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イチゴ新品種「ゆめのか」の花芽分化早進化技術

2014年(平成26年)9月21日

イチゴは本県の主要な農作物として、県内全域で233㌶(2013年、農協取り扱い面積)が栽培されており、産出額で全国第6位の産地となっている。現在、主力品種である「さちのか」から、大果で多収、良食味、日持ち性に優れる新品種「ゆめのか」への転換を推進している。しかし、「ゆめのか」は第1花房の花芽分化が「さちのか」より遅い傾向にあり、花芽分化期の高温などで定植が遅れると収穫開始も遅れ、高単価で取引される年内の収穫量が少なくなる。

そこで年内収量の安定確保のため、花芽分化を早進化できる技術として暗黒低温処理(株冷)の効果について検討したので紹介する。

イチゴは短日、低温条件下で花芽分化が始まり、花芽分化を確認してから定植する。暗黒低温処理は、暗黒状態の冷蔵施設で苗を半月程度管理して花芽分化を早進化する技術である。

試験を実施した2012年はイチゴの花芽分化期に当たる9月の残暑が厳しく、自然条件下では花芽分化が遅れ、慣行育苗では定植が9月24日と遅くなったが、暗黒低温処理により14日早い定植が可能となった。さらに出蕾(しゅつらい)日で17日、収穫開始日では34日早まり、年内収量は慣行育苗の3.6倍と大幅に増収した=表参照=

増収効果には年次差があるが、「ゆめのか」の暗黒低温処理効果は安定しており、毎年9月10日ごろの定植が実現できている。既存の冷蔵施設を利用することで大量に苗を処理することが可能であるため、本県イチゴの主要な作型として現地へ広く普及を図っている。「ゆめのか」は2013年度から転換が進んでおり、多収性に加えて年内収量が増加することでイチゴ農家の所得向上につながっている。

これから本県産のイチゴとして店頭に並ぶ「ゆめのか」は、大粒でその鮮やかな赤さがひときわ目を引く品種で、さわやかな甘みと程よい酸味が楽しめる。是非ご賞味いただきたい。




    

         今後の生産拡大が期待される「ゆめのか」



暗黒低温処理の早進効果(2012年)
処理方法 定植日 出蕾日 収穫
開始日
年内収量
kg/a
暗黒低温処理 9月10日 10月10日 11月22日 150
慣行育苗 9月24日 10月27日 12月26日 42



(農産園芸研究部門 野菜研究室 主任研究員 前田衡)