食味の良い温州ミカン新品種「長崎果研させぼ1号」
2014年(平成26年)12月7日
本県は全国第5位の温州ミカン生産県だが、全国の産地では新しい品種が育成され、既存品種の評価が年々厳しくなっている。本県でも2000年から、高品質果実の生産を可能にするオリジナル品種の育成に取り組んでいる。
本県で栽培される「させぼ温州」は、県統一ブランド「出島の華」をトップブランドとして市場評価も高く、出荷量の増加が望まれている。しかし、年により着果が不安定なことに加え、果頂部に突起が発生しやすく、商品率の低下で出荷量が安定しないなどの課題があり、需要に十分対応できていない。そこで果樹研究部門では、「させぼ温州」より食味が良く、商品率が高い新品種「長崎果研させぼ1号」(13年4月9日に品種登録出願し、現在審査中)を育成したので特性を紹介する。
「長崎果研させぼ1号」の木の外観は「させぼ温州」と類似しているが、枝の太さ、葉の大きさと長さ、花弁の幅がさせぼ温州を上回り、枝の長さと節間長(芽と芽の間隔)もやや長い。露地栽培の成熟期は5日程度早く、11月下旬にはほぼ完全着色となる。
果実は扁平(へんぺい)で、果皮は鮮やかなだいだい色、果肉はだいだい色である。同時期の果実品質を「させぼ温州」と比較すると、糖度(Brix)が高く、酸含量は低いため、甘味比も大きく食味が良い。また果頂部突起の発生率は減少し=表参照=、出荷量も安定する。
高糖度という本品種の特性をより活かすには、シートマルチ栽培が望ましい。また安定生産のための肥培管理についても、今後の研究で確立し、ブランド力の強化によるミカン農家の所得向上につなげていきたい。
新品種の「長崎果研させぼ1号」
【表】「長崎果研させぼ1号」の樹体および果実特性(露地栽培 高接ぎ樹2012年)
品 種 | 樹 姿 | 枝梢 | 節間長 (cm) |
葉身 | 花弁 の幅 (mm) |
||
太さ (mm) |
長さ (cm) |
大きさ (cm2) |
長さ (cm) |
||||
長崎果研 させぼ1号 |
やや開張 | 3.2 | 8.5 | 3.0 | 28.6 | 9.2 | 6.5 |
させぼ温州 | 開張 | 2.9 | 6.6 | 2.5 | 25.6 | 8.6 | 5.9 |
品 種 | 成熟期 | 一果重 (g) |
果形 指数 |
果実の色 | 糖度 (Brix) |
クエン 酸含量 (g/100ml) |
甘味比 | 果頂部突起 | |
果皮 | 果肉 | 発生率 (%) |
|||||||
長崎果研 させぼ1号 |
11/20 ~30 |
110.2 | 139 | 鮮やかな だいだい |
だいだい | 11.8 | 0.88 | 13.5 | 21.3 |
させぼ温州 | 11/25 ~12/5 |
119.1 | 128 | 鮮やかな だいだい |
だいだい | 11.0 | 0.97 | 11.4 | 33.3 |
(果樹研究部門カンキツ研究室 主任研究員 早﨑宏靖)