閉会中の活動 令和2年度分

観光振興・交通対策特別委員会

現地調査

委員会名 観光振興・交通対策特別委員会
目的 新幹線対策、観光振興対策、国際戦略、交通対策 現地調査
日時 令和2年11月5日(木)~6日(金)(2日間)
調査先 大村市、佐賀県(嬉野市、武雄市)、福岡県(福岡市)
出席委員 委員長 八江 利春、副委員長 川崎 祥司、委員 田中愛国、委員 小林 克敏、
委員 山田 博司、委員 前田 哲也、委員 松本 洋介、委員 坂本 浩、委員 久保田 将誠、
委員 中村 泰輔
概要
1.新大村(仮称)駅、大村車両基地、嬉野温泉(仮称)駅、武雄温泉駅

 上記の工事現場において、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 九州新幹線建設局から、工事現場を案内してもらうとともに、九州新幹線西九州ルート(武雄温泉・長崎間)の工事進捗の状況、駅舎・車両基地の特長や乗換方法などについて、説明を受け、質疑応答を行った。
併せて、新大村(仮称)駅及び嬉野温泉(仮称)駅においては、それぞれの市役所から駅周辺のまちづくりについて説明を受け、質疑応答を行った。

(1)武雄温泉・長崎間の進捗状況

ア 線区の進捗状況(予算確保状況)
  総工事費         6,197億円(平成31年4月12日認可) 
  令和2年度までの予算累計 5,182億円
  進捗率          84%
イ 部門別の工事進捗状況(令和2年10月1日現在)
  用地進捗率        99%   トンネル進捗率 100%
  高架橋・橋りょう進捗率 100%   軌道工事進捗率  47%
  建築工事進捗率      63%   電気工事進捗率  36%

(2)新大村(仮称)駅周辺のまちづくり

ア 目的
  ○新駅周辺の基盤整備を行うとともに、高い交通利便性を活かして企業誘致や定住促進等に取り組み、魅力ある都市拠点を形成する。
イ 事業費
  約122億円(車両基地駅周辺整備事業を含む)
ウ 進捗率
  77%(令和2年度末時点、事業費ベース)
エ 整備概要
  【都市計画道路】 坂口植松線(W=19m、L=520m)、大村駅前原口線(W=19m、L=194m)
  【駅前広場】   東口駅前広場(A=6,997平方メートル)、西口駅前広場(A=5,157平方メートル)
  【公園】     新大村駅公園(A=9,638平方メートル)、植松公園(A=1,304平方メートル)
  【自由通路】   東西自由通路(地下式)(W=4m、L=66m)
  【新駅】     在来線新駅(新幹線乗換駅(N=1箇所)

(3)大村車両基地

ア 基地諸元
  基地延長 約1.0km   最大幅員 約170m
  総面積  約10.9万平方メートル(保守基地部分を含む)
イ 概要
  ・この基地では、仕業・交番検査、臨時検査・修繕、台車振替、車体検査修繕を行う。
  ※台車及び機器の検査は、熊本総合車両所に(台車及び機器を)運んで行う。

(4)武雄温泉駅における対面乗換

○平成29年5月19日の工事実施計画(その2)認可により、対面乗換を行うための施設を追加
○営業中の在来線近接工事であるため、クレーンの吊荷による線路への越境を抑止しながら施工
・在来線特急との乗換利便性確保のために新幹線上りホームを対面乗換ホームとして整備している。
・対面乗換ホーム(幅員約10.0m)での乗換時間は、JR九州がダイヤをどのように組むのかによるが、おそらく鹿児島ルートのとき(の新八代駅での対面乗換)と同程度(3分程度)になるものと思われる。

(5)調査時写真
<新大村(仮称)駅>
<大村車両基地>
<嬉野温泉(仮称)駅>
<武雄温泉駅>
2.国土交通省 九州運輸局

 九州運輸局において、「近年(コロナ禍前まで)の国及び九州の観光の状況」、「観光・交通分野における新型コロナウイルスの影響」、「コロナ対策及び事業実績」、「今後の観光政策の方向性」及び「二次交通対策への支援内容、全国の優良事例」について説明を受けた後、意見交換を行った。

(1)近年(コロナ禍前まで)の国及び九州の観光の状況

○九州域内からの旅行者による旅行消費額(2019年)は、九州における国内旅行消費総額(250百億円)の約4割(97百億円)を占める。
○九州全体における宿泊者数の構成比(2019年)は日本人84.8%、外国人15.2%であり、その外国人の国籍別構成比では東アジアの4か国・地域で80.2%(韓国33.6%、台湾18.5%、香港13.7%、中国14.4%)を占める。
○九州の外国人入国者数は2003年から概ね右肩上がりで増加し、2018年には過去最高の5,116,366人となったが、2019年は韓国及び中国が大幅減となったため、過去3番目に多い4,222,026人であった。
○入国者数の内訳(2019年)をみると、九州はアジアからが多く(95.8%、全国は82.7%)、特に韓国が多い(40.4%、全国は17.5%)。
○2017年まで右肩上がりで増加してきた外国船社クルーズ船の九州(下関港を含む)各港湾への寄港について、2019年は655回と前年(2018年:816回)を下回った。これは、近年の中国クルーズ市場の急拡大に対応して各船社が配船を急増させた結果、採算性が悪化したことを踏まえ、2018年以降、各船社が中国への配船を減らしていることが大きな要因と考えられる。

(2)観光・交通分野における新型コロナウイルスの影響

ア 九州の宿泊事業の状況
  ○九州の宿泊施設の稼働指数は、4月以降改善傾向にあるものの、最盛期(65.0pt、令和元年11月)の6割程度(38.4pt)にとどまる。
  ○九州は全国に比して回復傾向にあり、特に9月の4連休には各県とも前年並みの稼働率(60pt前後)となったが、当該連休時も福岡県だけは39.1ptにとどまるなど伸び悩んでいる。

イ 外出自粛による公共交通事業者への影響(九州運輸局管内)
  ○夏休み期間の観光需要や帰省需要の減少を受けた8月に比べ、各事業ともに対前年比で数値の改善が見られた。Go To トラベル事業等により利用者は緩やかながら戻りつつあり、今後一層の回復が期待されるが、特に高速バス、貸切バス、旅客船については依然として厳しい状況にある。
  【9月の輸送人員(対前年比)】
  一般路線バス 27%減(N=23)   高速バス 53%減(N=13)
  タクシー   34%減(N=51)   地域鉄道 29%減(N=10)
  旅客船    45%減(N=15)

(3)コロナ対策及び事業実績

ア Go To トラベル事業の推進
  【7/22から10/15までの宿泊割引に係る利用実績(事務局報告)】
  利用人泊数 少なくとも約3,138
  人泊
  割引支援額 少なくとも約1,397億円
  ※一部推計を含む
  【11/2時点の登録承認数】
  旅行事業者  6,632(全旅行事業者の63.7%)
  宿泊事業者 26,526(全宿泊事業者の75.5%)
  【11/3時点の地域通クーポン取扱店舗登録事業者数(累計)】
  登録申請数 359,417  登録完了数 292,892

イ 訪日グローバルキャンペーンに対応したコンテンツ造成事業(令和元年度予算)
  ○欧米豪市場を中心とした、海外旅行には頻繁に行くが日本を旅行先として認知・意識していない層をターゲットとした、観光庁・日本政府観光局による情報発信「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」に活用できる新たな滞在型コンテンツ等について、地方運輸局と観光地域づくり法人(DMO)等が連携し、特に地方部をはじめ全国各地域に創出する。
  【長崎県内での事業】
  ●潜伏キリシタン関連遺産をテーマにした欧米豪市場向け滞在型ツアーコンテンツの開発
  ●長崎市茂木地区の食と自然を満喫できるグリーンツーリズム体験の企画開発
  ●「長崎刺繍」を活用した伝統文化体験と名産品の開発

ウ ナイトタイム等の活用による新たな時間市場の創出(令和2年度予算)
  ○日中限られた時間しか活用されていない地域の観光資源を夜間・早朝においてフル活用し、地域で面的にナイトタイム/モーニングタイムの活用に取り組むものを総合的に支援することで、訪日外国人旅行消費額の増加や滞在期間の延長につなげる。
  【長崎県内の取組】
  ●DEJIMA night×timetravelコンテンツ造成事業
  ●長崎・伊王島における自然・海、食、癒しをテーマとしたナイトタイム コンテンツ造成事業

(4)今後の観光政策の方向性

ア 観光の再生と新たな展開(令和3年度観光庁関係予算概算要求(事項要求))
  ○働き方改革とも合致した「新しい旅のスタイル」の普及・促進
  ○DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による観光サービスの変革と観光需要の創出
  ○宿泊施設を核とした地域における新たな観光ビジネス展開支援

イ 九州初のワーケーションスタイルの提案
  ○「和多屋別荘」による嬉野版ワーケーション

ウ 東アジアの玄関口~九州~
  ○九州を中心とした半径1,000km円内の人口は約3億人
  (東京を中心とした半径1,000km円内の人口は約1億人)

エ 持続可能な観光の実現

オ <参考>ツール・ド・九州・山口(仮称)

(5)二次交通対策への支援内容、全国の優良事例

ア 支援内容
  ○地域公共交通確保維持事業(陸上交通:地域内フィールダー系統補助)
  ○地域公共交通における感染拡大防止対策

イ 地域内フィールダー系統における収支改善の取組
  ○運行の効率化による経費削減、利用者の取込みによる収入増加、利用促進

ウ 優良事例(九州内のものを抜粋)
  ○柏原地区自治協議会・西日本鉄道㈱・福岡市(福岡県福岡市)
  ○大分市地域公共交通協議会(大分県大分市)
  ○久山地域公共交通活性化協議会(福岡県糟屋郡久山町)
  ○庄内地区まちづくり協議会、都城市(宮崎県都城市)

エ MaaS
  ○糸島市におけるマルチモーダル実証実験(Yokamachi Mirai Projectコンソーシアム)
  ○宮崎県におけるMaaS実証実験(宮崎県におけるMaaS実証実験実行委員会)

(6)調査時写真

 以上のほか、福岡市において、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構 九州新幹線建設局及び九州旅客鉄道(株)本社を訪問し、九州新幹線西九州ルートについて意見交換を行った。