アシストスーツ着用による運搬作業の軽労化
2017年(平成29年)3月19日
農業担い手の高齢化が進む中、重い農作物を扱う果樹経営では軽労化が課題となっている。ミカンをほ場で収穫後、コンテナに入れ倉庫への運搬、倉庫内での果実の選別、倉庫から選果場への出荷など、20kgコンテナを数回上げ下げする必要があり、生産者にとって負担が大きい。
アシストスーツは、身体に装着して力仕事をアシスト(支援)するロボット。介護や工事・物流現場では普及しているが、複雑な機能が求められる農業分野ではまだ実用化されているものが少ないのが現状である。そこで、農林技術開発センターでは、開発が進む2種のアシストスーツを、コンテナの運搬作業で試験し、農作業時の軽労化効果について検討した。
アシストスーツの一つ「リベロ」は和歌山でカンキツ産地を対象に開発したデモ機であり、センサー装着者の動きに応じて電動モーターが作動し荷物の持ち上げや運搬、傾斜地での歩行等をアシストする。「マッスルスーツ」は東京理科大で開発され、介護の現場で活用されている。人工筋肉に圧縮空気を送り込み収縮させることで、上半身を起こす動作をアシストする=写真=
被験者がミカン20kg入りコンテナを60cmの高さまで荷上げ作業した結果、いずれのスーツでも季節に関係なくスーツ着用で心拍数増加率が軽減した=表=。また被験者の約60%が腰の負担を軽減できたとアンケートに答えている。被験者は年齢、性別も異なるが、スーツ装着時の体格に合致し機械の動きや操作に慣れると評価が高くなる傾向がみられた。
今後も多くの農作業現場での実証試験を継続し、実用化に向けて各種作業に最適な機種選定や課題解決を図っていく。
アシストスーツ(マッスルスーツ)の有無と血圧、心拍数 | ||||||
時期 場所 |
血圧 | 心拍数 | ||||
スーツ | 項目 | 最高 | 最低 | |||
(mmHg) | (mmHg) | (拍/分) | ||||
8月 大村市 |
安静時 | 113.0 | 72.0 | 80.0 | ||
有 | 作業後 | 120.5 | 75.0 | 95.8 | ||
増加率(%)z | 6.6 | 4.3 | 19.6 | |||
無 | 作業後 | 121.0 | 75.0 | 105.0 | ||
増加率(%)z | 7.1 | 4.7 | 31.1 | |||
12月 佐世保市 |
安静時 | 123.0 | 82.5 | 80.0 | ||
有 | 作業後 | 135.5 | 84.8 | 104.0 | ||
増加率(%)z | 10.2 | 2.7 | 30.4 | |||
無 | 作業後 | 145.0 | 88.3 | 112.5 | ||
増加率(%)z | 17.9 | 7.0 | 41.0 | |||
Z (作業後-安静時)/安静時×100 |
(果樹・茶研究部門 カンキツ研究室 室長 山下次郎)