令和6年2月定例会

議員提案条例


長崎県議会におけるハラスメントを防止するための条例


 (目的)
第1条 この条例は、日本国憲法が保障する個人の尊厳、政治分野における男女共同参画の推進に関する法律(平成30年法律第28号)による地方公共団体の責務等の趣旨を踏まえ、長崎県議会(以下「県議会」という。)におけるハラスメントを防止するために必要な事項を定めることにより、長崎県議会議員(以下「議員」という。)によるハラスメントを防止することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例において「ハラスメント」とは、次の各号に掲げるものをいう。
(1) 議会、職場又は地域における優越的な関係を背景とした言動であって、議会活動、議員活動又は選挙活動(準備活動を含む。)その他の政治活動(以下「政治活動等」という。)上必要かつ相当な範囲を超え、当該言動の相手とされた者(以下「相手方」という。)の職務等の環境を害するもの
(2) 政治活動等における性的な言動であって、相手方の職務等の環境を害するもの
(3) 政治活動等における妊娠又は出産に関する言動であって、相手方の職務等の環境を害するもの
(4) その他前各号に類する相手方に対する誹謗(ひぼう)中傷、事実に反する風説の流布その他の嫌がらせとなる言動であって、日本国憲法が保障する思想の自由、表現の自由等に配慮しても、なお、一般に許される限度を超え、身体的又は精神的な苦痛を与え、相手方の職務等の環境を害するもの
2 この条例において「各派代表者会議」とは、議会の運営及び活動等に関する事項の各会派相互間の協議又は調整を行うことを目的として、地方自治法(昭和22年法律第67号)第100条第12項及び長崎県議会会議規則(昭和38年長崎県議会規則第1号)第115条の規定により設置された各派代表者会議をいう。

(議員の責務)
第3条 議員は、公職に参画する者として高い倫理観が求められること及びハラスメントが個人の尊厳を不当に傷つけ、基本的人権を侵害するとともに、その能力の十分な発揮や良好な職務等の環境の確保を阻害する行為であることを自覚し、政治活動等における自らの言動を厳しく律しなければならない。

2 議員は、ハラスメントとなる言動を行っている者があるときは、その者に対し当該言動は厳に慎むべきである旨を指摘するよう努める等、率先して県議会からハラスメントを根絶するよう取り組むものとする。
3 議員は、県民全体の奉仕者としての立場を自覚し、何人に対しても前2項の規定に準じた行動に努めるものとする。

(議長の責務)
第4条 長崎県議会議長(以下「議長」という。)は、議員によるハラスメントに係る相談があった場合には当該相談に係る事実関係を調査し、必要に応じてハラスメント防止のための措置を迅速かつ適切に講じなければならない。

(啓発及び研修)
第5条 議長は、この条例の趣旨の県民への周知及び啓発に努めるとともに、県議会において、ハラスメント事案が発生することを防止するため、議員、長崎県議会事務局の職員その他議長が必要と認める者に対して研修を実施するものとする。

(相談体制の整備)
第6条 議長は、弁護士その他のハラスメント事案に関する専門的な知識又は経験を有する者を相談員とする体制について、別に定めるところにより設置する。
2 議員によるハラスメントに係る被害を申し立てる者(以下「申立人」という。)は、議長が別に定めるところにより、相談員に対し、当該ハラスメントによる被害の継続又は再発を防止するための措置(以下「被害防止措置」という。)その他当該ハラスメントに関する相談を行うことができる。

(相談事案への対応)
第7条 議長は、弁護士その他のハラスメント事案に関する専門的な知識又は経験を有する者を相談員とする体制について、別に定めるところにより設置する。
2 相談員は、前項に規定する調査を行おうとするときは、あらかじめ議長の承認を得なければならない。
3 第1項の規定による調査の結果、県議会による被害防止措置が必要と相談員が認める場合であって申立人が当該措置を求めるときは、当該相談員は議長にその旨を報告するものとする。
4 相談員は、相談事案が前項の規定に該当しないとき又は相談事案に対する調査の必要がないと認めるときは、申立人に対し、申立人が自らとるべき措置、行動等について助言するものとする。
5 第3項の規定による報告を受けた議長は、必要に応じて、他の相談員その他の者の意見を求めることができる。
6 相談員は、第3項の規定による報告のほか相談事案の受付及び対応の状況について、議長に報告するものとする。
7 議長は、本条の規定に基づく相談員の業務遂行の自由を保障するものとする。
8 相談員は、相談事案に関する秘密を厳守するとともに、相談に関する業務を行うに当たっては、申立人及び被申立人の名誉、プライバシーその他の人権の尊重について慎重に配慮しなければならない。
9 相談員は、本条の規定に基づく業務を行うに当たっては、あらゆる政党及び会派並びに議員その他の関係者の干渉又は影響を排し、中立かつ公平に当該業務を行わなければならない。

(調査協力義務)
第8条 前条第1項の規定により相談員が相談事案に関して調査するときは、相談事案の申立人、被申立人及び調査の対象となった関係者は、これに協力するよう努めなければならない。

(相談事案関係者の義務)
第9条 申立人、被申立人及び相談員その他のこの条例の規定による相談に関わる者は、申立人又は被申立人の利益を不当に侵害しないため、第6条第2項の規定による相談を行い、又は相談が行われている旨、相談員の発言その他相談事案に関する事項を公にしてはならない。
2 前項の規定に反し、同項に規定する事項が正当な理由なく公になったときは、議長は、当該事案に関し中立かつ公平な観点から確認した事実及び公にされた事項のうち事実に反するものを公表し、又は当該相談業務を中止し、若しくは停止する等、申立人の意向を確認した相談員の意見を踏まえ、申立人又は被申立人の正当な利益を守るために必要な措置を講ずるものとする。
3 申立人、被申立人及び相談員を除くこの条例の規定による相談に関わる者は、相談事案に関し相談員を介さず直接交渉し、又は申立人若しくは被申立人を威迫する等、相談員の業務の公正な遂行を妨げる行為をしてはならない。

(被害防止措置等)
第10条 議長は、第7条第3項の規定による相談員からの報告又は同条第5項の規定による他の相談員その他の者の意見を踏まえ、県議会による対応が必要と認めるときは、被申立人に対し、注意を喚起し、ハラスメントをしないよう求める等の被害防止措置を講ずるものとする。この場合において、議長は、あらかじめ各派代表者会議の議を経なければならない。
2 議長は、被申立人が前項の規定による被害防止措置に応じないとき又はハラスメント被害の継続若しくは再発を防止するためやむを得ないと認めるときは、長崎県議会議員の政治倫理に関する条例(平成15年長崎県条例第35号)第4条の規定に基づき審査を諮問しなければならない。

(プライバシーの保護)
第11条 議員は、申立人及び調査の対象となった関係者のプライバシー保護に十分配慮し、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

(取組状況の公表)
第12条 議長は、実施した研修、相談の受付及び対応の状況、議員がその責務を果たす上で参考とすべき事例等、この条例に基づく取組の状況を公表するものとする。

(議長の職務代行)
第13条 議長が申立人又は被申立人となったときは副議長が、議長及び副議長が共に申立人又は被申立人となったときは年長の議員が、この条例に規定する議長の職務を行う。

(各派代表者会議の構成員の除斥)
第14条 議長、副議長その他の各派代表者会議の構成員は、申立人又は被申立人となった場合においては、その議事に参与することができない。ただし、各派代表者会議の同意があったときは、会議に出席し、発言することができる。

(委任)
第15条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、議長が別に定める。

附 則
(施行期日)
1 この条例は、令和6年6月1日から施行する。