かん水栽培技術開発
そうか病に強いバレイショ「さんじゅう丸」の出芽安定技術について
2016年(平成28年)8月21日
本県はバレイショの栽培が盛んで、全国2位の生産量を誇る。しかし、長年の連作で土壌を介して伝染する害虫「ジャガイモシストセンチュウ」や、イモの表面にかさぶた状の病斑をつくる「そうか病」などの被害が大きくなっている。そこで、県農林技術開発センターでは、これらの病害虫に強く、高収量で外観も優れた新品種「さんじゅう丸」を育成した。この「さんじゅう丸」は生産現場での期待が高く、県内の栽培面積は既に100haを超えている。
本県のバレイショは、春と秋の二期作栽培が一般的で、秋作の「さんじゅう丸」は、通常9月上旬ごろに植え付けを行う。しかし「さんじゅう丸」の場合、イモの水分率が高いことに加え、近年の地球温暖化で地温が上がり、菌が活性化。種イモが腐敗し、出芽しないこともあった。そこで、センターは、腐敗を防ぐために植え付け後の地温を下げ、土壌水分量をコントロールする「かん水栽培技術」を開発した。
土壌中の水分量を測定するpFメーターの値が1.7を上回った日に、かん水チューブを用いて1a当たり2tかん水した。すると、無処理の場合と比較して地温が最大4度程度低くなり、種イモの腐敗が減少。出芽率も高かった。また、通常より早い8月下旬ごろに植え付けても、かん水することで出芽時期が早くなり、栽培期間を長く確保できた=グラフ=。
近年、県内においてかん水施設を整備した畑は増加している。この技術を活用することで「さんじゅう丸」の安定生産につながることが期待される。
無かん水区(左)とかん水区
植え付け時期とかん水量の違いによる出芽率の差
(農産園芸研究部門馬鈴薯研究室 主任研究員 坂本悠)