長崎県におけるフッ化物洗口効果検証に関する報告について

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長崎県におけるフッ化物洗口効果検証に係る概要

1.本県のフッ化物洗口効果検証について

(1)フッ化物洗口等効果検証委員会の設置

・設置の目的

 県民の歯・口腔保健の向上を図り、もって県民の健康を維持・増進させるため、県民の歯・口腔の健康を守る施策に関連するエビデンスの創出及び効果の検証を行うことを目的にフッ化物洗口等効果検証委員会を設置しました。

・委員会で行う検討及び作業内容

  1. 調査研究、効果検証の企画・立案
  2. 調査研究、効果検証の進捗管理
  3. 調査研究、効果検証に係る問題点の整理・分析
  4. 調査研究、効果検証に係る報告書の作成
  5. その他、調査研究、効果検証の円滑な実施に必要な事項
 
(2)フッ化物洗口等効果検証委員会の開催経緯

(令和元年)

8月23日(金) 第1回 フッ化物洗口効果検証委員会
  (議題)論点整理と今後の進め方 等                       

9月25日(水) 第2回 委員会
  (議題)既存データの確認、効果検証の具体的な方法 等

10月 効果検証開始

11月13日(水) 第3回 委員会
  (議題)効果検証の進捗確認と報告内容の方向性 等

12月19日(木) 第4回 委員会
  (議題)効果検証の中間報告

(令和2年)

 2月6日(木) 第5回 委員会
  (議題)報告書の策定及び県への報告 等

 3月13日(金) 第6回 委員会
  (議題)報告書案確認作業について 等

(3)その他

 本委員会で検討した効果検証に係る内容(委員会で作業に携わった委員名簿等及び県内のフッ化物洗口実施による結果・考察等の詳細)については、本ページの最後に記載している「長崎県フッ化物洗口効果検証に係る報告書の公表について」を参照してください。

 

2.フッ化物洗口の効果検証結果の概要について

(1)本県のフッ化物洗口の効果検証結果の概略
  • 効果検証に使用したデータ

a)フッ化物洗口の実施率推移とむし歯の経年推移

*長崎県・佐賀県・秋田県のフッ化物洗口実施施設データ・12歳1人あたりの永久歯むし歯数経年データ

*県内の市町・保健所圏域別の12歳1人あたりの永久歯むし歯数の比較データ

長崎県小学校におけるフッ化物洗口実施率と12歳児1人あたりの永久歯むし歯数の年次推移

平成25年度保健所圏域別12歳児1人あたりの永久歯むし歯数の比較

平成30年度保健所圏域別12歳児1人あたりの永久歯むし歯数の比較

b)施設の実施率とフッ化物洗口の年数によるむし歯の推移

*保健所圏域別の幼保施設のフッ化物洗口実施率と年代別むし歯有病者率のデータ

平成25年度幼保洗口実施率と5歳児(平成25年度当時)のむし歯罹患率の変化(圏域別)

c)県内のCO(シーオー)及び1人あたりの永久歯むし歯数とフッ化物洗口によるむし歯抑制効果

※CO(シーオー):要観察歯 
 Questionable Caries under Observation)とは、処置を必要とするむし歯と判定されませんが、むし歯の初期症状を疑われる所見が認められる歯のことです。

*県内(佐世保市)のむし歯とCOのデータと新潟県と静岡県のCOの調査結果

佐世保市における年齢別1人あたりの永久歯むし歯数とCO数

フッ化物洗口実施下における同一対象者のCO歯面数の変化(静岡県の某小学校)

  • 効果検証方法

 県(県教育委員会含む)及び県歯科医師会が収集している既存データ、他県のデータなどを活用し、学術的な見地から分析方法を委員会で検討し、本県のフッ化物洗口推進によるむし歯対策の効果を検証しました。

(2)本県のフッ化物洗口の効果検証に係る考察の概略
  • 施設内フッ化物洗口の継続実施の必要性

 長崎県におけるフッ化物洗口は、低年齢ではある程度効果が出始めていますが、小学校以降ではまだ十分な効果が出ているとは言い切れず、さらに継続して行く必要があります。
 また、保健所圏域間並びに市町間にはむし歯数の格差が依然として存在しており、むし歯が多い地域では、フッ化物洗口の実施率を高く維持することで、むし歯の多い地域はさらなる減少効果が期待でき、地域格差の縮小を推進するためにも、幼保施設や学校でのフッ化物洗口の実施を継続する必要があります。

  • 本県のむし歯の将来予測

 本県に先んじてフッ化物洗口の実施率が高く達成できましたが、佐賀県と秋田県と同じ水準に達するには、今後3年程度を要するという結果が得られ、各市町及び幼保施設と学校に対して、今後もフッ化物洗口を継続し、フッ化物洗口実施率を高く維持する働きかけを継続することが必要であります。 

  • フッ化物洗口の実施によるCO(シーオー)への影響について

 本県でも早期にフッ化物洗口を全小学校に導入した佐世保市でCOとむし歯を検証したところ、低学年に比べて高学年ほどCOの比率が低い値を示したことから、他県の事例も踏まえ、フッ化物洗口の実施によるCOに対する有効性が示されました。

 
(3)委員会からの提言

委員会では、県内の子どもの歯の健康づくりを推進するための今後の取り組みを次のとおり提言しています。

  • 幼保施設や学校におけるフッ化物洗口の継続実施

 本県では、短期間にフッ化物洗口の導入を推進して小学校での実施率100%に到達したので、むし歯の改善にはさらに数年を要することが示唆されたため、今後も施設単位での集団フッ化物洗口を継続実施することが必要です。
 そのため、フッ化物洗口を活用し、むし歯0本に近づけるためにも、「むし歯のない子ども」の育成と「むし歯のない県」づくりを目指して、県、市町、歯科医師会等の継続した指導・助言が必要です。

  • フッ化物洗口の更なる効果検証のためのデータの蓄積

 フッ化物洗口の効果が有意なものになるためには、高い実施率で、長期間の実施が必要であることが認められました。
 今後も、正確なデータを収集し、解析し、効果を本委員会で定期的に確認していくことが必要であると考えます。

  • フッ化物洗口によるCO(シーオー)に対する効果の追跡調査

 フッ化物によるむし歯予防メカニズムの一つに初期段階のむし歯の進行抑制作用があり、本委員会ではフッ化物洗口によるCOに対する効果にも着目しました。
 今後は、本県におけるCOに関するデータも蓄積して分析していくことにより、フッ化物洗口のCOの維持またはCOから健全歯に戻ることによるむし歯の増加を抑制する効果も確認していくことが必要であると考えます。

  • フッ化物洗口未実施施設への情報提供と支援活動

 わが国では、フッ化物洗口の実施について、永久歯の生え始める前の4・5歳児を対象に開始することを「フッ化物洗口ガイドライン(H15.1.14 厚生労働省医政局長/厚生労働省健康局長 通知)」で推奨しています。その最大の理由は、永久歯に生えかわる時期が一番むし歯になるリスク(危険度)が高くなっていくためであります。
 そのため、フッ化物洗口に関わる関係者の理解と協力を得るためには、低年齢からのサポートが不可欠であり、今後も未実施施設において、フッ化物洗口が導入されるように丁寧な情報提供と支援が必要となります。

  • 中学校におけるフッ化物洗口の着実な導入

 他県に比べ高い県民のむし歯の罹患状況を改善するため、現在進行中の中学校におけるフッ化物洗口の実施率を向上させ定着し、生涯を通じた歯・口腔機能の基礎づくりのためにフッ化物洗口の継続が必要です。

(4)今後検討すべき事項

 委員会では、以下の4点について、今後検討すべき事項として提言しています。

  • フッ化物洗口の効果検証に関する質的な分析
  • フッ化物洗口を契機とした県民の歯と口の健康意識を向上させるための取り組み
  • 教育現場での負担を軽減するフッ化物洗口の効率的な手法の検討
  • 児童生徒に対する歯科口腔保健教育の実践

長崎県フッ化物洗口効果検証に係る報告書の公表について

 平成25年度から推進している本県のフッ化物洗口の効果について、「フッ化物洗口等効果検証委員会」で県内のフッ化物洗口の実施効果について検証し、その結果についてとりまとめましたので、報告書を公表します。

※報告書全体版は、下記からダウンロードしてください。

フッ化物洗口効果検証に係る報告書(令和2年3月)[PDFファイル/1MB]

このページの掲載元

  • 国保・健康増進課
  • 郵便番号 850-8570  
    長崎市尾上町3番1号
  • 電話番号 095-824-1111
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