明治から大正、昭和の頃までは長男が家の跡取りになる、家業を継ぐというのはわりと一般的なことで、特別な技術が必要な場合は学校卒業と同時にどこかに弟子入りさせ、伝統やしきたりを学ばせることも多かったようです。
1873年にキリシタン禁制の高札が撤廃されると、潜伏キリシタンの多くはカトリックへと復帰したのですが、一方で復帰することなく先祖代々受け継いできた信仰を守り続ける「かくれキリシタン」と呼ばれる人たちもいました。
彼らが住んでいた平戸市生月では、代々「納戸神(なんどがみ)」と呼ばれる人物を描いた掛け軸を信仰の対象とし、祈りの言葉であるオラショを唱え、聖地とされる中江ノ島で採取した水を聖水として用いて洗礼の儀式を行っていたそうです。
しかし人口減少や若者の都市への流出などによってこの信仰文化を後世に伝えていくのは厳しい状況になっているようです。
どうにかして伝統を守り続けたい。その一方で若者の夢もかなえてあげたい。地元の人々の想いは振り子のようにずっと揺れ続けていたのかもしれません。
この春、新たなステージへと旅立つ若者たち。
彼らの心に希望の光が差し込むように、長いあいだ信仰文化を守り続けてきた人々の明日にも多くの理解と継承の光明がともることを願っています。
(文:ヒラモトヨシノリ、イラスト:ナカムラタエ)
長崎と天草地方のキリスト教関連歴文化遺産群ウェブサイト(おらしょ-こころ旅-)・おらしょ通信(vol-345)
より(毎週月曜日更新)
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