10月中旬に収穫期を迎える良食味の早生温州みかん新品種候補「長崎果研原口1号」
2017年(平成29年)10月15日
本県は温州ミカンの生産量で全国5位を誇るが、露地ミカンの出荷が始まる10月に成熟する既存品種は糖度が低く、消費者ニーズへの対応が遅れている。そのため、県では高品質な果実を生産できるオリジナル品種の開発に2000年から取り組んでいる。
早生温州ミカンの中でも早生温州ミカンは、成熟までの生育期間が短いために糖度が上がりにくい。近年は気候温暖化によって着色などへの影響も大きくなっている。県内で発見され、本県の主要品種となっている品種「原口早生」は、11月に市場出荷される早生温州ミカンであり、果実の袋が軟らかくて食味が良いため、市場からの評価が高い。
そこで、農林技術開発センターでは「原口早生」の突然変異個体から作りだした珠心胚実生(種子の珠心細胞の発達によりできた珠心胚から育成された植物体)を用いて、10月から出荷できて糖度も高い「長崎果研原口1号」(以下原口1号)を育成した。
「原口1号」は露地栽培での成熟期が10月15~30日であり「原口早生」より15日程度早い。果実の形は平たい球状で、原口早生より果皮のだいだい色が強くて着色も早い。10月下旬の糖度(Brix)は11程度、100ミリリットル当たりの酸含量は0.80g。10月中旬ごろには成熟し、同時期の品質は原口早生と比べても甘く、酸味が少なく甘味比が高いという特性がある。
ただ、収穫期や収穫前に高温や降水量が多いと、10月下旬ごろに果皮と果肉の間にすきまが生じてしまう場合がある。対策としては地面にシートを敷いて雨の浸透を防ぐ「シートマルチ栽培」が望ましい。原口1号は16年6月28日に品種登録出願公表され、現在審査を受けている。
長崎果研原口1号
「長崎果研原口1号」の特性
品種 | 樹勢 | 枝 | 節間長 | 葉 | ||
太さ(mm) | 長さ(cm) | (cm) | 大きさ(㎠) | 長さ(cm) | ||
長崎果研 原口1号 |
やや弱い | 中(3.4) | 長(13.2) | 短(1.2) | 中(28.2) | 中(9.3) |
原口早生 | やや弱い | 中(3.2) | 中(11.9) | 短(1.2) | 中(32.4) | 長(10.3) |
品種 | 成熟期 | 一果重 | 果形 | 果皮 | 果肉 | 糖度 | 酸含量 | 甘味比 | 浮き皮 |
(g) | 指数 | の色 | の色 | (Brix) | (g/100ml) | 発生程度 | |||
長崎果研 原口1号 |
10/15~30 | 112.4 | 133 | 鮮黄橙 | 橙 | 11.0 | 0.74 | 14.9 | 0.0 |
原口早生 | 11/1~11/15 | 123.6 | 126 | 鮮橙黄 | 橙 | 10.6 | 0.90 | 11.8 | 0.0 |
(果樹・茶研究部門 カンキツ研究室 主任研究員 早﨑宏靖)