本日、ここに、平成27年6月定例県議会を招集いたしましたところ、議員の皆様には、ご健勝にてご出席を賜り、厚く御礼を申し上げます。
説明に入ります前に、去る5月29日に発生した鹿児島県口永良部島新岳の噴火では、いまだに住民の皆様が全島避難を余儀なくされる状況が続いております。
被災されました方々に衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い終息と被災地の復興・復旧をお祈りいたします。
また、去る6月1日、中国湖北省荊州市付近の長江で、中国客船が転覆し、多くの方々がお亡くなりになる大変痛ましい事故が発生しました。
本県と深い友好交流の絆で結ばれている中国において、多数の尊い命が失われたことは、本県にとっても悲しみに耐えないことであり、県民を代表して、亡くなられた方々並びにご遺族の皆様に心から哀悼の意を表します。
それでは、開会に当たり、当面する諸課題について所信を申し述べますとともに、前定例会以降、今日までの県政の重要事項について、ご報告を申し上げたいと存じます。
「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」については、去る5月4日、名称を「明治日本の産業革命遺産 製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」と変更した上で、国際記念物遺跡会議(イコモス)から世界文化遺産にふさわしいとして「記載」勧告がなされました。
今後、6月28日からドイツで開催される世界遺産委員会において登録の可否が審議されますが、私も、構成資産を一番多く有する自治体の知事として参加し、政府代表団とともに、資産価値の説明を行うなど、登録に向けて努力してまいりたいと考えております。
一方、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」については、イコモスによる現地調査が本年夏から秋頃に予定されております。
このため、県としては、専門家に対して資産の価値や保存管理について丁寧に説明を行い、より理解を深めていただけるよう、国や関係自治体とも調整しながら、万全の準備を進めております。
また、世界遺産登録を見据えた受入体制については、庁内に連携会議を設置し、2次交通アクセスや観光客の誘致などの諸課題の解決に向けた対策を加速させるとともに、引き続き、関係市町とも連携を図りながら、受入環境の整備に努めてまいります。
今後とも、「産業革命遺産」と「長崎の教会群」の2つの世界遺産登録実現へ向けて、県議会並びに関係者の皆様のご支援とご協力を賜りながら、全力を傾注してまいります。
去る4月24日、文化財を活用した地域活性化策として新たに創設された「日本遺産」に、対馬市、壱岐市、五島市、新上五島町で構成する「国境の島 壱岐・対馬 〜古代からの架け橋〜」が選ばれました。
本県の島々が、古くから日本本土と大陸を結ぶ海上交通の要衝として、国境の離島ならではの融和と衝突を繰り返しながらも、連綿と大陸との交流を続けているストーリーが、「日本遺産」にふさわしいと評価されたことは大変喜ばしいことであり、この間ご支援いただきました、本県選出国会議員の皆様をはじめ、関係者の皆様方に対し、心からお礼を申し上げます。
国は、認定された日本遺産に関する情報発信や人材育成、普及啓発等に対する支援を行うとともに、さらに認定を追加していくことを表明しております。
県としては、今後、県や市町、関係団体で構成する協議会で検討を行い、国の制度を積極的に活用しながら、「国境の島 壱岐・対馬」が有する魅力に溢れた歴史文化の国内外への効果的な情報発信や地域の観光PRへの活用等により、地域の活性化や交流人口の拡大につなげるとともに、次なる「日本遺産」認定に向けた検討を進めてまいります。
地方創生については、国と地方が一体的に取り組むこととされ、地方においては、国の「長期ビジョン」や「総合戦略」を勘案しつつ、人口の現状と将来の展望を提示する「地方人口ビジョン」並びに、今後5ヵ年の目標や施策の基本的方向などをまとめた「地方版総合戦略」の策定が求められております。
県では、本年10月の策定を目指し、市町と連携を図りながら、本県ならではの地域性や独自性のある総合戦略となるよう、策定作業を進め、現在、人口ビジョンの素案並びに総合戦略の骨子案を取りまとめたところであります。
人口ビジョンの素案では、全国を上回る人口減少が進む本県の現状に対し、本県の強みを活かした産業力の強化や地域ニーズに対応した「ひと」や「しごと」の好循環の創出などによる若年層を中心とした県外転出の抑制並びに、結婚・出産・子育て支援の充実や雇用環境の整備による出生率の改善など、将来に向けた対策の方向性についてお示ししております。
そして、これらの対策を前提として、本県の将来人口の推計について、合計特殊出生率など一定の条件のもとに、6つのケースを試算したところであります。
一方、総合戦略の骨子案では、人口ビジョンを踏まえ、「しごとを創り、育てる」、「ひとを創り、活かす」、「まちを創り、支えあう」の基本目標の実現に向け、本県の持つ強みを最大限活用しながら、海洋エネルギーやICT関連等新産業の創出、世界遺産と日本遺産の活用による交流拡大、移住戦略の更なる強化、結婚・出産・子育ての一貫した支援などの施策により、地方創生を推進していくこととしております。
今後、県議会においてご議論いただくとともに、県民の皆様や関係団体、外部有識者等で構成する懇話会などのご意見をお伺いしながら、人口ビジョン並びに総合戦略の策定に反映させてまいりたいと考えております。
また、国においては、地方創生先行型交付金について、産業人材の育成・確保や観光資源開発など6分野において、他の自治体のモデルとなる先駆性を有する事業に対し、上乗せ交付を行うこととしており、県では、その事業群の構築に向け、検討を重ねているところであります。
このような国の地方創生の動きを県政発展の好機と捉え、今後とも、国の政策の積極的な活用を図りながら、人口減少や県民所得の低迷、地域活力の低下といった本県の構造的課題の克服に向けて、本県ならではの力強い政策群を構築してまいりたいと考えております。
昨年度から策定作業を進めている新たな総合計画については、人口減少や少子高齢化の急速な進行、アジアの経済成長などの社会経済情勢を踏まえながら、概ね10年先の本県の姿を見据え、戦略的に取り組む政策を積極的に盛り込んでまいりたいと考えており、計画素案骨子を作成したところであります。
素案骨子においては、「人、産業、地域が輝く たくましい長崎県づくり」を基本理念とし、「交流でにぎわう長崎県」など、5つの将来像を掲げ、その実現に向けた新たな政策展開として、10の基本戦略と43の施策を盛り込んでおります。
また、次期計画では、本県の強みを活かした政策横断的なプロジェクトとして、従来の取組に加え、世界文化遺産や新幹線、魅力ある「しごと」「ひと」づくりによる定住促進に係る取組も検討するとともに、地域の特性を活かした個性的な地域づくりを進め、地域活性化を図るための地域別計画を盛り込むことも検討しているところであります。
今後、県議会のご意見を十分にお聴きしながら、さらに検討を重ね、県民の皆様のご意見も踏まえつつ、今年度中の計画策定を目指してまいります。
本県の離島の多くは国境離島として、他の離島よりも不利な経済条件下にあり、このまま人口減少が続けば、国境監視や国土保全等の重要な国家的役割を果たせなくなることが懸念されております。
このような状況のもと、現在、本県選出国会議員の皆様のご尽力により、離島航路・航空路運賃の低廉化、雇用の場の確保、国境域の漁業活動に対する支援などの振興策を盛り込んだ国境離島新法の自民党素案が作成され、議員立法としての法案提出に向け、調整が進められております。
こうした中、多くの離島住民の皆様の出席のもと、対馬市を皮切りに、壱岐市、新上五島町、五島市及び小値賀町において、国境離島新法の制定に向けた総決起大会が開催され、新法制定に向けて各地域から後押しをしていくことが決議されたところであります。
今後、県としても、関係の皆様方のお力により、法案が提出され、早期成立につながるよう、県議会並びに関係市町とともに全力で支えてまいりたいと考えております。
石木ダムについては、川棚川の抜本的な治水対策や佐世保市の慢性的な水不足の解消のために必要不可欠な事業であり、現在、土地収用法に基づき、必要な手続きを進めております。
昨年11月に裁決申請に向けた手続きを開始したダム本体の建設に必要な用地については、準備が整い次第、裁決を申請したいと考えております。
また、付替県道工事については、現場入口において、反対者による立ち塞がり等の行為が行われておりますが、今月12日に、工事区域において、樹木等の伐採作業を開始するなど、本格着工に向けた努力を続けているところであります。
今後とも、地域の治水や利水のため、佐世保市及び川棚町と一体となって、事業の推進に向け全力を尽くしてまいります。
カジノを含む統合型リゾート(IR)については、長崎県・佐世保市IR推進協議会に設けた有識者会議において、IRの方向性について検討を重ね、昨年度末に基本構想の骨子案をとりまとめたところであります。
このような中、IRの整備の推進に関する法案については、昨年の衆議院解散に伴い、一旦、廃案となりましたが、本年4月、カジノ施設の利用による悪影響を防止する観点から日本人の入場に関して必要な措置を講じる旨の規定を盛り込んだ法案が再提出されました。
このため、私は、去る5月11日から12日にかけて、佐世保市長及び佐世保商工会議所会頭とともに、首相官邸、自由民主党、公明党、IR議連及び本県選出国会議員の皆様を訪問し、関係法案の早期整備や地方創生につながる地方へのIR導入等について要望してまいりました。
今後とも、法案の動向を踏まえつつ、地域資源を活かした魅力溢れる基本構想の策定や、本県への誘致にかかる国への働きかけ、県内における合意形成などに取り組み、佐世保市や経済界と連携しながら、本県へのIR導入を目指してまいります。
去る3月28日、程永華(ていえいか)中国駐日本国特命全権大使のご推薦を受け、中国の海南省で開催されたボアオ・アジアフォーラムに、地方自治体から初めて参加してまいりました。
このことは、本県がこれまで中国との交流促進に積極的に取り組んできた実績が、高く評価されたものと大変光栄に存じております。
また、本年は、長崎県と中国との友好交流の懸け橋として重要な役割を果たしてきた中国駐長崎総領事館の開設30周年という節目の年であります。
県ではこれを記念し、去る6月2日、長崎市内において、程永華(ていえいか)中国駐日本国特命全権大使をお招きし、ご講演いただくとともに、歴代総領事にもご臨席を賜り、祝賀会を開催いたしました。
その際、私は、これまでの交流促進のためのご尽力に対する感謝とお祝いを申し上げましたが、改めて、本県と中国との交流の歴史において中国駐長崎総領事館が果たしてきた役割の大きさを認識したところであります。
今後とも、中国駐長崎総領事館のご支援をいただきながら、長年にわたって築かれてきた本県と中国との友好親善の絆を一層深め、さらなる関係強化を図ってまいります。
長崎県病院企業団の構成団体に本年4月から壱岐市が加入し、旧壱岐市民病院を「長崎県壱岐病院」として開院するとともに、5月17日には、対馬いづはら病院と中対馬病院を再編統合した新病院「長崎県対馬病院」が開院いたしました。
これらにより、特に厳しい環境におかれている離島の全ての二次医療圏において、地域の中核病院を中心とする医療提供体制の構築が図られたところであります。
こうした中、本土も含めた地域の医療体制のあり方については、本年度から来年度にかけて、国のガイドラインを踏まえ、二次医療圏ごとに必要な病床機能や医療従事者の確保策など、75歳以上の高齢者数がピークを迎える2025年に目指すべき医療提供体制等を示す「地域医療構想」を策定することとしております。
また、地域医療介護総合確保基金を活用し、県内に不足する児童精神科専門医師の養成、新卒看護職員の県内就業促進並びに医療的ケアが必要な在宅障害児等への支援など、医療従事者の確保や在宅医療の推進を図る事業を積極的に展開してまいります。
今後とも、高齢化の進展に対応する医療提供体制の見直しや、医療と介護の連携、市町との一層の連携を進め、地域医療の確保に取り組んでまいります。
本県の景気は、「一部に弱めの動きが残るものの、全体としては緩やかな回復基調を続けている。」とされ、本年4月の有効求人倍率は0.96倍となり、3か月連続で0.9倍を上回る水準で推移するなど、緩やかな改善が続いております。
企業誘致については、神奈川県に本社を置く株式会社バンク・ビジネスファクトリーと、去る4月16日、立地協定を締結いたしました。同社は、金融機関等からの事務受託業務を行う企業であり、6月1日から長崎市内に事業所を開設し、3年間で30名の雇用が予定されております。
また、6月15日には、大阪府に本社を置く双葉産業株式会社の本県への立地が決定しました。同社は、自動車内装品の製造を行う企業で、佐世保市のウエストテクノ佐世保に裁断及び縫製を行う工場を建設し、平成28年3月からの操業並びに正社員150名の雇用を予定しております。
さらに、株式会社カネミツが長崎市内に建設しておりましたカネミツリサーチセンターの竣工式が、5月22日に行われました。同センターでは金属塑性加工品等の研究開発を行い、新たに22名の雇用が計画されております。
そして、5月25日には、事務受託大手である株式会社トランスコスモスが長崎市内に開設したBPOセンター長崎の開所式が行われました。同センターでは、3年間で正社員を含む400名体制により、事務代行全般に関する業務を行う予定であります。
県としては、本年度から産業振興財団へ民間企業等経験者を配置するなど誘致体制の強化を図ったところであり、今後とも、市町と連携しながら、企業誘致の推進に努めてまいります。
県では、西九州自動車道や島原道路、西彼杵道路など、地域間の交流促進や産業の振興のため、規格の高い道路の整備を重点的に進めているところであります。
こうした中、西九州自動車道については、去る3月14日、伊万里松浦道路において、県境を跨ぐ山代久原ICから今福IC間が開通し、交通量も増加していることから、今後、県境を越えた交流促進や連携強化が期待されるところであります。
引き続き、調川IC、そして、松浦ICまでの開通を目指し、円滑な事業進捗が図られるよう、国へ協力するとともに、早期の工事着手が望まれる松浦佐々道路についても、沿線自治体と協力しながら、用地取得を支援するための体制づくりを進めてまいります。
また、島原道路については、有明吾妻間の未着手区間において、新たな工区の立ち上げを目指すとともに、西彼杵道路については、時津工区におけるトンネル工事への早期着手に向け、引き続き用地の確保に努めてまいります。
県としては、今後とも、地域の活性化に資する道路整備を積極的に推進してまいります。
昨年改正された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の施行に伴い、知事と教育委員会で構成し、教育等に係る総合的施策の根本となる方針を定める大綱や重点的に講ずべき施策等について協議等を行う「長崎県総合教育会議」を設置し、去る5月27日に第1回会議を開催いたしました。
会議では、大綱に盛り込むべき方針として、第二期長崎県教育振興基本計画をもとに教育行政を進めていくことを基本方針とするほか、本県を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、学力向上、国際社会で活躍できる人材の育成、若者の地元定着促進などを目指していくことについて、議論したところであります。
今後、同会議の協議を踏まえ、大綱をとりまとめるとともに、知事と教育委員会が、本県教育の課題及び目指すべき姿を共有しつつ、十分な意思の疎通や連携強化を図りながら、本県の教育行政を推進してまいります。
本年3月に開催されました「全国高等学校選抜大会」において、個人競技では、西彼農業高校の吉岡選手が、ウエイトリフティング競技94kg級で優勝いたしました。
団体競技では、大村工業高校が男子ソフトボール競技で4年連続5回目の優勝を果たし、前人未到の4連覇という快挙を成し遂げたほか、剣道競技において島原高校が男女ともに第3位となりました。
また、柔道競技の永瀬選手は全日本選抜体重別選手権で2連覇し、世界選手権の代表に選出され、先月行われたワールドマスターズにおいても、世界の強豪を相手に優勝を果たしております。
そのほか、柔道競技の田川選手がブレーメン国際柔道大会で優勝、ボウリング競技の今井選手、ライフル射撃競技の松本選手が、それぞれ全日本選手権大会で優勝を果たすなど、各種大会で好成績を収めております。
昨年開催の「長崎がんばらんば国体」から続く、本県選手の活躍は、県民に感動と勇気を与え、明るく活力に満ちた長崎県づくりにつながるものであり、今後もさらなる本県スポーツの振興と競技力の向上を推進してまいります。
以上、当面する県政の諸課題について申し上げましたが、県政全般にわたり、今議会において、さらなるご意見、ご提案を賜りたいと存じます。
次に、議案関係についてご説明いたします。
まず、補正予算でありますが、今回は、地域医療介護総合確保基金事業に要する経費、国庫補助事業の内示等に伴う事業費の追加、その他緊急を要する経費について編成いたしました
一般会計 41億7,902万4千円の増額
補正をしております。
この結果、現計予算と合算した本年度の一般会計の歳入歳出予算額は、6,969億7,929万8千円
となり、前年同期の予算に比べ、
7億2,880万1千円
の減となっております。
次に、予算以外の議案のうち、主なものについてご説明いたします。
第92号議案「長崎県港湾管理条例及び長崎県営港湾ターミナルビル条例の一部を改正する条例」は、長崎港元船ターミナルビル及び元船広場の管理を指定管理者に行わせるため、所要の改正を行おうとするものであります。
第98号議案「契約の締結について」は、長崎港荷役機械整備工事(コンテナクレーン製作据付)の請負契約を締結しようとするものであります。
第99号議案は、長崎県人事委員会の委員の選任について議会の同意を得ようとするものであります。
委員といたしまして、
水上 正博(みずかみ まさひろ)君
平松 喜一朗(ひらまつ きいちろう)君
を選任しようとするものであります。
いずれも適任と存じますので、ご決定を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
なお、人事委員会委員を退任されます、川口 春利(かわぐち はるとし)君、橘高 克和(きったか よしかず ※高ははしごたか)君には、在任中、多大なご尽力をいただきました。この機会に厚くお礼申し上げます。
その他の案件については、説明を省略させていただきますので、ご了承を賜りたいと存じます。
以上をもちまして、本日提出いたしました議案の説明を終わります。
なにとぞ、慎重にご審議のうえ、適正なるご決定を賜りますようお願い申し上げます。