世界的に活躍した日本の作曲家武満徹さんの代表作に『ノヴェンバー・ステップス』という楽曲があります。
ニューヨーク・フィルハーモニックの125周年を記念する委嘱作品として当時の音楽監督レナード・バーンスタインから依頼されたもので、同楽団で副指揮者を務めていた小澤征爾さんが武満さんの作品を紹介したことがきっかけだったといわれています。
海外からの依頼に喜んだ武満さんでしたが、いざ曲を書き始めると西洋と日本の音楽性の違いに悩み、作品づくりに行き詰まってしまったそうです。
そんな彼を救ったのが滞在中の山里で聴いた有線放送でした。
風や鳥のさえずりなど自然の音の中で響く放送の音が、お互いを損なわずに共鳴するという新たな発想を与えてくれたのです。
オーケストラと対置するように日本の伝統楽器の存在を際立たせたこの楽曲は、多様な文化や思想、宗教がそれぞれ独立しながらも共生する世界をイメージさせてくれます。
11月に初演が決まっていたことと、音楽構造が11の段をもつことから名付けられたという『ノヴェンバー・ステップス』。
1967年11月9日にニューヨークで初めて披露されたこの楽曲は、会場のどよめきとともに多くの観客を魅了したそうです。
日本にキリスト教が伝播し、洗礼を受けたキリシタン大名とそれに対抗する領主たちが争い、お互いに神社仏閣を破壊し、教会を焼き払った時代。
厳しい迫害のなかで耐え忍びながら信仰を続けた禁教の時代。
そして幾多の時代が過ぎてもなお繰り返される戦争や対立、テロ行為や様々な差別・・・。
オーケストラの演奏を背景に力強く鳴り響く琵琶と尺八の音は何を語りかけているのでしょうか。
11月ももう最後の週。あと数日の階段を上れば一年を締めくくる12月が待っています。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)
長崎と天草地方のキリスト教関連歴文化遺産群ウェブサイト(おらしょ-こころ旅-)・おらしょ通信(vol-279)
より(毎週月曜日更新)
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