Vol.214 中国 李康(リ コウ)

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中国の都市について

   最近、ある外国人ブロガー(ハンドルネームは「保保熊」)が中国で観光していた際、撮影したショート動画の中で、中国語と英語をミックスさせた「city不city?」(都会っぽいかどうか)というフレーズが中国のネット上でバズっています。動画の中で、この外国人ブロガーは、妹と独特な(外国語のような)抑揚のついた中国語でテンポのよいやり取りを展開しています。例えば、「上海はcity不city?」「めちゃくちゃcity!」

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「保保熊」が撮影したショット動画 出典:人民網日本語版

    独特な抑揚で、一度聞くと頭にこびりついてしまう「city不city?」は現在、中国で人々が先を争うように真似する流行語になっています。そして、その解釈が広がっていくにつれて、「city」には今や「都市化されている」やスタイリッシュ、斬新、さらには刺激的といったような意味まで表現するようになっています。

    「City」ブロガーが急速に人気を博したのは例外ではなく、今や中国のソーシャルメディアには多くの外国のインフルエンサーが現れています。その背景には、中国の72/144時間トランジットビザ免除政策があります。中国が去年11月にノルウェー国民に対して72時間/144時間のビザなしトランジット政策を実施して以来、この政策の適用範囲はこれまで54カ国に拡大されました(日本も対象国)。

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故宮の入口に集まっている外国人の観光客  出典:中国中央テレビ

    中国移民管理局が発表した統計による[i]と、今年第1四半期に中国に来る外国人の数は前年同期比で3倍の増加になりました。注目すべきなのは、今年の最初の3か月間に約198万人の外国人がビザなしで中国に入国し、前年比で266%急増したことです。観光地の選択については、「初心者レベル」は北京、上海、広州、「上級者レベル」は成都、西安、重慶、「ハードモード」は新疆ウイグル自治区、青海省などです。中国に旅行する外国人の熱意はますます高まっています。

   今回、この「city不city?」をきっかけに、皆さんに中国の都市について紹介し、中国に旅行される時のご参考になればと思います。

一、中国の都市人口

 中国の2024年に分かる都市人口(香港、マカオと台湾を除く)は897,578,430人です。総人口の約64%を占めています。1960年に約1億800万人でしたが、現在の8.9億人と比べると、8.3倍もの差があることが明らかになります。因みに、中国の都市人口は世界一ですが、日本の全人口に対する都市人口の割合は約92%であり、世界一になります[ii]

二、中国の都市

 中国にはいくつの都市があるのでしょう。中国の統計年鑑[iii]によると、2021年年末時点で、中国(香港、マカオと台湾を除く)には総計691都市があるということになります。市街地の常住人口が1000万人以上の場合は「超特大都市」、500万から1000万人の場合は「特大都市」、300万から500万人の場合は「一級大都市」、100万から300万人の場合は「二級大都市」、100万人以下の場合は「中小都市」いうふうに、691都市を五種類に分けられています。市街地について、詳しい説明は省きますが、東京や大阪などで言うところの「区部」の人口の概念に近いものと思ってもらえばいいかもしれません。

表 中国における都市の分類

都市の種類

市街地の常住人口

都市数

代表都市

超特大都市

1000万人以上

北京、上海等

特大都市

500万-1000万人

14

武漢、西安等

一級大都市

300万-500万人

14

南寧、石家庄等

二級大都市

100万-300万人

70

蘭州、海口等

中小都市

100万人以下

500+

南陽、内江等

 以上のように、100万人以上の都市は全てを「大都市」と呼ぶことができます。中国における大都市の数は105都市で、地域別で見ると、大都市が最も多いのは東部で54都市であり、中部エリアと西部エリアがそれぞれ21都市、東北エリアが10都市となっています。大都市の分布から、中国の人口、経済の中心は東部にあることが明らかになりました。

三、中国の超特大都市

 大都市の中から、中国の代表的な都市とも言える「超特大都市」を紹介します。それぞれは北京、上海、広州、深セン、重慶、天津、成都です。どの都市も急速な経済発展を遂げており、外国からの投資が集中しています。金融、貿易、製造業、ハイテク産業など、多岐にわたる分野で活躍しています。北京は中国の政治、文化、国際交流と科学技術イノベーションの中心地であり、多くの政府機関と大使館が集まっており、国際的なイベントや会議も頻繁に開催されているところです。

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北京にある中国中央放送テレビ局 出典:https://ishirabe.com

 天津市は中国北部、北京の東にある港湾都市であり、名物は甘栗と狗不理包子(コウプリパオズ)です。

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天津の目(観覧車) 出典:https://touch.go.qunar.com

 上海は中国の経済中心であり、世界有数の金融都市でもあります。多くの国際的な企業の本社が集まっており、多くの外国人が生活しているところです。

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上海にある東方テレビタワー 出典:https://touch.go.qunar.com

 広州は中国南部の経済、文化、交通の中心地であり、特に貿易が盛んでおり、多様な文化と美食の街としても知られています。

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広州タワー 出典:https://touch.go.qunar.com

 深センは中国の改革開放以来急速に発展してきて、イノベーションのハブ、ハイテク産業とイノベーションの中心地と見られています。多くのスタートアップ企業とテクノロジー企業が集まっており、特にファーウェイやテンセントなどの大企業が本社を構えているところです。

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深セン市民センター 出典:https://www.howtravel.com/

 成都は西南の経済拠点であり、中国西南地域の経済、文化、交通の中心地でもあります。ハイテク産業と電子情報産業が発達しており、パンダ基地、寛窄巷子、青城山などの観光スポットを有するところです。

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成都市の金融城にあるツインタ 出典:https://www.zcool.com.cn

 重慶は中国の西南部の重要な都市であり、「山城」と「火鍋の都」として知られています。中国の四つの直轄市の一つです。

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重慶にある洪崖洞(レストラン、土産屋などが入った商業施設) 出典:https://699pic.com

四、中国の都市圏

 都市圏とは一般に、中心となる都市および、その影響を受ける地域(周辺地域、郊外)をひとまとめにした地域の集合体であり、行政区分を越えた広域的な社会・経済的な繋がりを持った地域区分のことを指します。中国の第十四期の五年計画によると、国家レベルの都市圏は19個ある決定して、全国面積の25%、常住人口の83%とGDPの88%を占めております。その中に、世界レベルの都市圏を作るという目標を掲げるのは北京、天津を中心となる「京津冀」、上海を中心となる「長三角」と広州、深セン、香港を中心となる「珠三角」という三つの都市圏になります。地域の経済、都市化レベルと一体化レベルから見て、先頭に立つのは上海を中心となる「長三角都市圏」です。都市圏の発展に伴い、地域内の中小都市の発展に良いチャンスを与えるだけではなく、超特大都市の機能移転を加速し、資源の再分配を促進することができます。都市圏の発展は都市化の質につながると思いますので、都市化率すでに64%を超えた中国にとって、都市圏の建設はこれからの課題になるのでしょう。

[i] 出典:https://www.nia.gov.cn

[ii] 筆者が世界銀行のデータによってまとめたもの

[iii] 出典:https://www.stats.gov.cn/

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