人口減少による地域活力の低下など、将来への不安や憂いを払拭し、本県への誇りや未来への期待感を持ち、新しい長崎県を築いていきたいとの思いから本ビジョンを策定します。
本ビジョンは、県内外の多方面から選ばれる「新しい長崎県」の実現に向けて、様々な立場の皆様が思いを一つにして、有機的に連携しながら取組を進めるための旗印とするため、今後重点的に注力する分野の概ね10年後のありたい姿とその実現に向けた施策の方向性をわかりやすくお示しするものです。
人口減少や少子高齢化に伴う労働力人口の減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響等を受けて、新たな社会経済システムへの転換が進められつつあります。
また、グローバル化やデジタル化、カーボンニュートラル実現へ向けた社会・経済のグリーン化などの影響により、人々の意識や行動が多様化するとともに、生活の質や精神的な豊かさを重視する傾向が高まっています。
本県は、離島・半島地域を多く有し、人口減少や少子高齢化が全国よりも早く進んでいます。
こうしたことから、労働力不足や地域経済の縮小、公共交通・地域コミュニティの維持・確保の問題など様々な影響が全国に先駆けて顕在化することが懸念されている「課題先進県」と言えます。しかし、見方を変えれば、遠からず同じような課題に直面するであろう他の地域に先駆けて、課題解決に向けた最先端技術の社会実装などを進めていくチャンスがあると言えます。
本県は、変化に富んだ美しく豊かな自然、海外の文物や文化を受け入れながら多くの人と交流し栄えてきた歴史と個性豊かな文化、日本の本土最西端に位置しアジアに最も近い地理的優位性など、多くのポテンシャルを有しています。
また、西九州新幹線開業に伴う県内各地の活性化、スタジアムシティプロジェクトなど「まち」の佇まいが大きく変わるプロジェクトが進展しています。
加えて、大手企業の研究開発拠点の立地が進むとともに、「半導体関連産業」「航空機関連産業」「海洋エネルギー関連産業」といった成長分野における新たな動きなど、産業構造に大きな変化が生じており、まさに100年に一度の変革の時期を迎えています。
ビジョンのコンセプト
長崎県が県民の皆様にとって誇りや未来への期待感を持たれ、国内のみならず世界に存在感を示している姿を「未来大国」として表現しています。
人口減少・少子高齢化や過疎化が進展する中、どこか長崎県がしぼんでいくような漠然とした不安や先細り感が広がっているように感じていました。
目覚ましい速さで進む技術革新やグローバル化、多様な社会課題の中で、激化する地域間競争を勝ち抜いていく必要があります。
長崎県は決して大きくありません。
しかし、世界に自慢できるたくさんの宝物があふれています。
みんなが「こうなったらいいな」と思う世界が「未来大国」です。
みんなで一緒に大きな夢を描き、実現していきましょう。
将来を担うこどもたちの能力と可能性を高め、社会での多様な活躍につなげていくことが重要です。
そのため、こどもたちへの投資を未来への投資と捉えたうえで、「こども」施策を基軸に取組を進めます。
こどもの育ちには、とりわけ、それを支える全ての世代の方々の心身の健康と生活に欠かせないおいしい「食」、多様な人や地域との「交流」、地域の活力を生み出す「イノベーション」、そして、それらが相互に絡み合い連動することが大切になってきます。
未来大国の実現に向けて、県においては、部局ごとの施策に加え、横断的な取組を一層強めていきます。さらに、県民の皆様をはじめ様々な立場の方々に共感いただきながら、有機的に連携して取り組むことで、各分野の様々な施策を相互に連関させ、相乗効果を生み出していきます。
未来大国の実現に向けて重点的に取り組む主な分野
こども
長崎県の明るい未来を築いていくために、こどもたちへの投資を未来への投資と捉えたうえで、本県の将来を担うこどもたちが安全・安心に健やかに成長し、その能力と可能性を高めることを積極的に支援して、社会での多様な活躍につなげていきます。
交流
海外との古くからの交流によって培われた異国情緒あふれる街並み、有形・無形の文化や多くの人を魅了する美しい自然、個性あふれる離島など、県内外の人を惹きつける多様な資源を有するポテンシャルを活かし、交流人口拡大・地域活性化につなげていきます。
イノベーション
カーボンニュートラル実現に向けて、海洋エネルギー関連産業や半導体関連産業といった新しい時代に対応した産業を振興するとともに、未来を創る新たなサービスの創出や先端技術の社会実装を進め、離島や半島を多く有する本県の地域の活力へつなげていきます。
食
地形や気候等の特性を活かした農産物や、離島・半島地域をはじめ豊かな海で育まれた水産物などの魅力発信により需要を創出し、美味しくて多様な「食材」を国内外に届けるとともに、料理としても誇れる「食」を県内各地で提供し人を呼び込み、食した人が笑顔になる「美味しい!長崎」の実現につなげていきます。
主な分野のありたい姿とその実現に向けた施策の方向性
こども
こどもが主役、みんなで育てよう
ありたい姿の実現に向けた施策の方向性
- 働き方改革等による「共育て」時間の確保と推進
- 職住近接、育住近接などにつながる快適な子育て生活圏の整備
- こどもまんなか社会を目指し、子育てを応援する機運の醸成
- こども食堂など、こどもが快適に過ごせ、こどもの安心を守るこども場所の充実
- こどもを笑顔にするための仲間づくりに向けた民間企業・団体等との連携
- 遠隔教育センターの開設による小規模校等への多様な学びの提供
- メタバースなどのデジタル技術とリアルを組み合わせた多様な学びの場の創出や居場所づくりの充実
交流
思いがけない出会いが見つかるびっくり箱
ありたい姿の実現に向けた施策の方向性
- 付加価値の高い魅力あるインバウンド向けの観光コンテンツづくりやPR、外国人受入体制整備の推進
- 欧米豪をはじめとする世界各地からのクルーズや国際航空路線の誘致強化
- 諸外国との歴史的つながりや人的ネットワークなどの本県の強みを活かして、海外との新たな連携関係の構築を促進
- 地元住民との交流や魅力的な体験メニューの造成等、ノマドワーカーを惹きつけるコンテンツの充実
- コワーキング施設やネットワークインフラなどの充実及びコミュニティマネージャーの育成等、受入環境整備の推進
- 本県が持つ様々な魅力あるコンテンツを磨き上げ、マニアの聖地化、本場化を推進
イノベーション
挑戦と失敗の先へ、見たことのない暮らしをつくろう
ありたい姿の実現に向けた施策の方向性
- スタートアップの交流等を通じ、新たな人脈の形成・意識改革につなげ、新しいものが生まれる機運を醸成
- 県内における上場を目指した産学官金の連携による支援体制の構築
- 未来を担う人材のためのアントレプレナーシップ教育の推進
- 陸海空の次世代モビリティやドローンの社会実装の促進
- スマート農林水産業の推進
- 魅力ある再生可能エネルギーの創出・ブランド化の推進
- サステナブルな県民のくらし・企業活動の推進
- カーボンニュートラルの実現に向けた専門人材育成の促進
食
THE ワールドクラス、世界が惚れこむ食体験
ありたい姿の実現に向けた施策の方向性
- 県内食材の輸出拡大に向けたオール長崎での食材の魅力発信、需要の創出
- 食材と共に生産者のこだわりを届けるバリューチェーンづくりの推進
- 新鮮で豊かな食材の安定供給、輸出先国の規制や食習慣等に対応した産地の育成・体制構築
- とれた鮮度をそのまま消費者に届ける技術の開発と供給網の構築
- 県内食材の特徴・特色を感じられるグルメ・売場・食事処の創出
- 快適で儲かる農林水産業の実現に向けた、次世代に継承できる環境整備
- 持続可能な加工・流通システム、付加価値の向上や販路拡大につながる生産・流通・販売の連携強化
- 食品ロスの削減や環境に配慮した農林水産物に対する理解促進
施策を貫く視点
ありたい姿の実現には、グローバル化やデジタル化など、物事の変化が激しい時代であることを踏まえ、施策横断的に取り組む必要があります。このため、全ての施策を貫く視点として以下の4つを掲げて取り組むとともに、施策相互の連関を強め、相乗効果を創出します。
本県の、離島・半島が多い地理的特性や、人口減少・少子高齢化に伴う様々な地域課題に応じたデジタル化・DXの推進をはじめ、最先端技術を効果的に活用し、県内外からイノベーションを生む多様な人材・知・産業の集積を促し、稼ぐ地域を創りだすとともに、人手不足の解消や地理的・時間的な条件に関わらずあらゆる地域で同じような働き方を可能とする環境を整えます。
また、医療、福祉、子育て支援等の県民の生活に密着した分野のデジタル化を進め、個人のニーズに応じた最適なサービスが提供される豊かな県民の暮らしを目指します。教育分野においても、デジタル技術について適切に理解し自ら活用できる力の向上を図るとともに、誰一人取り残されず、一人ひとり個別最適化され創造性を育める教育ICT環境を実現し、次世代の学校・教育現場の確立を目指します。
行政においては、デジタル技術の活用により行政運営を効率化し、限られた経営資源を行政サービス提供に振り向けるとともに、デジタルマーケティングの手法を最大限に活用し、効果を検証できる質の高い行政サービスの提供を実現します。
長崎県版デジタル社会実現に向け、デジタル化を加速させ、県民生活の利便性向上と産業の活性化、行政運営の効率化を推進するため、“長崎県デジタルの変”に取り組みます。
- 行政手続オンライン化の推進
- マイナンバーカードの普及・活用促進
- オープンデータの利活用促進
- デジタルマーケティングの推進
- AI等先端技術を活用した各産業分野における新サービス創出の促進
- 次世代モビリティやドローンの社会実装の促進
- 教育分野におけるデジタル活用とデジタルリテラシー向上
- 誰もがデジタルの恩恵を受けられる環境整備の推進
- テレワーク等による多様で柔軟な働き方の推進
- AI・RPA等の新たな技術を活用した業務効率化の推進
- コミュニケーションツールを活用した情報共有等による向上の推進
- 行政におけるデジタル人材の育成
国内のみならず世界に存在感を示す選ばれる「新しい長崎県」の実現に向け、分野横断的視点・マーケティングに基づく戦略的な情報発信に取り組むとともに、自然・歴史・文化・環境などの本県の多様な魅力へ光を当てながら、本県の総体的なイメージ向上につながるブランディングを図り、県民の皆様の自信と誇りにつなげます。
情報発信においては、推進組織として全庁的な情報発信体制を整備し、情報収集や情報発信のための素材づくりを行います。そのうえで、県の持つデジタル・アナログ双方の広報媒体を含め、最適な広報媒体を選択し発信を行うことで、民間や関係者の皆様と連携して、伝えるべき方々に、伝えるべき情報を分かりやすくかつ確実に届け、県内外の皆様方の行動変容につなげます。
ブランディングにおいては、これまで蓄積してきた本県の魅力や新たに創出する魅力に光を当てながら、情報発信と連動し、民間や関係者の皆様と連携して、他県と差別化された選ばれる「新しい長崎県」の要素を訴求することにより、新しい「長崎ブランド」を構築していきます。
未来を担うこどもを社会全体で育むとともに、あらゆる分野で活躍できる教育環境の充実に取り組みます。
また、一人ひとりの能力と可能性を最大限に高め、社会情勢の変化に的確に対応しながら、柔軟な発想で地域課題を解決することに加え、新しい価値の創造ができる人材の確保と育成を図り、地域活力の維持・活性化につなげていきます。
秩序ある社会の中で、性別や年齢、国籍、障害の有無などに関わらず、一人ひとりが持つ多様な価値観や個性が尊重され、誰もが自分らしく暮らすことができる環境の充実に取り組みます。
また、多様な人材の持つ能力や特性などが発揮され、誰もが自分の目標に向けた挑戦や、安心して活躍ができる社会の仕組みを構築していきます。
ビジョンの実現に向けて
県民の皆様が誇りを持てる長崎県を実現するために、分野を超えた部局横断・融合的な取組を強力に進め、事業効果の最大化を図ります。また、市町、民間、大学等との連携を強化するとともに、県民の皆様との対話を通じて、新たな発想や問題意識を施策構築に取り入れ、ビジョンの実現に取り組んでいきます。
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行の経済システムから、資源の効率的・循環的利用を図りつつ環境に配慮した経済活動を重視する循環型経済システムへの転換が図られている中、各国で取り組まれている「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進や、ESG投資を踏まえた新たなサービスや付加価値の提供が求められています。
そのため、本県においても、SDGsの理念などを踏まえて取組を推進することで、安心して暮らせる持続可能なまちづくりと地域活性化につなげていきます。
県政運営の基本的な方向性を示すものとして、長崎県総合計画チェンジ&チャレンジ2025を策定しています。同計画は、県政の概ね全分野を網羅し、産業・環境・福祉などの各分野の計画や事業立案の基本となるものです。
一方ビジョンは、選ばれる「新しい長崎県」の実現に向けて、今後注力していきたい分野に特化して、概ね10年後のありたい姿とその実現に向けた施策の方向性をわかりやすくお示しし、様々な立場の皆様が思いを一つにして、有機的に連携しながら取組を進めるための旗印とするものです。
なお、ビジョンに掲げるありたい姿の実現に向けて、現総合計画の方向性に沿って進めるものについては、さらに力強く推進し、総合計画に反映すべきものについては、総合計画の一部見直しに盛り込んでおります。
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ウェルビーイングに特化したメディア「Welulu(https://wellulu.com/)」にて長崎県の取り組みについてインタビューを受けました。
▼記事はこちらから
https://wellulu.com/active-participation/14056/
新しい長崎県づくり懇話会
ビジョン等の検討にあたり、有識者による懇話会を設置し、ご意見を伺っています。
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- 政策企画課
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