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イノシシ対策の電気柵補強 安価で簡易な絶縁体

2015年(平成27年)2月22日

近年、イノシシによる農作物の被害が全国的に深刻化しており、本県の2013年の被害額は約2億4千万円だった。県では被害低減に向け、地域ぐるみで ▽柵設置による防護(05年度から延べ1万キロメートル設置) ▽餌場を減らす環境整備 ▽加害個体や繁殖個体の捕獲(年間約4万頭を捕獲)の3つの防除対策を総合的に実施し、被害額は減少傾向にある。

対策は集落単位で設置するワイヤメッシュ(溶接金網)柵が主流だが、個人の対策では電気柵も使用されている。現地で電気柵の設置状況を確認すると、傾斜地やくぼ地では、支柱や電線を接続する「がいし」などの資材が適切に設置されていなかった。電線の緩みや隙間の発生、果樹棚やビニールハウスの金属支柱への接触などを生じ、十分な効果が得られていない事例も多い。そこで自然条件下で、簡易に低コストで電気柵の補強をするため、身近な農業資材などを支柱やがいしに代用できるか検証を行った。

支柱の代用品として、農業資材や伐採した竹などの絶縁性を測定したところ、弾性ポールと塩ビパイプが専用資材と同等の絶縁性を示し、他の資材では漏電による電圧低下を確認。がいしの代用品については、絶縁テープなどは漏電し、乾燥状態では高い絶縁性を示す水道ホースも雨などでぬれた状態では漏電がみられた。塩ビパイプと洗濯バサミがぬれた状態でも高い絶縁性を示した=表=

この結果から、入手しやすく安価な弾性ポールや塩ビパイプ、洗濯バサミは、電気柵の補強資材として有効であることが確認された。ただし、これらの資材は長期使用すると劣化が懸念されるため、あくまで応急処置とし、専用資材への交換やワイヤメッシュ柵へ変更を検討する必要がある。

当センターでは、今後も防護柵の管理や補強手法の確立、効率的に捕獲を進めるための機材開発など、総合的な対策技術の開発を行っていく。




    

 弾性ポールに洗濯バサミを使った電気柵の一例。通電性を高め、草を押さえるトタン板を敷設した。




=表= 代用資材の絶縁性

資   材 漏電の有無
(○:有)
乾燥状態 ぬれた状態 流水状態
支柱 グラファイポール(対照) ×   100.0   96.1   89.9
イボ竹1   97.5   97.5   89.9
イボ竹2   96.1   96.1   92.4
弾性ポール ×   100.0   98.7   96.1
竹(乾燥処理あり) ×   98.7   98.7   96.1
竹(乾燥処理なし) ×   69.6   69.6   69.6
塩ビパイプ ×   100.0   98.7   94.9
鉄筋   15.2   13.9   13.9
金属パイプ   17.7   15.2   15.2
がいし プラスティックがいし(対照) ×   100.0   100.0   98.8
水道ホース ×   100.0   97.5   67.5
塩ビパイプ ×   98.8   97.5   93.8
絶縁テープ ×   77.5   71.3   47.5
ビニール片   96.3   92.5   71.3
ビニール片+水道ホース   95.0   92.5   68.8
洗濯バサミ ×   100.0   100.0   98.8

電気柵専用の支柱およびがいしに乾燥状態で通電した際の電圧を100とし、資材および条件を変えた状態の電圧を比率で示した。
数値が100に近いほど絶縁性が高く、数値が小さいほど絶縁性が低い







(研究企画部門 研究企画室 係長 平田滋樹)