窒素肥料を大幅削減したレタス栽培 環境への負荷低減
2014年(平成26年)8月17日
農地に施用された窒素肥料の多くは作物に吸収、利用されるが、過剰に投与されると地下水や河川に溶け込み、周辺の環境に影響を与えたり、一部は温室効果ガスのひとつである一酸化二窒素に変化して空中に放出されることが課題となっている。こうした環境への負荷を低減するため、作物による窒素肥料の利用効率を向上させ、施肥量を削減する技術が求められており、その手法として、現在、肥効調節型肥料の利用や局所施肥法などが検討されている。
肥効調節型肥料は肥料成分の溶出速度やパターンを作物に応じてコントロールできる肥料で、既に水稲などで実用化されている。局所施肥法は、肥料を種や根の周辺に局所的に施肥する方法で、従来の全面全層施肥法に比べ肥料の利用効率が良く、施肥量の削減が可能で、環境への負荷低減や省力化が図れる。中でも肥効調節型肥料を用い、農地ではなく育苗時のセルトレイ(小さいくさび形のポットが連結して並んでいる育苗トレイ)内に施肥を行うセル内施肥法=図1参照=は、大幅に肥料を削減できる技術として期待されている。
当センターでは今回、年内採りレタスで適用性を検討した。
試験はシグモイド型(施肥後の一定期間は肥料分の溶出が抑制され、その後急激に溶出するタイプ)の肥効調節型肥料を利用して、窒素施肥量で慣行の60%、70%、80%を削減したセル内施肥法で育てた苗を、堆肥だけ施用した農地に定植した。
その結果、窒素施肥量を慣行から70~80%減らしても、市場性の高い1株500㌘前後のレタスが収穫でき、目標収量(10㌃当り4150㌔)も確保できた=図2参照=。また窒素の利用率は非常に高く、栽培跡地土壌に残存する窒素は少なかった。
この技術により窒素施肥量を大幅に削減することが可能で、環境への負荷を低減した農業を実現できる。
【図1】セル内施肥
丸い粒が肥料
【図2】セル内施肥による年内採りレタスの1株重および収量
※3ヵ年(2011~2013年)の平均
※慣行はセル内施肥ではなく、農地に化成肥料を全面全層施肥
※128穴セルトレイを使用、品種:サウザー[極早生㈱タキイ]、育苗培土:与作N150
(環境研究部門土壌肥料研究室室長 大津善雄)