障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例 令和元年度活動報告書 令和2年6月 長崎県福祉保健部障害福祉課 はじめに 本県では、障害のあるなしにかかわらず、誰もが社会を構成する一員として、あらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指して、障害のある人に対する差別を禁止し、差別をなくすための施策を推進するための事項を定めた、「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を制定しています。 この報告書は、条例全面施行から6年目にあたる令和元年度、1年間の相談活動実績をまとめたものです。 相談窓口にどのような相談が寄せられ、問題の解消のために何が求められているのかを県民の皆様に知っていただくことで、障害のある人に対する差別をなくし、共生社会を実現するためにできることは何なのか考えていただくきっかけになればと思います。   目次 T 条例の仕組み 1 条例の目的 2 障害のある人とは 3 差別の禁止 4 相談体制 5 問題解決のための調整機関 6 問題解決までの流れ U 相談活動の実績 1 相談者 2 相談方法 3 相談分類 4 相談分野 5 対応方法 6 活動回数と活動期間 7 連携 8 圏域別の相談件数 V 相談事例 W 障害理解・啓発活動 T 条例の仕組み                                   1  条例の目的 この条例は、障害や障害のある人に対する県民の理解を深め、障害のあるなしにかかわらず、誰もがあらゆる社会活動に参加できる共生社会の実現を目指しています。   2 障害のある人とは 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病を原因とする障害など心身の機能の障害があり、これらの障害と社会的障壁によって、継続的又は断続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人を「障害のある人」と規定しています。            3 差別の禁止 不均等待遇を行うこと 不均等待遇とは、障害や障害に関することを理由として、区別、排除、制限したり、条件を課すなど、障害のない人と異なる取扱いをすることです。特別な事情がないのに不均等待遇を行うことは差別に当たります。 合理的配慮を怠ること 合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同等に権利を行使したり、同等の機会や待遇を受けるために必要な現状の変更や調整を過度な負担が生じない範囲で行うことです。障害のある人の求めがあった場合に、特別な事情がないのに合理的配慮を怠ることは差別に当たります。 4 相談体制 差別に関する相談窓口として、各市町に地域相談員を172名(令和2年3月31日現在)、長崎県障害福祉課内に広域専門相談員を2名配置しています。相談を受けた地域相談員と広域専門相談員は、当事者それぞれの話を十分に聴き、問題解決に向けて取扱方針を決定し、その方針に基づき連携して対応します。地域相談員は、各市町が委嘱している身体障害者相談員・知的障害者相談員・精神保健福祉相談員で承諾が得られた方に委託しています。 地域相談員の内訳(令和2年3月31日現在) 長崎市11名(身体6名、知的3名、精神2名) 佐世保市17名(身体13名、知的4名) 島原市4名(身体1名、知的3名) 諫早市14名(身体8名、知的4名、精神2名) 大村市6名(身体2名、知的2名、精神2名) 平戸市9名(身体5名、知的4名) 松浦市10名(身体8名、知的2名) 対馬市6名(身体3名、知的3名) 壱岐市10名(身体7名、知的3名) 五島市16名(身体8名、知的6名、精神2名) 西海市11名(身体7名、知的4名) 雲仙市14名(身体7名、知的7名) 南島原市16名(身体9名、知的5名、精神2名) 長与町5名(身体5名) 時津町3名(身体2名、知的1名) 東彼杵町2名(身体2名) 川棚町4名(障害区分なし) 波佐見町3名(身体2名、知的1名) 小値賀町0名 佐々町2名(身体1名、知的1名) 新上五島町9名(身体4名、知的3名、精神2名) 相談員数計172名(身体障害者相談員100名、知的障害者相談員56名、精神障害者相談員12名) 5 問題解決のための調整機関 地域相談員や広域専門相談員による問題解決が困難な場合は、障害のある人やその関係者からの申し立てにより、「障害のある人の相談に関する調整委員会」(以下、「調整委員会」という。)が助言やあっせんを行います。調整委員会は、申立てのあった事案について専門的な見地から公正・中立な判断をし、当事者双方の事情や意見を検証して、解決に向けた助言やあっせんを行います。 6 問題解決までの流れ 差別に関する問題が発生したら、県の相談窓口である地域相談員又は広域専門相談員が相談を受け付けます。相談員が調査や調整等を行い問題の解決を図ります。相談員による解決が困難な場合は、申立てにより調整委員会による助言・あっせんを行い解決を図ります。特に悪質な差別があったと思われる事案を解決するための手段として、知事による勧告・公表を用意しています。 U 相談活動の実績                                 1 相談者 相談者と障害区分 (本人)肢体不自由2件、視覚障害3件、内部障害2件、、精神障害5件、難病2件、計14件 (家族)精神障害2件、難病1件、計3件 (支援関係者)肢体不自由1件、視覚障害1件、難病1件、その他1件、計4件 (友人・知人)0件 (その他)その他2件、計2件 (計)肢体不自由3件、視覚障害4件、聴覚障害0件、内部障害2件、知的障害0件、精神障害7件、発達障害0件、難病4件、その他3件、計23件 ※区分については、相談者に確認して分類しています。 相談者は、障害のある「本人」が14件(61%)と最も多くなっています。次いで、「支援関係者」が4件(17%)、「家族」が3件(13%)でした。「その他」の2件(9%)は、行政職員からの相談が2件でした。今年度は、「友人・知人」からの相談はありませんでした。 障害区分では、「肢体不自由」3件、「視覚障害」4件、「内部障害」2件、を合計した「身体障害者」が9件と最も多く、次いで「精神障害」が7件、「難病」が4件となっています。「その他」の3件は、障害全般に関わる相談でした。「知的障害」、「発達障害」からの相談はありませんでした。 2 相談方法 障害のある人に対する差別に関する相談は、電話、面談、手紙、ファックス、メールにより受理しています。相談は、障害の特性や状況に合わせて相談者が伝えやすい手段でできるようにしていますが、電話による相談が21件と大半を占めています。 受付時の相談方法 電話21件、面談2件、手紙0件、ファックス1件、メール0件、計23件 3 相談分類 令和元年度、1年間に相談窓口に寄せられた相談は23件でした。結果として、不均等待遇や合理的配慮の欠如に該当する相談は0件でした。調整委員会への申立てが行われた事案は、ありませんでした。 相談分類別の件数 主訴として、不均等待遇や合理的配慮の欠如8件、不適切な行為3件、不快・不満5件、意見・要望2件、問い合わせ5件、傾聴事案0件、計23件でした。結果として、不均等待遇0件、合理的配慮の欠如0件、不適切な行為6件、不快・不満5件、意見・要望3件、問い合わせ6件、傾聴事案3件、計23件でした。 ※1 令和元年度に調整委員会へ申立てが行われた事案はありませんでした。 ※2 相談分類項目の定義 「不適切な行為」条例の不均等待遇、合理的配慮の欠如には該当しないが、差別的・不適切な行為があったと考えられるもの。 「不快・不満」差別や不適切な行為があったとは判断できないが、相談者が差別と捉えて不快・不満の訴えをしているもの。 「意見・要望」条例や福祉制度、県への意見や要望に類するもの。 「問い合わせ」条例や福祉制度、合理的配慮の対応方法に関する問い合わせやリーフレットの提供依頼など。 「傾聴事案」相談者自身の気持ちを聞いてもらいたいというものや、対応不要の意思表示があったもの。 相談分類と障害区分 主訴 (不均等待遇)肢体不自由1件、内部障害1件、精神障害1件、計3件 (合理的配慮の欠如)肢体不自由1件、視覚障害1件、内部障害1件、難病2件、計5件 (不適切な行為)視覚障害1件、精神障害1件、難病1件、計3件 (不快・不満)視覚障害1件、精神障害4件、計5件 (意見・要望)視覚障害1件、精神障害1件、計2件 (問い合わせ)肢体不自由1件、難病1件、その他3件、計5件 (傾聴事案) 計0件  (計)肢体不自由3件、視覚障害4件、聴覚障害0件、内部障害2件、知的障害0件、精神障害7件、発達障害0件、難病4件、その他3件、計23件 結果 (不均等待遇)計0件 (合理的配慮の欠如)計0件 (不適切な行為)肢体不自由1件、聴覚障害2件、内部障害1件、難病2件、計6件 (不快・不満)視覚障害1件、内部障害1件、精神障害3件、計5件 (意見・要望)肢体不自由1件、視覚障害1件、精神障害1件、計3件 (問い合わせ)肢体不自由1件、難病2件、その他3件、計6件 (傾聴事案)精神障害3件、計3件 (計)肢体不自由3件、視覚障害4件、聴覚障害0件、内部障害2件、知的障害0件、精神障害7件、発達障害0件、難病4件、その他3件、計23件 主訴として「差別に関する相談(特定相談)」で、「不均等待遇」に分類される相談は、障害区分の「肢体不自由」で1件、「内部障害」で1件、「精神障害」で1件の計3件ありました。「合理的配慮の欠如」に分類される相談は「肢体不自由」で1件、「視覚障害」で1件、「内部障害」で1件、「難病」で2件の計5件でした。事実確認などの結果としては、「不適切な行為」と「問い合わせ」に分類されるものが各6件と最も多く、「不快・不満」が5件、「意見・要望」と「傾聴事案」が各3件でした。 4 相談分野 条例では、日常生活や社会生活での10の個別分野における差別行為の禁止を特に定めています。 (差別の禁止が規定されている10の個別分野) 福祉サービスの提供、医療の提供、商品及びサービスの提供、労働及び雇用、教育、建築物の利用、交通機関の利用、不動産取引、情報の提供等、意思表示の受領 相談分野と障害区分は、主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の8件を相談の分野で分類したものです。 相談分野と障害区分 (福祉サービスの提供)計0件 (医療の提供)計0件 (商品及びサービスの提供)計0件 (労働・雇用)肢体不自由1件、計1件 (教育)計0件 (建築物の利用)視覚障害1件、難病2件、計3件 (交通機関の利用)肢体不自由1件、内部障害計1件、計2件 (不動産取引)計0件 (情報の提供等)計0件 (意思表示の受領)精神障害1件、計1件 (その他)内部障害1件、計1件 (計)肢体不自由2件、視覚障害1件、聴覚障害0件、内部障害2件、知的障害0件、精神障害1件、発達障害0件、難病2件、その他0件、計8件 10分野別の相談件数 福祉サービスの提供0件、医療の提供0件、商品及びサービスの提供0件、労働及び雇用1件、教育0件、建築物の利用3件、交通機関の利用2件、不動産取引0件、情報の提供等0件、意思表示の受領1件、その他1件、計8件。その他の1件については、相手方が特定できない一般私人の発言内容についての相談でした。 5 対応方法 対応と相談分野 主訴が「不均等待遇」・「合理的配慮の欠如」の「差別に関する相談(特定相談)」の8件の対応を相談分野別に分類したものです。 (相手方との調整)建築物の利用1件、計1件 (事実確認等)建築物の利用2件、意思表示1件、計3件 (関係機関引継ぎ)労働及び雇用1件、計1件 (助言)0件 (相談窓口の紹介)0件 (情報提供・資料送付)交通機関の利用1件、計1件 (傾聴主体)その他1件、計1件 (その他)交通機関の利用1件、計1件 (計)福祉サービスの提供0件、医療の提供0件、商品及びサービスの提供0件、労働及び雇用1件、教育0件、建築物の利用3件、交通機関の利用2件、不動産取引0件、情報の提供等0件、意思表示の受領1件、その他1件、計8件  差別に関する相談についての対応は、全体として「事実確認等」が3件、「相手方との調整」・「関係機関引継ぎ」・「情報提供・資料送付」・「傾聴主体」・「その他」が各1件でした。 対応と相談分類(結果)の関係 次の表は、相談に対する対応状況について、相談分類と対応の関係を表したものです。相談者の同意に基づき、相手方や関係者から聴き取り調査を行い、双方の意向を確認した後に条例における対応方針を決定し、調整や対応を行っています。 (相手方との調整)不適切な行為1件、計1件 (事実確認等)不適切な行為3件、不快・不満2件、意見要望2件、傾聴事案1件、計8件 (関係機関引継ぎ)不適切な行為1件、問い合わせ1件、計2件 (助言)問い合わせ2件、計2件 (相談窓口の紹介)不快・不満1件、計1件 (情報提供・資料送付)意見・要望1件、問い合わせ3件、計4件 (傾聴主体)不適切な行為1件、不快・不満1件、、傾聴事案2件、計4件 (その他)不快・不満1件、計1件 (計)不均等待遇0件、合理的配慮の欠如0件、不適切な行為6件、不快・不満5件、意見・要望3件、問い合わせ6件、傾聴事案3件、計23件 「不適切な行為」6件についての対応は、「事実確認等」が3件、「相手方との調整」・「関係機関引継ぎ」・「傾聴主体」が1件でした。事実確認等」と「傾聴主体」が1件でした。「不快・不満」5件についての対応は、「事実確認等」が2件、「相談窓口の紹介」・「傾聴主体」・「その他」が各1件でした。「意見・要望」3件についての対応は、「事実確認等」が2件、「情報提供・資料送付」が1件でした。「問い合わせ」6件についての対応は、「情報提供・資料送付」が3件、「助言」が2件、「関係機関引継ぎ」が1件でした。「傾聴事案」3件についての対応は、「傾聴主体」が2件、「事実確認等」が1件でした。 6 活動回数 対応ごとの活動回数 (相手方との調整)1件、活動回数11回、平均回数11.0回 (事実確認等)8件、活動回数30回、平均回数3.8回      (関係機関引継ぎ)2件、活動回数9回、平均回数4.5回 (助言)2件、活動回数6回、平均回数3.0回 (相談窓口の紹介)1件、活動回数4回、平均回数4.0回 (情報提供・資料送付)4件、活動回数6回、平均回数1.5回 (傾聴主体)4件、活動回数7回、平均回数1.8回 (その他)1件、活動回数2回、平均回数2.0回 (合計)23件、活動回数75回、平均回数3.3回 活動回数(対応回数)は、事案や対応方法によって大きな差がありますが、平均すると3.3回となりました。「相手方との調整」や「事実確認等」「関係機関引継ぎ」などの対応は、複数の機関と連携して対応にあたることが多いため活動回数(対応回数)が増加する傾向がありました。また、相談件数は昨年度(45件)から減少しているため、全体の活動回数も減少しています。 相談受付から解決までの活動期間については、相談を受けた当日に解決したものが16件と最も多く、2日間が4件、4日間が2件、7日間が1件でした。 7 連携 他機関との連携 問題解決のために、必要な場合には、他の機関等と連携を図って対応を行っています。対応をしていく中で、他機関等と連携し解決に至った件数は、7件でした。主な連携先は、県の担当課、国・市町の関係機関、障害福祉事業所などです。複数の機関と連携を図った事案もありました。 地域相談員との連携 相談活動 地域相談員が「差別に関する相談」を受けた際は、広域専門相談員と連携して問題の解決を図っています。地域相談員が相談を受けて、広域専門相談員が対応を引き継いだ相談が1件、地域相談員自身の相談で広域専門相談員に対応を依頼した事案は1件でした。 地域相談員研修会 平成30年度から、障害のある人への理解促進のための研修と併せて地域相談員研修を実施しています。理解促進のための研修には行政関係者や事業者などにも参加を呼びかけ、県内4地区で4回の研修会を開催しました。 地域相談員研修会 平成30年度から、障害のある人への理解促進のため研修と併せて地域相談員研修を実施しています。障害のある人への理解促進のための研修は広く県民に参加を呼びかけ、令和元年度は県内4地区で4回の研修会を開催しました。 相談員通信 地域相談員と広域専門相談員の連携の一助として、相談員通信を年に1回発行しています。内容は、相談実績データ、研修会の様子、県政世論調査での条例の認知度などについてでした。 8 圏域別の相談件数 相談者の居住地域を障害保健福祉圏域(10圏域)で分類しています。 圏域別相談件数 長崎圏域10件、西彼圏域1件、県央圏域2件、佐世保圏域7件、県北圏域1件、県南圏域1件、五島圏域0件、上五島圏域1件、壱岐圏域0件、対馬圏域0件、その他0件、合計23件 圏域別の相談件数については、「長崎圏域」が10 件と最も多く、「佐世保圏域」が7件、「県央圏域」が2件、「西彼圏域」・「県北圏域」・「県南圏域」・「上五島圏域」が1件でした。 V 相談事例 寄せられた相談について、個人情報保護の観点から、内容を一部変更するなど再構成をしたうえで、事例として掲載しています。 1 交通機関の利用 相談者 腎臓の機能障害(以下、内部障害)があるAさん Aさんは、身障者割引のバスカードを利用してバスに乗車したところ、運転士から不正利用を疑われる発言をされました。後日バス会社に連絡をして抗議しましたが、納得できる対応ではありませんでした。 ※内部障害…身体内部の臓器に障害があることを指し、心臓機能障害、腎臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう・直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウイルスによえる免疫機能の障害があり、身体障害者福祉法で定められた障害です。 (問題点) 運転士は障害者手帳の確認をせずに、Aさんが不正利用者であるかのような発言をしていました。 (対応と結果) Aさんはバス事業者との調整までは望まず、再発防止策を求めていました。そのため、バス事業者に対し、障害者割引制度や障害者手帳の確認方法について、内部障害のある人など外見からは障害の有無のわからない人への対応など改めて運転士に教育してもらえるようお願いしました。 (広域専門相談員から) 公共交通機関の障害者割引制度については、積極的改善措置であるため、不正利用防止のために障害者手帳の提示を求められる場合が多いですが、Aさんのケースでは障害者手帳は確認されていませんでした。見た目では障害のあることがわからない内部障害のある人は、周囲の理解を得ることが難しく、日常生活でも困ることがあります。最近では、ヘルプマークをつけている方も増えてきていますので、適切な配慮と声かけで助け合いましょう。 「ヘルプマーク」(赤い背景に白十字とハートの描かれたデザイン) 県(障害福祉課、こども・女性・障害者支援センター、県保健所)又は市町の障害福祉担当窓口等で配布しています。 2 労働及び雇用 相談者 肢体に障害のあるBさん Bさんは、障害者雇用で会社員として働いています。会社で、業務を行うために必要な道具がBさんにだけ支給されなかったり、ロッカーの中を荒らされたり、同僚からの身体的な暴力などがありました。Bさんは心身を病み、休職しています。障害者だから差別を受けたのではないかと相談することにしました。 (問題点) Bさんの相談内容は、障害のある人への虐待の問題である可能性があり、障害者虐待防止法による使用者からの虐待として対応が必要です。 (対応と結果) Bさんと話し合った結果、使用者による障害者虐待として県障害者権利擁護センターへ通報し、労働局などの関係機関に対応を引き継ぐことになりました。 ※障害者虐待防止法…正式名称は「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」で、平成24年に施行された法律です。障害者に対する虐待の禁止、予防及び早期発見その他の国等の責務、虐待を受けた障害者に対する保護及び自立支援のための措置、養護者に対する支援のための措置などが定められています。障害者虐待防止法では「障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村(使用者による虐待は県へも可能)へ通報しなければならない」(第7条、16条、第22条)とされています。又、虐待を受けた障害者の方も「その旨を市町又は県へ届けることができる」とされています。 (広域専門相談員から) 障害のある人への虐待は、障害のある人の尊厳や生命を脅かすものであり、虐待に関する相談を受けた者は、速やかに通報・届出をする必要があります。事業所等のおいて、障害の特性に応じた配慮がわからず、それが職場でのトラブルにつながっていることもあります。事業主をはじめとした事業所全体で、職員が障害者の人権や障害者虐待への理解を深め、特性に応じた配慮や接し方などを学ぶ機会が必要です。 3 建築物の利用 相談者 車椅子を利用するCさん Cさんは、車の前面に四つ葉マーク(身体障害者標識)、後部に車椅子マーク(国際シンボルマーク)を貼っています。ある施設の駐車場で、身体障害者用駐車場に駐車しようとしたところ、誘導係から一般駐車場に駐車するよう案内されました。自分は身体障害者なのに、どうして一般駐車場に駐車しないといけないのか疑問に思いました。 (問題点) 駐車場の誘導係は、車の前面しか見えておらず、四つ葉マークが身体障害者標識だと認識していませんでした。また、相談者は誘導員から一般駐車場に誘導された時、自分は身体障害者だということを伝えていませんでした。 (対応と結果) 事実確認を行ったところ、誘導係も含め施設の職員も四つ葉マークの意味を認識していませんでした。事業者から職員全体へ、障害者マークを含め、障害者への理解について教育、研修をしてもらえるよう依頼しました。併せて見た目や障害者に関するマークだけで判断せずに、ひと声掛けるなどの誘導方法を再検討してもらえるよう助言しました。 「身体障害者標識」(身体障害者マーク)(四葉のマーク) 肢体不自由であることを理由に免許に条件を付されている方が運転する車に表示するマークで、マークの表示については、努力義務となっています。危険防止のためやむを得ない場合を除き、このマークを付けた車に幅寄せや割り込みを行った運転者は、道路交通法の規定により罰せられます。 「障害者のための国際シンボルマーク」(車椅子マーク) 障害者が利用できる建物、施設であることをわかりやすく示すための世界共通のシンボルマークです。「すべての障害者を対象」としたもので、車椅子を利用する障害者を限定するものではありません。 (広域専門相談員から) 障害のある人には、外見だけではわからない障害もあります。差別の意図はなくても、障害のある人が不利益を被ってしまうこともあります。今回の事例では、誘導員の身体障害者標識についての認識不足もありますが、配慮が必要な側は、なぜ配慮が必要なのか伝え、申し出を受けた側もわからないことは率直に訊ねるなど安全に利用できるよう双方が歩み寄り理解を深める必要があると考えます。 4 その他(10分野以外)の相談 相談者 支援関係者のあるDさん Dさんは、視覚障害者支の支援をしています。 Dさんは、3年ほど前から警察へ交通量の多い十字路の横断歩道の信号機を、音響式に変えるか音響を後付けしてほしいと要望していましたが、要望は通りませんでした。その理由を知りたいと相談することにしました。 (問題点) 視覚障害のある人にとって、音響式信号機の音は命に関る情報として非常に大切なものです。しかし、警察は要望に対して設置できない理由を説明していませんでした。 (対応と結果) 警察に事実確認をした結果、要望のある信号機は観光地の近くにあり、周囲との景観と調和を図るためデザイン重視の信号機を設置しているため、音響を後付けするのは構造上非常に難しいとの回答でした。 ※音響式信号機 信号機が青になったことを視覚障害者に知らせる為、誘導音を出す装置がついている信号機のことです。音響式信号機には以下の2種類あります。 (1)メロディ式…「とおりゃんせ」や「故郷の空」等の音楽が流れる方式です。 (2)擬音式…「ピヨピヨ」や「カッコウ」等の音が流れる方式です。 音響式信号機を設置するときに、近隣住民から苦情が寄せられることがありますが、最近の音響技術では、指向性のはっきりした音源を出すことが可能になってきています。視覚障害者が歩道を安全にあるくことができ、近隣住民への配慮のためにも、さらに技術開発が進みことが望まれます。 ※音響式信号機ではありませんが、押しボタンのところで「信号が青に変わりました」と発する信号機もあります。比較的狭い道路では、コストも低く抑えられるこのような設備で十分な場合もあります。 (広域専門相談員から) まちづくりにおいても、歩道の拡幅や段差の解消などのユニバーサルデザイン化が進んでいます。街並みの景観との調和と、障害のあるなしにかかわらず誰もが移動の安全と利便性を得る機能が共存した信号機の設置が望まれます。すべての人が安心して共に暮らすことができる福祉のまちづくりの推進は、障害のある人の社会参加と共生社会の実現に繋がるものと考えます。 W 障害理解・啓発活動 1 共生社会セミナー(障害平等研修) 障害のある人もない人も、お互いの多様性を認め合い、理解を深めていただくことを目的に、共生社会セミナーを雲仙会場、島原会場、佐世保会場、対馬会場の県内4地区で開催しました。 セミナープログラムの一部は障害平等研修で、障害者の社会参加や多様性に基づいた共生社会を創ることを目的として、障害者自身がファシリテーターとなって進めるワークショップ型の研修です。ファシリテーターは、長崎障害フォーラムの土岐達志会長にしていただきました。二部は、障害者差別解消法及び県条例について、三部は障害のある人の差別に関する相談の事例の検討を行いました。 身の回りの見えないバリアについて気づき、考え、誰もが住みやすい地域にしていくためにはどうしたらよいか、参加者みんなで真剣に白熱した議論を行いました。 2 心のバリアフリー 国は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、「心のバリアフリー」を推進するため、障害者団体等の関係者や学識経験者、民間企業の参画により、「心のバリアフリー」を学ぶアニメーション教材を平成29年度に作成しました。 県では、この教材を利用して、新規採用職員研修を行いました。アニメーションを視聴し、その後グループディスカッションを通して、障害のある人への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」の理解や、障害のある人(及びその家族)への差別を行わないよう徹底すること、自分とは異なる条件を持つ多様な他者とコミュニケーションを取る力を養い、すべての人が抱える困難や痛みを想像し共感する力を培うことを学びました。 ※「心のバリアフリー」の教材は、「内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局」のホームページからダウンロードできます。 3 その他 令和元年11月に、長崎県議会・障害者関係団体と長崎市で、「障害のある人もない人も共に生きる社会の実現を目指すための街頭キャンペーン」を行い、12月の障害者週間に合わせて県の広報媒体を利用して条例の周知・広報活動を行いました。 おわりに 本県では、平成26年4月1日に「障害のある人もない人も共に生きる平和な長崎県づくり条例」を施行し、条例施行後6年目となる令和年元年度は、前年度の活動経験も踏まえ、相談活動や条例の普及啓発に努めてきました。 また、国においては、平成28年4月1日から「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、障害者差別解消法)」が施行され、現在施行3年後の見直しの協議に入っています。県条例では民間事業者に対して、合理的配慮の提供が義務づけられていますが、障害者差別解消法においても義務化の動きがあります。 本県の条例もこの法律も、全て県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現という目的は同じです。 今後も相談制度の適切な運営を図るとともに、法律と併せて、条例の更なる普及啓発に努めてまいります。 相談・問合せ先 長崎県福祉保健部障害福祉課 広域専門相談員   〒850-8570 長崎市尾上町3-1 電話 (095)895-2450 ファックス (095)823−5082 メール s04100@pref.nagasaki.lg.jp