ツバキ混合発酵茶の開発

「ツバキ茶」と「茶葉」を原料として揉捻発酵させた新たなツバキ製品を開発しました。
この製品は紅茶風味で、五島地域産のツバキ葉と茶葉とを五島地域で加工生産することにこだわった地域特産物です。





(注意)画面でご覧になる画像の色は、実際の色と全く同じではありません。

1.開発のねらい

長崎県の五島地域にはヤブツバキが多く自生しており、地域資源の活用による地域活性化に試験研究分野から貢献すること、自治体のツバキ振興計画の実現に貢献することを目的として、ヤブツバキの研究に取り組みました。

五島地域では、藩政時代から茶葉の栽培が行われており、現在も茶葉が生産されています。

一方、古くからツバキ油の生産地として知られていましたが、豊富な資源を活用した新たな用途開発や新たなツバキ製品の開発が求められていました。ヤブツバキと茶葉との混合発酵による新たな製品加工技術は、このような要請に応える形で開発されました。

2.開発の経過

平成16年度にツバキに関する実態把握や研究要素の抽出のための調査を行い、その結果を受けて平成17年度から県と長崎県立大学、長崎大学、上五島振興公社、五島市観光協会との産学官連携で3年間研究に取り組み、ツバキの新用途開発について検討しました。ここではツバキ葉と花弁のみを使った飲料を試作しましたが、えぐ味が強く、食品には適さないと判断しました。平成20年度からは農林水産省の「新たな農林水産政策を推進する実用化技術開発事業」に採択され、同様のメンバーで3年間ツバキ試験研究に取り組みました。このなかで、ツバキ葉と茶葉との機能性が最も高い混合割合や品質安定性の高い保管方法、機能性に関与する成分などを明らかにするとともに製品の安全性を確認し、最終的には第3者機関でも安全性を確認して、食品としての信頼性を高めました。

3.主要特性と成果

・「ツバキ混合発酵茶」はツバキ葉と茶葉とを混合、揉捻して酸化発酵させた製品で、別々に製造された乾物状態のものをブレンドしたものとは異なります。

・「ツバキ混合発酵茶」は同一原料で製造した単体の「緑茶」「紅茶」「ツバキの茶葉」よりも機能性が高くなりました。

日本人の死因は、悪性新生物(がん)が31%で第1位です。以下、心疾患16%、脳血管障害13%、肺炎9%、不慮の事故4%、自殺3%、老衰2%、その他22%となっています。

上位の3つの疾病は、いずれも食生活が発症に関わっており、生活習慣病と呼ばれています。生活習慣病の定義は、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣がその発症、進行に関係する症候群」です。食生活のアンバランス、運動不足、過労、喫煙、飲酒などが健康を損なう原因です。これらの原因をなくすことにより、健康な生活を送ることが可能になります。生活習慣病の発症抑制には、食生活の健全化が必要です。その基本は、過食と偏食を避けることです。規則正しい食生活を送ることはもちろんのことですが、長崎県農林技術開発センター、長崎県立大学および長崎大学が共同で生活習慣病を予防するツバキ混合発酵茶を開発しました。

・ラットや人での臨床試験によって以下のような健康機能性が確認できました。

1)糖尿病予防効果

食後の血糖上昇が抑制されることで、糖尿病予防の可能性が確認されました

    
    

米飯300gおよびふりかけと同時にツバキ混合発酵茶あるいは緑茶を摂取し、0.30.60.120分後に採血、血清グルコース濃度を測定しました。

緑茶は食品の中でも食後の血糖上昇を抑える効果が強いと言われていますが、ツバキ混合発酵茶では緑茶と比較してその作用が強いことが明らかとなりました。

2)体脂肪低下作用

脂肪を燃焼させることで体脂肪低下作用が発揮される可能性が示唆されました

    

生体ガス分析用質量分析装置という特殊な機械を用いて脂肪の燃焼量を24時間測定しました。数値が高いほど脂肪が多く燃焼しています。ラットは、昼間に寝て、夜間に活動する習慣があります。

特に、活動期に脂肪燃焼が多くなっていますので、ヒトも運動を取り入れることで体脂肪低下作用の効果がさらに発揮されると期待されます。

3)中性脂肪低下作用

小腸からの中性脂肪の吸収を抑制することで、血液中の中性脂肪濃度の上昇を抑制することができます。

    

ラットに多量の油を胃内に投与した場合における血液中の中性脂肪濃度の変化です。数値が低いほど、血液中の中性脂肪濃度が低いということです。つまり、ツバキ混合発酵茶を摂取することで、小腸からの脂肪の吸収が抑制されていることが言えます。

また、急激な中性脂肪濃度の上昇は、脂肪の行き場がなくなり細胞に取り込まれ、脂肪として貯められます。いかに食後の中性脂肪濃度の上昇を抑えることが肥満防止につながります。

・食品や健康補助食品原料としての用途が期待されています。

以下に「ツバキ混合発酵茶」に関係する資料を掲載していますので、ご覧ください。  

関連情報

・第65回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨(1課題)平成23年PDF ・第64回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨(1課題)平成22年PDF
・日本食品科学工業会 第56回大会講演集 平成21年PDF