案1件は数に含まない。) (相手方との調整)医療の提供1件、商品及びサービスの提供1件、労働及び雇用1件、建築物の利用1件、交通機関の利用3件、その他1件 計8件 (関係機関引継ぎ)福祉サービスの提供1件、医療の提供1件、商品サービスの提供2件、建築物の利用2件、その他4件、計10件 (助言)医療の提供2件、交通機関の利用2件、情報の提供1件、その他4件、計9件 (相談窓口の紹介)その他6件、計6件 (情報提供・資料送付)医療の提供1件、労働及び雇用1件、建築物の利用4件、意思表示の受領1件、その他11件、計18件 (傾聴主体)福祉サービスの提供4件、商品及びサービス1件、建築物の利用1件、その他17件、計23件 (その他)医療の提供1件、 計1件     対応と相談分類の関係(平成28年3月31日現在、対応中であった事案1件は数に含まない。) (合理的配慮の欠如)相手方との調整2件、計1件 (不均等待遇)相手方との調整1件、計1件 (その他)相手方との調整5件、関係機関引継ぎ10件、助言9件、相談窓口の紹介6件、情報提供・資料送付18件、傾聴主体23件、その他1件、計75件    相談者の同意に基づき、相手方から聴き取り調査を行い、双方の意向を確認した後に条例における対応方針を決定し、調整や対応を行っています。「差別に関する相談(特定相談)」3件においては、全てが「相手方との調整」により事案の終結に至りました。「その他の相談」においては、相談の内容によって、条例における考え方などを情報提供することや資料を提供することで終結した事案、話をお聴きしたことで気持ちが落ち着かれ終結した事案、「相手方との調整」を要する事案など様々な事案が含まれています。 6  活動回数 対応ごとの活動回数( 平成28年3月31日現在、対応中の事案1件は数に含まない。) ( 相手方との調整)8件、平均活動回数5.1回 ( 関係機関引継ぎ)10件、平均活動回数4.9回 (助言)9件、平均活動回数2.7回 (相談窓口の紹介)9件、平均活動回数2.8回 (情報提供・資料送付)18件、平均活動回数2.2回 (傾聴主体)13件、平均活動回数1.1回 (その他)1件、平均活動回数2回 活動回数(対応回数)は、事案や対応方法によって大きな差がありますが、平均すると2.9回となりました。 問題の解決・終結までに時間を要する事案や、複数の機関と連携した事案においては、活動回数(対応回数)が増加する傾向がありました。 7 連携 他機関との連携 問題解決のために、必要な場合には、他の機関等と連携を図って対応を行っています。他機関等と連携し解決に至った件数は、16件でした。  主な連携先は、県の他部局・担当課、市町の担当課、障害者団体、相談支援事業所などです。複数の機関と連携を図った事案もありました。 地域相談員との連携 相談活動 地域相談員が「差別に関する相談」を受けた際は、広域専門相談員と連携して問題の解決を図っています。 地域相談員が相談者に広域専門相談員を紹介した事案や、地域相談員自身の相談で広域専門相談員に対応を依頼し、終結した事案は17件でした。   地域相談員研修会 県内8地区で延べ12回地域相談員研修会を開催し、条例や相談活動業務の流れ、障害特性の特徴についての研修を行いました。 相談員通信 地域相談員と広域専門相談員の連携の一助として、相談員通信を年に2回発行しています。内容は、相談実績データ、条例に関する時事の話題、相談対応時に留意したいこと、障害者差別解消法などについて掲載しました。   8 圏域別の相談件数 相談者の居住地域を障害保健福祉圏域(8圏域)で分類しています。 長崎圏域 32件 県 北圏域 16件 県央圏域 4件 県南圏域 13件 五島圏域 2件 上五島圏域 2件 壱岐圏域 0件 対馬圏域 0件 不明 7件 合計 76件   V 相談事例                                  寄せられた相談のうち、分野ごとに主なものについて、その内容、解決に至るまでの経緯を記載しています。 また、対応に当たった広域専門相談員のコメントも添えています。 1 不均等待遇に関する相談事例 (1)意思表示の受領の事例 (事例) 聴覚障害のある人の連絡受付方法 (相談者) 事故処理の担当者 (相談内容) 事故を起こした聴覚障害のある人は、障害のため、電話での連絡が難しい状況である。保険会社は、「本人が電話連絡しないと、保険での負担はできない。」と言っているが、他の連絡手段も認めてほしい。 (対応) 保険会社の担当者から聴き取り調査を行い、条例の趣旨と相談内容を説明し、対応を依頼した。 (結果) 聴き取り調査により、代理人による電話連絡であっても、受付可能であることが判明した。担当者へ、相手にとって分かりやすい説明を行うなどの配慮が必要であることを伝えた。相談者、担当者の態度など納得できない部分もあるが、条例における対応はこれ以上望まれないことから終結とした。 (コメント) 条例において、特別な事情がないのに、障害のある人が意思表示をするときに特定の媒体(手段)しか認めず代替手段を認めないことは差別に当たるとしています。障害のある人の意思表示や連絡を受ける側の配慮として、電話ではお互いの意思疎通が困難な場合、電話での対応に代えて、ファックスやメールなど他の通信手段による対応を行う必要があると考えられます。 2 合理的配慮に関する相談事例 (1)商品及びサービスの提供の事例 (事例) 銀行での手続きにおける代筆 (相談者 ) 身体障害(肢体不自由)のある人 (相談内容) 銀行で手続きをする際、自筆のサインを求められ、障害のためできないと伝えたが、更に強く求められた。手に障害があるので、銀行員が代筆をしてほしい。 (対応) 銀行の担当者から聴き取り調査を行い、条例の趣旨と相談内容を説明し、対応を依頼した。 (結果) 聴き取り調査により、相談者が手続きを行う制度は、銀行が独自で定める代筆規定が適応できないことが判明した。銀行側は、相談者が自筆のサインをしやすい方法や道具、場所・時期など様々な配慮をしていることが判明し、相談者へ伝えた。お互いに一定の理解を示され、相談者の状態や状況を考慮しながら、手続きを進められることが確認できたため終結とした。 (コメント) 合理的配慮の提供については、合理的配慮を求める障害のある人と、提供する側がお互いに話し合うことで、決定していくことが求められます。障害のある人の状態や状況はもちろんのこと、合理的配慮を提供する側の状況や提供可能な範囲を理解し合うことが必要です。本件は、お互いの理解の促進を補助する役割として、広域専門相談員が対応した事案でした。 (2)建築物の利用の事例 (事例)コンビニエンスストアの出入口 (相談者) 身体障害(肢体不自由)のある人 (相談内容) 居住地域にあるコンビニエンスストアの調査を自主的に行ったところ、出入口が自動ドアではない店舗が数件ある。新築であっても自動ドアではない店舗については、企業としての基準や考え方があるのか確認してほしい。車いすを使用する人が店舗を訪れた場合、不便なので、改善を要望してほしい。 (対応) 企業の担当者から聴き取り調査を行った。 (結果) 聴き取り調査などにより、各店舗の状況に応じて、バリアフリー化への取組みを行っている状況を把握した。また、新築であっても幅・寸法の関係などにより自動ドアの設置やバリアフリー化ができない部分もあることが判明した。相談者へ企業の取組みを伝え、合理的配慮について説明し、了承を得たことから終結とした。 ( コメント) 特定相談は、実際に、どこで・誰が・どのようなことで困っていて差別の問題が生じているのか把握したうえで、具体的な対応方針を検討することになります。誰もが使いやすいようにバリアフリーの設備が整っていることが望ましいですが、条例においては、自動ドアではないことをもって直ちに差別であると断定するものではありません。しかし、それに代わる合理的配慮の提供は必要です。自動ドアではないために具体的な配慮を求めても、特別な事情がないのに提供を拒まれるようなことがあれば、差別の問題があると考え、条例における対応を検討していきます。 (3)交通機関の利用の事例 (事例)タクシー利用時の配慮 (相談者)精神障害のある人 (相談内容) タクシーを利用した時、運転手から、乱暴な態度や言葉で精神障害者福祉手帳の提示や、領収書へのサインを求められた。運転手の障害のある人に対する応対を改善してほしい。 (対応) タクシー会社の責任者に条例の趣旨と、相談内容について説明し、運転手の障害のある人に対する応対の改善を依頼した。 (結果) タクシー会社の責任者から、手帳の提示を求める際の配慮や、応対について運転士への指導を行うという回答が得られた。タクシー会社の回答を相談者へ伝達し、了承を得たことから終結とした。 (コメント) 運転手が障害のある人の運賃割引の適用を確認するために、障害者手帳の提示を求めることは必要なことですが、その際に、障害のある人に応じた応対や配慮を行うことは大切なことです。外見からは分かりにくい障害もあり、また、障害の種類は同じであっても、程度や症状・状況は一人ひとり異なります。そのため、お互いに理解し合いながら、場面に応じた柔軟な対応が求められます。 (4)交通機関の利用の事例 (事例) 低床バスの運行時刻固定 (相談者) 身体障害のある人(車いす使用) (相談内容) 相談者は車いすを使用されており、自宅最寄のバス停は側道が狭くてスロープを下せず乗降できないので、バス停以外の場所で乗降させてほしい。現在は、自宅から少し離れた別の通りのバス停を利用している。低床バス、ノンステップバス運行の時刻を固定し、時刻表に表記してほしい。 (対応) バス会社の担当者から聴き取り調査を行い、条例の趣旨と、相談内容について説明を行った。相談者とともに、現地調査を行った。 ( 結果) 聴き取り調査と現地調査により、バス停付近の道路状況は、側道が狭い上にカーブがあることや道路運送法の観点から、相談者が望む場所で乗降することは、安全性の確保が難しいことが判明した。また、過去に、バス停の移動の検討を行った経緯もあることが判明した。バス会社の全バス保有台数の内、低床バスは4割弱であり、運行ダイヤは車両点検を行った上で前日に決定するため、時刻の固定は現時点では困難であることが判明した。また、サービスセンターに連絡すれば、乗継先の運行時刻を含めてお知らせされている状況であることも判明した。バス会社からは、現時点でできることは限られているが、将来的に道路状況が改善され、低床バスの保有台数が増えることで可能にしていきたいと意向が示された。相談者は今後の期待を抱きつつ、バス利用者の安全確保を踏まえて一定了承をされたことから終結とした。 (コメント) 障害のある人が日常生活を営む上で、障害のない人と同様に公共交通機関を利用できることが必要であり、その利用を確保するために、障害のある人から求めがあった場合、事業者は合理的配慮を検討することになります。本件では、バス会社の状況や、障害のある人を含む利用者全体の安全性・信頼性等を考慮した結果、相談者の望む改善はできませんでしたが、バス会社は、障害や障害のある人について理解されており、障害のある人の状況を踏まえた改善の継続的な検討を行っていく意向が示されました。 3 その他の相談事例 (1)情報の提供の事例 (事例) シンポジウム開催時の配慮 ( 相談者) シンポジウム開催スタッフ (相談内容) 参加者20人程の規模のシンポジウムを開催し、障害のある人も参加される。聴覚障害のある人からの参加申し込みはないが、飛び入りで参加される可能性がある。手話通訳や要約筆記の派遣が必要だと思うが、予算がないのでできない。このような場合の差別に当たるのか。 (対応) 相談者へ合理的配慮について説明を行った。 ( 結果) 合理的配慮は、障害のある人の求めに応じて、過度な負担にならない範囲で提供することとしている。手話通訳や要約筆記の派遣をしないことをもって直ちに差別であると断定するものではないが、聴覚障害のある方が参加される場合、必要に応じて、それに代わる配慮は必要であると考えられる。シンポジウムの流れや講演の内容が分かる資料の準備・提供すること、聴覚障害のある人に説明をした上で、開催スタッフがメモをして情報提供を補うことなどを提案する。相談者の了承を得たことから終結とした。 (コメント) 障害のある人から合理的配慮を求められた場合、「社会通念上相当と認められる範囲を超えた過度な負担」であるかについては、個別事案ごとの判断となります。経済的・財政的なコストの面、業務遂行に及ぼす影響の面などを考慮しながら、検討することになります。求められたとおりの対応は困難であっても、説明し理解を得た上で、それに代わる対応を行うことが大切なことであると考えられます。   (2)交通機関の利用の事例 (事例) 障害者手帳の提示を求める時の配慮 ( 相談者) 知的障害のある人 (相談内容) 公共交通機関の障害者割引を利用する際に、乗務員から障害者手帳の提示を求められるが、その言葉遣いや態度が差別的で傷ついている。傷ついていることを、匿名で企業に伝えてほしい。 (対応) 企業の担当者に条例の趣旨と、相談内容について説明し、障害のある人に対する応対の改善の検討を依頼した。 (結果) 相談者が、匿名での対応を希望されたことから、具体的な合理的配慮の調整等はできなかった。企業の担当者は、「条例の趣旨や、障害のある人に応対する際の配慮について、企業全体に周知していく。」との意向を示された。相談者へ企業側の意向を伝え、今後の様子を見てもらうこととし、了承を得たことから終結とした。 (コメント) 障害のある人に対する差別的な言葉はもとより、不快に感じられる言葉を使わないようにすることは当然のことです。知的障害のある人は、一度にたくさんのことを言われると混乱するので、必要に応じて、短い言葉で「ゆっくり」「ていねいに」「くりかえし」説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対することが求められます。障害の程度は一人ひとり異なるので、相手の話をよく聴き、安心してコミュニケーションが図られるように心掛ける必要があると考えられます。 おわりに 本県では、平成26年4月1日に「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を施行し、条例施行後2年目となる平成27年度は、前年度の活動経験も踏まえ、相談活動や条例の普及啓発に努めてきました。 また、国においては、平成28年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。 本県の条例もこの法律も、全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現という目的は同じです。 今後も相談制度の適切な運営を図るとともに、法律と併せて、条例の更なる普及啓発に努めてまいります。 相談・問合せ先 長崎県福祉保健部障害福祉課 広域専門相談員 郵便番号 850−8570  住所 長崎市江戸町2−13 電話 095−895−2450 ファックス 095−823−5082 メール s04100@pref.nagasaki.lg.jp