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ビワの鮮度保持技術開発 収穫直後に予冷

2015年(平成27年)4月19日

ビワは初夏の訪れを告げる季節感のある果物の一つで、本県は全国1位の生産量を誇る。しかし、成熟期が高温多湿の時季になるため日持ちが悪く、良食味を保つ期間が短いことが欠点となっている。そこで、取れたての食味を維持できる鮮度保持の方法について、新品種「なつたより」を中心に検討した。

「なつたより」は、爽やかな甘さを特徴付けるショ糖の割合が高い大玉品種である。「茂木」より糖度が高く果肉は柔らかい上、味のばらつきも少ない。果実の「萎(しな)び」が発生しにくい特徴も持っている。

ビワの食味を左右する甘さは、数種の糖の構成比が関与している。高温下に置くと、ショ糖はブドウ糖、果糖に分解される。収穫後から糖組成は変化するため、収穫後の日数が長くなるにつれ独特の甘さが失われ、食味が低下することになる。

今回の研究により、低温貯蔵することでショ糖の分解を抑えられるとともに、ショ糖割合が30%程度あれば、食味を良好と感じることが明らかになった。

さらに、収穫直後に果実を冷やす予冷技術を組み合わせた結果、5度で予冷した後に15度で貯蔵すると、常温に置いた場合に比べて傷みが軽減され、ショ糖割合も49.4%と高かった。収穫から15日後の果実は、4日後と同等にみずみずしいという評価を得た=表=。

以上のように予冷技術を導入することで7日程だった良食味期間を15日程度まで延長できることが分かった。産地が予冷技術を取り入れ、県産ビワが少しでも長い期間、消費者に愛され、今以上に商品価値が向上することを期待している。



表 収穫後管理方法の違いと果実品質、食味評価(2014年)
収穫日 調査日 収穫後
日 数
(日)
温度管理     x
糖度
(Brix)
       y
ショ糖割合
(%)
  z
食味
評価
予冷 貯蔵 輸送
貯蔵 5/22 6/6   15 5℃ 15℃ 15℃ 13.4 (97.1) 49.4 (95.6) 3.0
対照 6/2   4 常温 15℃ 13.3 (95.7) 47.7 (95.6) 3.0
x:カッコ内は収穫日を100としたときの糖度の割合
y:カッコ内は収穫日を100としたときのショ糖の割合
z:東京・大田市場果実担当者50人が、対照を3として果実のみずみずしさを1(弱)~5(強)で評価










(果樹・茶研究部門 ビワ・落葉果樹研究室 専門研究員 山下次郎)