PRTRとは
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出移動登録)とは、有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する仕組みです。
対象としてリストアップされた化学物質を製造したり使用したりしている事業者は、環境中に排出した量と、廃棄物として処理するために事業所の外へ移動させた量とを自ら把握し、行政機関に年に1回届け出ます。
行政機関は、そのデータを整理・集計し、また、家庭や農地、自動車などから排出されている対象化学物質の量を推計して、2つのデータを併せて公表します。
PRTRによって、毎年どんな化学物質が、どのような発生源から、どれだけ排出されているかを知ることができるようになります。
諸外国でも導入が進んでおり、日本では1999(平成11)年、「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)により制度化されました。
なぜPRTR制度が必要なのか
個々の化学物質に対して行ってきた従来の化学物質規制と異なり、たくさんの化学物質が有する環境リスクを全体として低減させていくためには、行政、事業者、市民・NGO の各主体がそれぞれの立場から、また協力しあって、環境リスクを持つ化学物質の排出削減に取り組んでいく必要があります。
このためには、どのような物質が、どこから出てどこへ行っているのか、それはどのくらいの量なのか、といった基本的な情報を全ての関係者で共有することが必要です。また、それぞれの活動・対策の効果を確かめるためには、化学物質の排出等の状況を定期的に追跡・評価する必要があります。これらを実現させるための新しい化学物質管理手法として、PRTRが導入されました。
制度の仕組み
PRTRの仕組みは一般に、
- 対象となる化学物質ごとに、各排出源から、各環境媒体(大気、水、土壌)に排出され、または廃棄物として移動する量を把握・収集する
- 把握した情報を目録やデータベースの形に整理・集計する
- できあがった化学物質の排出・移動量の目録やデータベースを公表して、広く一般の利用に役立てる
というものです。
上図(PRTRの基本的な構造)の解説
- 推計・報告では、事業者から行政への報告が中心となり、通常は化学物質を取り扱う一定規模以上の事業者(このような排出源を「点源」と呼びます)が報告することになります。 しかし、それ以外にも化学物質の発生源があるため、行政が家庭や自動車などの「非点源」のデータを推計することも必要になります。
- 公表については、米国、カナダ、英国では事業所ごとの個別データが公表されており、オランダではPRTRの枠組みでは集計・加工された結果が公表されています。 大切なことは、PRTRは一つの定まった評価や方針を示すものではなく、利用する人によって様々な見方、使い方ができるような、基本的なデータを収集し公表する仕組みであるということです。 PRTRは単なる化学物質の排出・移動量の目録ですが、これがきちんと集計され公表されることによって、事業者自らの排出量の適正な管理に役立つとともに市民と事業者、行政との対話の共通基盤ともなります。こうしたことを通じ、化学物質の環境リスクの削減等が図られるものと期待されます。
PRTRをすると何がわかるのか?
PRTR制度では、事業者が国へ報告した対象化学物質の年間排出量・移動量の集計値と、家庭、農業、自動車などからの年間排出量の推計値が公表され、次のようなことがわかります。
- 全国の事業者が大気、水、土壌へ排出している化学物質とその量の集計
- 全国の事業者が廃棄物として処理するために事業所の外へ移動している化学物質とその量の推計
- 全国の家庭、農業、自動車などから排出される化学物質とその量の推計値
- 化学物質別の排出量・移動量
- 業種別の排出量・移動量
- 都道府県別の排出量・移動量 など
個別事業所の排出量・移動量は公表されませんが、国へ情報開示請求をすると個別事業所のデータは誰でも入手できます。
なお、PRTR制度では環境中に排出された化学物質の名前や年間排出量を把握することはできますが、排出量だけでは人の健康や生態系にどのような影響を及ぼすかについては、PRTRのデータに加え、化学物質の有害性の程度やその物質が主に環境中のどこにどれだけ存在しているのか、分解・蓄積しやすいかどうかといったさまざまな要因とあわせて考えることが必要です。
PRTR法
1999(平成1)年7月13日に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法)に基づき、対象化学物質や届出をしなければならない事業者などが決められています。
PRTR法の対象化学物質
対象となる化学物質は、人の健康や生態系に有害なおそれがあるなどの性状を有するものです。PRTR法の化学物質は、その物質が環境中にどれくらい存在しているかによって、「第一種指定化学物質」と「第二種指定化学物質」の2つに分けられています。環境中に多く存在しているほうが、「第一種指定化学物質」で515物質あります。事業者が排出量を届け出たり国が事業所以外からの排出量の推計を行うのは、この「第一種指定化学物質」です。また、この中でも人に対する発がん性があると評価されたもので特に注意を要する物質は「特定第一種指定化学物質」と呼ばれ、23種類が指定されています。
何万種類もある化学物質のうちどの物質をPRTRの対象とするかは、有害性についての国際的な評価や生産量などを踏まえ、専門家の意見を聴いて決められています。
PRTR法の対象事業者
業種、従業者数、対象化学物質の年間取扱量という3つの条件があり、それぞれ一定の基準に合致する事業者が、環境中への排出量及び廃棄物としての移動量についての届出を義務付けられます。具体的には、製造業や鉱業、電気業、ガス業などをはじめとする24業種が対象となります。
PRTRの情報
事業者の届出は都道府県を経由して国に届けられます。国は全国から集まってくるデータとともに、事業所以外の発生源(家庭、農地、自動車など)からの排出量を集計して、年に1回公表します。
また、事業所のデータはコンピュータ処理が可能な形に加工され、国から都道府県に提供されることになっており、各都道府県でも地域のニーズに応じてデータを集計し公表することができます。
国民は、国による集計結果の公表とは別に、個別事業所のデータを国に開示請求し、入手することができます。
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