【おらしょ通信】 vol.295「潜伏組織」

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おらしょ通信vol-295「潜伏組織」

4月から就職する人にとって今はいろいろと準備で忙しい時期かもしれません。

なかには起業する人もいるのでしょうが、ほとんどの人が企業や団体などに所属してそれぞれの分野で頑張っていくのでしょうね。

ある経営学者によると、組織の成立には3つの要素が必要なのだそうです。

共通の目的を持っていること(組織目的)、お互いに協力する意思があること(貢献意欲)、そして円滑なコミュニケーションがとれること(情報共有)。

これを見て大きくうなずいた人もいるでしょうね。

日本のキリシタン史に目を向けてみると、国内に外国人宣教師がいなくなった1644年以降、キリシタンたちは団結して信仰を守るために潜伏組織をつくりました。

それはキリスト教の伝来初期からあったコンフラリア(信心会)という信仰共同体を原型としたもので、三役を中心に構成されていました。

長崎の浦上村で三役といえば、帳方(ちょうかた)である惣頭(そうがしら)、水方(みずかた)の触頭(ふれがしら)、そして聞役(ききやく)。

惣頭は、村で一人だけ選挙で選ばれる指導者で、教会暦や宗教書を所持し、祝日や教理、オラショなどを触頭に伝えていました。

触頭は、浦上村山里の4つの郷(ごう)に一人ずつおかれ、惣頭からの伝達事項を聞役に伝える役割がありました。

また聞役は、字(あざ)に一人ずつ配置され、触頭からの伝達事項を各戸に伝えていました。

こうして彼らが200年以上ものあいだ信仰を守り続けることができたのは、冒頭で紹介した組織を成立させるための3要素がしっかりと機能していたからに違いありません。

この春、新社会人となる皆さん、組織のために頑張るのはもちろんですが、いろんな出会いを通してワクワクするような何かを見つけることができるといいですね。

(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)

長崎と天草地方のキリスト教関連歴文化遺産群ウェブサイト(おらしょ-こころ旅-)・おらしょ通信(vol-295)
より(毎週月曜日更新)

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