レミオロメンという日本のロックバンドの代表作に「3月9日」という曲があります。
メンバー共通の友人の結婚を祝うために作られた歌とのことですが、最近では定番の卒業ソングとしても親しまれているようです。
瞳を閉じればいつもそこにあなたがいて、あなたのおかげで私は強くなれた。だから私も同じようにあなたの力になれる存在でありたい-。
そんな内容のサビの部分には感謝と希望にあふれた純粋な心が息づいています。
今ではこういった音楽もCDやDVD、インターネットの動画サイトなどでも気軽に鑑賞することができ、自らで演奏したいと思えば容易に楽譜を手に入れることもできます。
音楽のほかにも記録として残された様々な芸術や文化が現代へと受け継がれ、多くの人々に感動を与えてきました。
そんななか、口伝だけで伝承されてきたものがあります。
日本の禁教下においてひそかに伝えられてきたキリシタンの祈りの言葉「オラショ」です。
口伝するにあたってはいくつかの決まりごとがあったようで、習う時期はキリスト教の四旬節(復活祭前の40日)に限られ、その期間に覚えることができない場合は次の年に持ち越されたとのこと。
もちろん紙に書き取ってはならない。夜は外に見張りを立て布団をかぶって行うなどの徹底ぶりだったそうです。
そうやって受け継がれてきたオラショも研究者たちの努力によって録音、映像化され、今ではその様子を知ることができるようになりました。
記録に残すということは歴史を後世に残すということ。
より豊かな社会を構築するための手立てとなる知的資源を次世代に伝えていくという大切な役割を担っています。
最近、文書が破棄された、データが保存されていないなどとよく耳にしますが、何をか言わんや、ですね。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)
長崎と天草地方のキリスト教関連歴文化遺産群ウェブサイト(おらしょ-こころ旅-)・おらしょ通信(vol-293)
より(毎週月曜日更新)
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